藤田 正雄

学生時代に有機農業の露地栽培イチゴを農家に勧められるままに畑で食べた味が忘れられず、有…

藤田 正雄

学生時代に有機農業の露地栽培イチゴを農家に勧められるままに畑で食べた味が忘れられず、有機農業に関わる仕事に従事しました。これまでに経験した有機農業の基本技術、有機農業を支える土のこと、有機農業が広がるために必要なことなどを紹介していきます(アイコンはヒメミミズの卵胞)。

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  • 今週のアクセス記事 私のベスト5

    今、私の掲載記事でアクセス数の多い5記事を紹介します。 ぜひ、ご覧いただきますようお願いいたします。

  • 土を育てる生きものたち

    土の中には多くの生きものがいます。 有機農業を行うには、その生きものの性質を理解し、配慮した管理を行うことも必要です。農地土壌に棲息する生きものを通して見えてきた、土と作物の間で活躍する生きものの世界を紹介します。

  • 緑肥作物の活用方法を考える

    緑肥作物の利用法には、収穫を目的とする主作物と栽培期間をずらす方法と、主作物の栽培期間中に畝間に緑肥を栽培する方法があり、主作物と緑肥作物との組み合わせを変えることで、さまざまな導入方法が考えられます。 ここでは、農地に有機物(腐植)を確保しながら、生物の密度を高めるなどの効果を紹介します。 有機農業実施者の緑肥作物を活用した栽培のヒントになることを願っています。

  • 自家採種のすすめ

    採種はその土地土地にあったタネを、ヒトが生きるために、守り育てられてきた技術です。 自家採種を続けることで、その畑の性質(土壌や気象条件など)にあった環境適応能力を備えたタネになっていきます。この能力を利用して、肥料を与えず、耕起をしないなど作物にとって厳しい条件の畑で採種することで、少肥で育つ根張りのよいタネを選抜することも可能です。

  • 新規就農者の育成を考える

    新規就農者には、技術、農地、販路、自己資金、住居が必要となります。しかし、最初から用意されている就農地はありません。 経営者として、自ら目指す営農スタイルにあった研修受入農家のもとで学び、それを身に付け、就農に向けた準備・努力は欠かせません。 有機農業での新規就農者が留意すべきことと、その育成に取り組む方々の事例を紹介します。

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【記事一覧】有機農業を科学する~すべてはいのち育む土から始まった

有機農業の研究機関、有機農業を推進するNPOで働き、約50年、多くの研究者、自治体職員、実施農家などにお会いしてきました。 現在も、菜園にて畑の生きものとともに野菜づくりに勤しんでいます。 noteでは、今までに有機農業について知りえたこと、経験したことを、より分かりやすく発信し、これから有機農業に関与される方々の参考にしていただきたいと考えています。 有機農業実施者の栽培管理をヒントに、人と自然の関わり方を工夫し自然の力を活用する栽培管理を科学的知見をもとに紹介していき

    • 緑肥間作の導入は、土壌動物相を豊かにする

      緑肥間作の導入の利点として、主作物を栽培しながら、土壌侵食の防止、地表面の保護、土壌動物の餌や生息場所となる有機物の生産補給などに加えて、土壌動物相、とくに捕食者(天敵)が多くなることを紹介します。 緑肥間作とは 緑肥作物には、マメ科のレンゲ、クローバ、青刈り大豆、ベッチ類などや、非マメ科作物の青刈りエン麦、青刈りライ麦などがあります。 一般に緑肥作物を野菜栽培に利用する場合、野菜の栽培前または栽培後に緑肥作物を栽培しすき込みます。しかし、主作物の栽培期間中に畝間に緑肥作

      • 畑に共生関係を再現 トビムシ-作物-病原性微生物の関係を例に

        トビムシ類が植物遺体や菌糸を食べたり、排泄したりして畑で生活することで、作物の生長に適した環境が形成されます。 そして、作物が生育量を増すことで土壌中に有機物が還元され、トビムシ類の餌が増えて、より繁栄しやすい環境が形成されるという、作物とトビムシ類の共生関係が見られます。 病原性微生物の抑制作用 トビムシ類の栽培に関わるはたらきのなかで、有機物の分解作用とともに、病原性微生物を抑制するはたらきが知られています(図1)。 中村好男(愛媛大学名誉教授)さんらは、東北農業試

        • 組織的に新規就農者を育成ーーJAやさと有機栽培部会

          新規就農者には、技術、農地、販路、自己資金、住居が必要となります。 JAやさとの研修制度「ゆめファームやさと」は、これらを兼ね備え、ほぼ間違いなく就農できる制度です。 生協との産直から消費者が求める有機農業へ 茨城県石岡市八郷地区が、全国でも有数の有機農業が盛んな地域になったきっかけは、1976年から始まったJAやさとと東都生協との産直です。タマゴ・鶏肉、そして1986年には野菜の産直が始まりました。 JAやさとの生産者と職員は、有機野菜を一品からでも消費者に届けるため「

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        【記事一覧】有機農業を科学する~すべてはいのち育む土から始まった

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        • 緑肥作物の活用方法を考える
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        • 自家採種のすすめ
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        • 新規就農者の育成を考える
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        • ミミズのはたらき
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        記事

          大地のプランクトン―トビムシ

          土壌中に多数棲息し、しかも体が小さく軟らかいトビムシは、多くの捕食性土壌動物の餌となり、畑地の複雑な食物網の形成に重要なはたらきをしています。 トビムシとは ハクサイなど葉物の収穫残渣と土壌との間に白い小さな虫が多数いるのを見られた方もおられるでしょう。これが、トビムシ(図1)。森林や畑地の節足動物のなかで、ササラダニ類とともに最も多くみられるグループです。 トビムシ類は、翅をもつようになる前の原始的な昆虫で、「飛ぶ」ことはできません。しかし、跳躍器を持ち、ジャンプをし

