アドステラ世界AI再考~エリクト?について

アドステラ世界のAIと比較しながら、エアリアルの中にいるとされるエリクト?の正体について考える

ドローン戦争時のAI

アドステラ世界ではかつてドローン戦争と呼ばれるものがあった
それは名前の響きから、現代でもあるドローンを使った攻撃、いわゆるスウォーム兵器による戦争かと思われた。劇中でもそれを狙ってか、ガンビットを「スウォーム兵器」と呼ぶことが2度あった

しかし、ラジャンの台詞から「兵器に意思決定権を委ねる」戦争であったことが語られた。これがドローン戦争だ、という説明がないのでイコールで結ぶことはできないのかもしれないが、劇中それらしいものはドローン戦争以外説明がない。のでこれだと仮定しておく

ドローン戦争では無人機が使われ、それを終結させたのがグラスレーの電子対抗装備、それの発展形が「アンチドート」と呼ばれるシステムである。
上記ラジャンの台詞と合わせると、無人機ドローンを使って戦争を仕掛けてきた勢力と戦ったのがラジャンたちということだろうか、或いは双方に使用したから「それほどまでに戦争は無秩序」と言ったのか?

今回の話の趣旨として言いたいのは「機械による殺戮」なので、ここでは
ドローン戦争時にAIは人を殺すこと、それを命じることに抵抗がなかった
その点を覚えておいていただきたい

アドステラ122年世界のAI

アニメ本編の舞台となるアドステラ122年の世界では、かつてのドローン戦争で懲りたのか、制御にAIを使い、AIであるハロを搭載したドローンも飛んでいるものの、AIに兵器を任せること、AIに意思決定を委ね判断させることは一切ない。少なくとも描写されたことはない

唯一これを破ったのがジェターク社のモビルスーツ「ダリルバルデ」とそのAI「意思決定拡張AI」
なのでこのモビルスーツの挙動を見ていこう

初登場時はパイロットであるグエルに壊されるまで、終始AIが全面的にモビルスーツの操縦権利を握り動かし続けた
このAIは複合ベイズ予測というものを使っており、戦闘データからも学習していく。その戦いは十分だったが、グエルの言う通り囮に引っかかりやすく、しかしブレードアンテナへの攻撃を防ぐ判断能力は素早かった事を考えると、目の前で起きているアクションに対して理解し対応する能力はあっても、初陣でデータ蓄積がないため、2手3手先の未来予測がまだ苦手なのだろう。再登場時はグエルのビームサーベル十字受けを再現した

グエル
AI(と思われる)

3話を見る限りだと「言うこと聞かないAI」という印象が強いが、17話で再登場した際は制御を奪わず、ガンドフォーマットを搭載していないのでパイロットには動かしようもないビットの操縦だけに留まり戦闘をサポート、本来求めていた形での「人機一体」を果たし、傍から見れば「言うことを聞くAI」になった

しかし、結局のところ与えられた権限が縮小しただけでAI自体が何か判断して出しゃばらずサポートに回ろう、と考えて動いたのだろうか?
少なくともカミルはAIを「できる限り最適化」したと言った、それがどういう意味でどういう方向で改良したかは定かではない。しかしここで言いたいのは
言うことを聞かないAIなどなく、そう見えたなら命令の仕方が間違っていただけ
ということで
ドローン戦争時のAIの描写、人が決定権を委ねたから人を殺す判断や命令が出せた、間接的に人の命令を聞いただけ
ということだろう

ルブリスAI

プロローグの白いルブリスにAIが積まれていた、という巷の判断だが、実際の所「AIである」という明確な説明はない
虚無回廊の「人工実存(Artificial Existence:AE)」に近い気がするが、呼び方や正体について判断する情報に乏しいのでそれは置いておく

ちなみにこの人工実存、自分のパーソナルを分けて複数の別人格を産み出し、それに作業を分担したり話し合う「脳内会議」をやる、この辺もスレッタ?と思われる存在が12人確認できるのに似ている

話を戻して
仮にルブリスAIがあり、それがエリクトとの対話で人格が生まれた、或いは自我に目覚めたとか、コミュニケーションがはかれるようになった、でもいい、とにかく自律して自己判断できるようになった、としよう

果たしてこれは従来のAIと同じ性質なのか?

