見出し画像

『生き物の「居場所」はどう決まるか-攻める、逃げる、生き残るためのすごい知恵』歴史とともに仮説の変遷を追える(地球の歴史)

 生物の世界では、強いものが生き残り、弱いものは滅んでしまう。つまり、ナンバー2がありえない競争排除則が生物のルール。しかし、生物の世界は多種多様な生物が共存している。

 実はこの考えに行き着くまでには次のプロセスを必要とした。

マルサスの人口論:1798年に発表されたマルサスの『人口論』は、人間だけでなく、生きとし生けるものは、その食物となる資源が養える以上の子供を産み落とすとしていた。その結果、同種の生き物の間に資源を巡っての生存競争が起こり、より適応した個体が生き残り、その子孫が繁栄する。

  • ダーウィンの種の起源:1859年に発表されたダーウィンの『種の起源』は、それを自然淘汰といい、進化の原動力だと説明している。さらに、同じ資源を利用する異種の間にも競争が起こり、一方の酒が勝ち残り、他種はその資源から排除される。このことは数理モデルで確認され、1934年にガウゼによって試験管の中で飼育したゾウリムシで実証され、同じニッチを持つ種は共存できないという「競争排除則」が生まれた。

  • 緑の世界仮説:1960年にミシガン大学の3人の生態学者が「緑の世界仮説」を発表した。植物を利用している捕食者、つまり、草食動物と植食性昆虫にとって、餌となる植物は植食者の数を制御する要因とはなりえない、というものだ。その結果、植食者には餌を巡っての競争も存在しない。つまり、餌として植物を利用する植食者、すなわち、草食動物や植食性昆虫の数を制御しているのは、餌となる下位栄養段階の植物の量ではなく、上位栄養段階の捕食者、捕食寄生者、寄生者、病原体などの天敵である。天敵により植食者の密度は低く抑えられており、高密度で起こる種内競争や種間競争などは起こっていない。地球にはそれだけ緑が多い。

  • 天敵不在空間:1984年にイギリスの生物学誌に発表された「天敵不在空間と生態的群集の構造」が発表された。ここには、生き物のニッチは生き物と天敵の相互作用により、天敵の被害を少しでも軽減できる空間、すなわち「天敵不在空間」として占められているとある。これはまったく天敵がいない空間を指すのではなく、捕食者などの天敵に殺されても全滅しないことを指す。

  • 繁殖干渉:天敵不在空間においても、近縁種間で競争がある。その競争は高密度で起きる資源競争ではなく、低密度で起こる繁殖干渉で、オスが間違って他種のメスに配偶行為を行い、そのメスに対し何らかの不利益を及びす現象だ。

 例えば、ある植物種のめしべにその近縁種の花粉が付着することで、結実率が低下したり、雑種形成により同種との交配機会を失ったりすることが挙げられる。繁殖干渉が発生すると適応度が低下(≒子孫の数が減少)するため、次世代では相対的に近縁種の個体数が増大し、繁殖干渉の影響もより強くなるという正のフィードバックが起こりうる。そのため、短期間で種間の排他的分布を形成すると考えられており、近年、そのメカニズムが注目されている。

Wiki「繁殖干渉」より

 ガウゼの法則(競争排除則)は、地球上が緑にあふれているため植食者には当てはまらず、天敵不在空間がニッチとなる。しかし、そのニッチにおいては近縁種間で繁殖干渉という競争がある。ここまでが最先端の研究成果になる。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。