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#1. なし男の憂い

(前回まではコチラ)


「はぁー、、どうして、こんなことになったのだろう。。。」


その大きな木に寄りかかって
今日も
自信なし男(じしん なしお)は、
大きなため息をついていた。


なし男が
勝手に
「大きな木」と呼んでいる

その、
大きな木の隙間から


幾重にも
斜めに重なり
降り注ぐ
木洩れ陽

それは
まるで
ヒカリの
一色だけの虹のようで

その
明るく眩しい
ヒカリのシャワーは
イヤになるほど
キラキラと


公園の風景を
彩り、きらめかせていた。


キャッキャと
芝生では
ベビーカーに赤ちゃんを乗せたママさんが
と小さい子供が楽しそうにしている様子


なし男の目には
自分以外の世界のすべてが眩しく映っていた。


時計は昼過ぎを回ったところ。
これから夕方まで
いったいどうして過ごしていこうか、


道をみると
ランチを終えて
次の商談に向かうためか
忙しそうなサラリーマンたちが
急ぎ足で駆けている


世界はずいぶんキラキラしているように見えるけど

自分には、どうして、そんなふうに映らないのだろうか、、


活気、、


そう、
世の中のみんな
自分を除いての世界のすべてが
活気に満ち溢れているように見えるが



なし男の
生気の弱った瞳には


何もかもが
灰色に
どんよりと
そんな世界が
見えていた


「そうか、そういうことか、、」



「そうだ、、曇ったメガネで世界が見えてるからなんだ、きっと今のボクには」


チカラなく、なし男はつぶやいた。


そんなことを
言ったところで
思ったところで
なんのすっきりさも戻っては来なかった。



そう


活気に満ち溢れた(ように
なし男に映る、
そんな世間のみんなとは対照的に

なし男には、
朝から何もすることなんてなかった。



“自分には、何も、無いんだ、、”
なし男の心の声が響く



それを
確かめるように
口にして


なし男は、
コトバのツブテを宙に放るが
その響きは、
どこまでも、
暗黒のブラックホールに吸い込まれていった、


空しく、


何もしてないと思われると
不審に思われるとも思い
バックから読みかけの本を取り出した


「おさんぽアルケミスト」


青春期から
大好きで
何度も読み返していて
擦れ切れてしまっている。



「コーヒー豆たろう」という小説で有名になった
パパワ・ウロウロ=ココニイルーヨという作家が
自分の旅の話を書いた半自伝の小説だった。


そう
それは
とても
大きな、
大きな、
物語だった。


ちっぽけな
自分の視野が
世界がぱーっと
明るく大きく広がるような
そんな、
大きな物語だった。



気弱だった主人公が
ある人に出会い
気づきや学びを得て


それをきっかけに
旅にでて
色んな世界を渡り歩いて
成長していくストーリー



あとがきには
Thanksと感謝が捧げられていた

ファミリー
大地・海・空
宇宙

そして
ペコルとイノーリンに、と
お礼が述べられていた。


おそらく
その人たちとの出会いに
インスピレーションだったり
旅のきっかけを与えてもらったから、
ということなんだろう


青春期の
なし男が
思い悩んだりした時に

いつも
何度も
心に
一筋のアカリを照らしてくれた本だった

迷ったときに
何かしらの方向を
指し示してくれる

読む度(たび)に
旅に出かけたくなり
旅をしてきた気にもなれる

そして
いつも元気をくれる



そんな
ステキな物語だった。


(つづく)


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