ここでこれまで挙げてきたAIとの比較に入る
従来のAIは結局「人の命令を聞いている」点は同じ、ドローン戦争時は人が判断を委ねることで「人に命令」した逆の形に見えるも、結局「命令してくれ」と人が願ったも同然
ダリルバルデのAIも「勝手に判断し暴走」したように見えるが、実際はそこまで判断し動く権利を与えたに過ぎない、つまり「人の命令」であり、命令の範囲が縮小すれば、人と共闘し「言うことに従った」ように見えた

ルブリスはどうか?
プロローグでの「ろうそく」の件、これをどう捉えるかによる

エリクト、或いはエルノラの意思によって攻撃した。のであればここまで説明した通り「人の命令に従う」従来のAIである
しかし、恐怖していたエルノラが命じたとも思えず、何も理解してないエリクトがなぜ急に敵を壊してやろう、と思うのか
子供の残酷な無邪気さ、と言えばそれっぽいが、大人からすれば突拍子もなくても子供には子供なりの理由があってやっている、そこに育ってない倫理観が挟まるから唐突で残酷に見えるだけで

子供が虫をバラバラにするのは「構造に対する好奇心」だったり「部品が取れるのが面白い」だったり、何がしかの興味があって
そう考えてろうそくのシーンを見てみると、エリクトが敵に対して何か関心を示した様子は、アニメにも小説にもない

更に言えばアニメでは「一つ二つ三つ」と指で照準する時、その動きよりわずかに先んじて照準がロックされる
これを「脳内で考える方が体の動きより早いから」と判断するか「ルブリスの思考とリンクして、エリクトの方が合わせたから遅れた」と判断するかで見方が変わってくる

前者であれば「エリクトの意志をAIが汲んだ」で従来のAI、後者であれば「AIが自己判断し人を殺すことを選んだ」ことになる
後者であるなら他のAIとは全く別物なわけだ

そしてドローン戦争時のAIと比べると、やはり
人を殺す、という判断を下すのにためらいがない点が共通する
自発であれ命令であれ

パーメットの性質が「共有」で、他のAIのようにいちいち命令するか、あらかじめ出した命令にのみ従うのではなく、自己判断かと見間違うほど瞬時に反応するとしても、それが接続する相手、パイロットの意志であれば結局「通信速度が爆速」なだけでただのAI、かゆいところに手が届いても所詮操り人形ということ

エアリアルの中のエリクト?

ではいよいよ謎の存在、エリクトによく似た姿のあの存在について考える
こちらはエリクトの生体コードだ、だから人間だから人格がある、と思考放棄せず、本当に人なのか、エリクトであるのか探ってみよう

まずそもそも、現状動物の感情がどこから生まれどこに宿っているのか判明していない

従って、どれだけ高性能で膨大な容量のコンピュータで人の情報を取り込もうと、その人の人格をコピー、再現することは不可能と言える
人格を構成するのが何によるかわからないなら、どれだけ詳細な情報と莫大な情報量があっても、人格の模倣はできても転移ができない

これは話題のチャットGPTが、流暢な受け答えをするが結局のところデータベースを利用して「それっぽい文章」を作り上げているのに似てる
生体コードを取り込み、その姿に似せるも「エリクト自身」ではない。それを示すのか、あの存在にはエリクトにあったおさげ髪がないなど微妙な差異がある

エリクト
エリクト?

