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#7. 多分、それは勇気

(前回まではコチラ)


「そうなんだー、
 オモシロいんだねー」

おじさんは言った。


「そうなんです!

 オモシロいんですけど
 味わい深くもあって
 読んだ後、

 すごく、、
 まなび?
 まなびもある、

 そんな本なんです!」


なし男は
息を継ぐ間もないほど
ひと息に伝えた。

しかも
日頃の自分は
使わないようなコトバで…


「そうなんだね、

 そうかー、

 キミにとって
 とってもオモシロくて
 とってもタイセツで
 とってもまなびもある本なんだね

 ….」


おじさんは
すこし
だまった。


それは、
どんな間(ま)なのか?


すこし
もどかしく
居心地が悪くなったようになり、、



“勇気”


多分、勇気を持って


なし男は


自分の手が
少し震えてることに
気づきながらも


「もし良かったら、
これ、読んでみてください!」


思い切って
本を差し出した。



「え?」


おじさんは
手の様子にも
気づきながらか
尋ね返した。


「いいのかい?

 タイセツな本なんだろ?」


なし男は
「この本の中に

主人公が
旅の途中で

ネイティブ・アメリカンの部族の人に
出会った時に

その部族の人たちが
タイセツなものこそを
人に差し出す文化があるって、


何千年も
そうして
ボクらは生きてきたんだよって
教えてもらう話があって

すごくお気に入りのエピソードの
ヒトツで、、

自分も
いつか
そんなふうにできたらなって

そうしていくようになれば
自分の中のなにかが
変わっていくんじゃないかな

おおきなモノが
動くんじゃないかなって、、

それで
いま、そう、思ったんです!


あ、もし迷惑じゃなかったら、、、
迷惑だったら、すいません、、」


なし男の声は
最後は、
急にトーンダウンした


また変なことを言った、
変わったことを言ったと
思われたんじゃないか、、と
よぎったからだ。


おじさんが
すこし
考え込んでる様子にも見える、


「あぁ、余計なこと、言わなきゃよかった、、」


なし男は
またいつもの
振り出しに戻ったように感じた。


そうしてると


そのトーンを
掬いあげるように


おおきく、ふんわり包みあげるように


おじさんは
言った


「ありがとう、、

そうだったね、
その部族の人たちは

タイセツなモノこそを
すぐに差し出してくれるから

すこしでも
それを褒めたりすると

タイセツなモノこそを
すぐに差し出してくれるから、

褒める時も
よっぽど注意しなきゃならないんだったよね」


うなだれかけてた
なし男は


驚いて
顔をあげた


「なんで、、

 知ってるの、、??」


ニッコリ笑った
おじさんは


「だって、

 それは、、


 その本は、、


 ボクが
 書いたものだから、、」


おじさんの目のフチに
一瞬、光るものが
すこし見えたような気がした。

(つづく)





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