新連載のお知らせです。
普段はこういう告知みたいなことはあまり書いたりしないのですが、今回はかなり特殊な事例なので最初に説明があったほうがいいかもしれないと思いまして、ここに書きます。
端的に言いますと、ロシアからとあるコミックが届きまして、その日本語翻訳をはじめることにしたのです。
ちょっとだけ紹介しますので、よかったらお付き合いください。
その作品の名は『Sobakistan(サバキスタン)』(露語表記『Собакистан』)といいます。
ロシア語で「Cобака」(サバーカ)とは犬、「スタン」は中央アジア地帯で「国」を表す言葉なので、直訳すると「犬の国」となります。
原作はビタリー・テルレツキー、絵はカティア。
ともにロシア第二の都市であり、政治のモスクワに対して文化の中心地であるサンクトペテルブルク出身の漫画家です。
この『サバキスタン』、本国ロシアでは昨年末に完結したばかりで、個人出版ながら数万部を売り上げ、ロシア国内ではそのセンセーショナルな(反政府的な意味で)題材も含めて一部で話題になったようです。
※このあたりは日本語や英語で得られる情報が非常に少なく、著者との会話の中で得られた情報を書いております。
さて、気になる内容の紹介に入る前に、まず、その鮮烈なビジュアルをいくつか見ていただきたいと思います。
いかがでしょうか。見開きや扉のイラストカットが中心です。
鮮やかな彩色。迫力ある見開きとモザイク画。壁紙、衣服、街の造形、懐かしくもあり不思議な魅力を放つ社会主義の意匠。「犬の国」らしいチャーミングなキャラクターたち。
そして、ストーリー。
第1巻のあらすじを日本語で書きます。
この作品は全3巻で構成され、架空の独裁国家「サバキスタン」の数十年に渡る興亡の歴史を、漫画としてこれ以上ないくらいポップに、エンターテインメントとして描きます。
ストーリーの土台となっているのは、彼らの母国・ロシアが辿った歴史。
以下は本作の日本語訳を担当するロシア建築の専門家である鈴木佑也氏(新潟国際情報大学准教授)のコメントです。
そして、作者のビタリー・テルレツキー、カティア両氏からも日本の読者にコメントがあります。
ロシア。
みなさんご存じの通り、昨年の隣国ウクライナへの侵攻から、全世界を巻き込んで大変恐ろしい状況になっています。国内でも政府による規制が強まり、言論・表現の自由が少しずつ奪われ始めているといいます。
ビタリーさんとカティアさんはともにそんなロシア国内で、このような政治体制への批判、風刺ともとれる表現活動を続けることが難しく、トルコを経た後、現在はかねてより何度も訪れ、慣れ親しむ日本に滞在しています。
(この『サバキスタン』の最終話が描かれたのは日本滞在時です)
急速に独裁色を強め、過去の負の歴史への回帰まで見え始めている危険な隣国・ロシアから届いたコミック作品。
この『サバキスタン』、2023年4月12日(水)よりWebコミックメディア「路草」(トゥーヴァージンズ)にて連載を開始します。
こういう出自を持った作品の連載って、日本ではなかなか機会がない(ほぼゼロ)ので、より多くの人に読んでもらって、感想をもらえたりするとうれしいですし、そういうことの積み重ねで長く続けることができます。
興味を持ってもらえたら、ぜひ楽しんでください。ぼくもとても楽しみです。
ちなみに本作は全世界で日本語が初めての翻訳出版。今後は様々な国の言葉に訳され、世界中で読まれていくことを願って。
最後に、ロシアのインディーポップバンド、GROMYKAという音楽グループによる本作の公式テーマ曲だそうです。
こちらも面白いので、ご興味あればお聴きください。
GROMYKA - 'Sobakistan(To the funeral of Comrade Buddy)'
【作品情報】
『サバキスタン』
作:ビタリー・テルレツキー 画:カティア 翻訳:鈴木佑也
出版社:トゥーヴァージンズ
Webコミックメディア「路草」にて2023年4月12日(水)より連載予定