これを「プロローグ後の成長した姿」と取ることもできるし、そうじゃないエリクトとは異なる存在だから、と取ることもできる

次に行動
「ゆりかごの星」ではエアリアルはモニターを瞬かせる以外に動きは見せていない。老人を救出する場面でも、ビームサーベルの出力調整を「私がする」とスレッタが引き受けた、以外で機体をコントロールする描写が一切なく、語り手であるエアリアルはただその様子を見てわずかに解説するだけだ

その解説ですら、スレッタの考えを「推測」するだけで、パーメットでリンクしているなら「共有」できるはずの思考を共有していない

そして16話、乗り込んできた5号を撃退する場面でも、コクピット内のモニターにノイズが走り、エアリアルのアイカメラとシェルユニットは反応したものの、エアリアル自身を動かすこと、コクピット内のモニターを点けてエアリアルが動かせる状態にはしなかった
そう「ゆりかごの星」と同じで、自力で動くことはしなかった

この共通点から考えると
あれはエリクトではなくエアリアルなのではないか
という疑問がわく

そう考える根拠として、ソフィには「あたしを殺そうとするきれいな声」が聞こえ、スレッタには「お母さんの言う通り」と、スレッタを励ます声が聞こえた
一見スレッタに甘いだけに見えるが、ソフィはガンダムが暴力マシンだと思い、エアリアルもそうだと思っていた、つまり「自分を殺そうとする存在」だと認識したからそれに応えた。そう考えるとスレッタへの反応と同じく「相手の望みに合わせた」だけにも見える

この性質は前述のAIと同じだ、人が命じたからそれに応えたに過ぎない

じゃあ「あなたはダメ」と5号だけ拒否したのは?
4号は良くて5号はダメ、しかも5号が不純な動機でスレッタに言い寄っているわけで、そう考えれば「人格を持った人間的判断」に見える

が、これも「4号はスレッタの生徒手帳、5号はスレッタ以外の生徒手帳」で搭乗しており、1話のミオリネもスレッタに返しそびれた生徒手帳でエアリアルに乗っている

4号はスレッタの生徒手帳
エリクトじゃないよ
ERI(CT)?

つまり「あなたはダメ」と判断する合理的理由、AIが機械的に判断する理由がちゃんとある

じゃあ17話の「ごめんね」は?
こちらは難しい、ロウジのハロが短い言葉だけで文脈を理解し応えたように、この世界のAIはそもそもチャットGPTよりもはるかに進んだ判断力を有しているため、スレッタが必死になってミオリネに「選んでください」といい、「負けたくない」ことを理解して、それに応えられず停止することを「ごめんね」と表した、と考えたけど、そこまでの判断ができるならもう人格があるようにも思えるし、そもそもどういう意味で言ったのかが判断がつかない

またあれを「グエルを焼き殺すところだったから止めた」と判断する人がいた。もしそうなら
ドローン戦争のAIともルブリスAIとも違い、人を殺すことにためらいがあることでAIでないように思えるが、プラントクエタでやめなさい!をするのを止めることがなかったことに説明がつかない
エリクト?はエアリアルを動かすことはできないが恐らくビットは動かせる、それによってスレッタは「呪い」を受けずに済んでいると思われるので、やめなさい!を止めたいのであれば、ビットを使って止めること自体は可能だったはずである(これはあくまで動かせる前提の仮説だが)

結論:エリクト?がエアリアル(AI)かはまだ確定できない

とりあえず、他のAIも全て「人格」が認められない。エリクトと対話したルブリスAI、引いてはエアリアルAI?と目されるそれも、エリクトやスレッタとの交流、そしてスレッタに見せるためのコミックやアニメなどから人間を学習してはいるが、それが「人格」と呼べるまでに昇華したかは不明

プロスペラがそこに娘エリクトの存在を見出していることから、最終的には自分で判断し、母の願いを断る形になるとは思う。かといってそれで「やっぱり人格が」となるかは、結局その描写次第

何にせよ今後「エリクト?が人格を持っているらしい振る舞いをするか、したとしてそれが本当に人間らしい振る舞いと言えるか」を判断し、安易にどちらかに決定しないようにしないと

レイヤー33の突破、それの意味するところは何なのか

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?