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【徹底解説】創造性組織工学フローチャート

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故・糸川英夫博士がロケット開発で生み出したCreative Organized Technologyのフローチャート(イノベーションを生み出す流れ)を具体例を交えて解説。拙著『糸… もっと読む
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『引いて考えると使命分析』(2−1)目的と使命の関係

 『働き方改革のイノベーション』(6回)では、その目的は「仕事を減らす」ことになる。しかし、その使命は「自分が楽をして成果を上げること」だ。このように目的と使命は違う。 目的:自分の仕事を減らす 使命:自分が楽をして成果を上げる  したがって、拙著『仕事を減らす』では、本のタイトルが目的で、使命を実現するための手段が本文という構成になっている。つまり、「もっとも成果の上がる方法が、もっとも効率がいい」という、一見すると矛盾した主張をしているのである。   『国産ロケット

『引いて考えると使命分析』(2−2)インサイトとデプスインタビュー

 次の図はインサイトからはじまり、使命分析に終わる使命分析のフローだが、使命分析の次のフェーズは「現状分析」となり、イノベーションを生み出す流れは続いていく。しかし、この使命分析のフローがうまくできないと、その後のフローからの成果は期待できないことは(2−1)目的と使命の関係で前述した。  使命を明らかにしようとすると、必ず顧客を明らかにする必然性が出てくる。たとえば『仕事を減らす』の顧客は自分の仕事を減らす訳だから自分になる。『国産ロケットの父 糸川英夫のイノベーション』

『引いて考えると使命分析』(2−3)空間を引いて考える

 これまで使命と目的の違い(2−1)、インサイトの発見方法の一つであるデプスインタビュー(2−2)を解説してきた。次に使命を明らかにするための3つの方法(空間、時間、自比較)について解説していきたい。  糸川さんのCreative Organized Technology(創造性組織工学)では、その対象の使命を明らかにすることを「使命分析」と表現しているが、「引いて考える」という言葉に置き換えるとわかりやすくなる。  たとえば自分が学校の教師だとして、今いる自分の物理的な

『引いて考えると使命分析』(2−4)時間を引いて考える

 使命を明らかにするための3つの方法(空間、時間、生き物)のうち、空間については(2−3)空間を引いて考えるで解説したので、今回は時間を引いて考えている。  時間を引いて考えるとは単純で、現在の時刻を過去や未来に引いて考えることで使命を明らかにしようという試みだ。  現在自分が病院で診察を受けているとしよう。心筋梗塞の我慢できない痛みから病院に救急車で運ばれることになった。これを時間で引いて考えてみると、1ヶ月程度前から「胸の痛みや、胸が締めつけられるような圧迫感」があっ

『引いて考えると使命分析』(2−5)比較し引いて考える

 今回は、使命を明らかにするための3つの方法(空間、時間、比較)の3つめ「比較」について解説していきたい。  自分が生きている人間社会で考えると物事が複雑になってしまい、本題の本質や使命を明らかにすることが難しい場合がある。そんなときは誰もが第3者として観察できる自然の生物などと比較するとわかりやすい。これを比較し引いて考えると表現する。  『弱者の戦略』には、次のような生物の戦略が解説されている。  企業経営を生き物の「ナンバー1=オンリー1」という考えで引いて考える

『引いて考えると使命分析』(まとめ)使命分析と目標設定が成否を決める

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『組み合わせとオルタナティブ』(3−1)4つの創造性と組み合わせ

 「創造性=新しい組み合わせ」という事例を『仕事を減らす』『糸川英夫のインベーション』で解説してきたので、ここで改めてカフマンの4つの創造性で整理してみた。 Big-C:社会を変える⾰新的な創造性 糸川さんのロケット開発はまさにBig-Cの創造性と言えるが、ペンシルロケットは、当時朝鮮戦争が終わったばかりで、日本油脂にあったバズーカ砲の在庫の燃料と、中島飛行機のエンジンの試作工場にあった丸棒「チ−201」(ジュラルミンの中島独自規格)を組み合わせたもの。『糸川英夫のインベー

『組み合わせとオルタナティブ』(3−2)オルタナティブを生む垂直思考

 『糸川英夫のイノベーション』では、糸川さんの作成した「Creative Organized Technologyのフローチャート」だけでなく、次のような「オルタナティブを発見するチャート」も紹介している。  糸川さんのイノベーションのHOWであるCreative Organized Technologyは、糸川さんのライフワークの集大成として『創造性組織工学講座』がテキストブックとして出版されているので、それを読むことでキャッチアップすることができる。  しかし、より効

『組み合わせとオルタナティブ』(3−3)オルタナティブを生む水平思考

 (3−2)オルタナティブを生む垂直思考に続いて、「オルタナティブを発見するチャート」の水平思考に話を移す。糸川さんの水平思考とは、時間を現時点に固定して、地球を東西南北と自由に移動することでオルタナティブを出す方法だ。水平思考では、1)居をかえる、2)旅をする、3)知識を広める、4)情報を集めるの4つの方法がある。順にみていこう。

『組み合わせとオルタナティブ』(3−4)垂直・水平思考と生成AI

 『仕事を減らす』で、生成AIの2つの考え方を紹介した。改めて整理しておくと、人工知能(Artificial Intelligence)は、創造性を含めた人間の脳の機能をそのまま代替するもので、拡張知識(Augmented Intelligence)とは、人間の能力を補完し、新たな知識や洞察をもたらし、人間の判断やクリエイティビティを引き出す手段として位置づけられる。  (3−2)オルタナティブを生む垂直思考においても、(3−3)オルタナティブを生む水平思考においても、オル

『組み合わせとオルタナティブ』(3−5)1人の天才より多様な人材の組み合わせで天才以上の能力を!

 Creative Organized Technologyは個人のポータブルスキルとしての側面と組織に創造性を発揮させる側面がある。組織で使う場合のキャッチフレーズは次のものだ。 「1人の天才より多様な人材の組み合わせで天才以上の能力を!」  これはCreative Organized Technology(創造性組織工学)の肝を一言で表現したものと言ってもいい。今回はその秘密を解説してみよう。

『組み合わせとオルタナティブ』(3−6)企業参謀の武器「システム分析」

 (3−5)1人の天才より多様な人材の組み合わせで天才以上の能力を!では、「システム合成」について解説した。  ランチ定食という身近な例ですら108の組み合わせになることから、システム合成によってアイデアが自然に無理なく生まれることがわかったと思う。この瞬間が、多様な人材集団が天才を超えるときだ。  次は108の組み合わせから実際にランチ定食として顧客に出すメニューを決める必要がある。Creative Organized Technologyでは、意思決定はトップがやるべ

『組み合わせとオルタナティブ』(まとめ)創造性(オルタナティブ)を生み出す環境

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『試すとフィードバック』(4−1)試すとリーンスタートアップ

 2−1から2−5で「引いて考える」(インサイト⇒目標設定⇒使命分析)、3−1から3−6で「組み合わせ」(現状分析⇒オルタナティブ⇒システム合成⇒システム分析⇒失敗研究)と解説してきたが、いよいよ最後の「試す」を解説していく。  糸川さんがCreative Organized Technologyの体系を開発したのはロケット開発だ。ロケット開発のルーツはナチス政権時代に開発されていたV2(報復兵器)に行き着く。V2計画は戦時下のドイツ最優先プロジェクトだったため、資金と労働