          大地のプランクトン―トビムシ

          有機物の分解は微生物と動物の相互作用 ワラジムシの摂食活動

          落ち葉などの有機物の分解に関与するワラジムシ類は、畑の生物相の豊かさをみる指標動物として捉えることができます。 有機物の分解過程に微生物と動物が関与している 大きさや餌の異なるさまざまな土壌動物が土のなかで生活しています。地表に堆積する落ち葉などの有機物は、土壌動物に生活の場を与えるとともに、それ自体が餌となります。 ヤスデ類やワラジムシ類のような動物はこれらを食べ、未消化の状態で排泄します。この過程で、食べられた落ち葉などの有機物は、細かく、こなごなに砕かれます。そして

          有機物の分解は微生物と動物の相互作用 ワラジムシの摂食活動

          有機柑橘を主幹別隔年交互結実方式で栽培する菊池正晴さん

          畑作物に比べ多くの病害虫が発生しやすいため、有機農業では困難とされている永年作物の栽培事例です。 2013年9月に、柑橘とキウイフルーツを有機農業で栽培している愛媛県八幡浜市の菊池農園・菊池正晴さんを訪問しました。 省力化と品質向上を実現した剪定法 菊池さんは、柑橘を主幹別隔年交互結実方式を採用し、省力化を図りながら、品質面でも安定した栽培を行っています。 菊池さんの主幹別隔年交互結実方式とは、1本の樹を生産する幹と生産しない幹とに分け、2年に1度交互に収穫を行う栽培方

          有機柑橘を主幹別隔年交互結実方式で栽培する菊池正晴さん

          有機物の分解に関与するヤスデのはたらきとそれを活かす栽培

          ヤスデ類は、ミミズ類と同様、有機物の分解に関与し、畑の土づくりに重要なはたらきをしています。 ヤスデの幼虫と成虫では餌が違う ヤスデ類の分解者としての特徴は、食べ物が発育段階で異なることです。土壌中で生活する幼虫は、土壌中の腐植を餌として利用し、齢を重ねる(7回の脱皮)ごとに大きくなり、土壌中に穴を掘り通気性、排水性を良くするなど物理性の改善に寄与しています。脱皮時には、土壌を使って脱皮室をつくります。したがって、ヤスデ類が生活できるには、土壌構造が破壊されない安定した環

          有機物の分解に関与するヤスデのはたらきとそれを活かす栽培

          新規就農者が1年目にすべきこと

          最初の1、2年は準備の時期と心得、畑と作物のクセを知るとともに、土づくりに重点を置いた出費の少ない栽培を心がけることが大切です。 就農希望者にとって、研修先とは 新規就農後に安定した経営ができるかは、当事者である研修生と受入農家の研修内容が大きく影響します。 新規就農者がどのような経営を目指すのかによって、営農スタイル、主な栽培品目、販路まで多くのことを身に付ける必要があります。 就農したい(住み続けたいと思える)地域を選ぶことはもちろんでですが、誰のもとで研修を受けるか

          新規就農者が1年目にすべきこと

          日本で初めて「オーガニック牛乳」を生産した酪農家グループーー北海道津別町

          津別町有機酪農研究会は、「有機酪農を実践し、有機牛乳生産を目指そう」と、北海道、津別町、JAつべつなどの協力を得ながら、試行錯誤の末、日本で初めて「オーガニック牛乳」を生産した酪農家のグループです。 網走湖の水質汚濁を機に環境改善に取り組む 北海道津別町は畑作と酪農がさかんな町。 化学肥料・農薬や大型機械に依存した大規模農業を追求してきた結果、町内を貫通する網走川下流の網走湖の水質汚濁を引き起こすことになりました。 そこで、1995年に「網走湖浄化対策事業」が開始され、微

          日本で初めて「オーガニック牛乳」を生産した酪農家グループーー北海道津別町

          有機農業への転換時期を見極める、指標とは?

          収量・品質を落とさずに慣行農業から有機農業に転換するために必要なことは? 作物の栽培に化学肥料や農薬が欠かせないと考えている農家に、有機農業の本質(しくみ)を理解していただき、農地の生物密度を高めたうえで、有機農業への転換を図ることが必要です。 化学肥料や農薬を使用しないから必要としない生産システムへ 2006年に施行された「有機農業の推進に関する法律」において、有機農業とは「化学的に合成された肥料および農薬を使用しないこと並びに遺伝子組換え技術を利用しないことを基本とし

          有機農業への転換時期を見極める、指標とは?

          有機部会にJA、市、県が支援――鹿児島県姶良市

          鹿児島県姶良市の有機農業に取り組む農家数は現在約40戸。市には毎年就農希望者があり、年々数世帯の有機農家が誕生しています。 この成果は、30年以上も前に農家主導でJA管内に「有機部会」がつくられ、自治体やJAが支援しやすい組織として生産から販売、消費者との交流などの活動を継続してきたことによると考えられます。 JA管内に有機部会が設置 旧姶良町(2010年に姶良郡3町が合併し姶良市)では1970年代中ごろより有機農業の実施者が現れ、1989年に「姶良町有機農業研究会」を発

          有機部会にJA、市、県が支援――鹿児島県姶良市

          不耕起栽培畑では、集中豪雨時に土壌の排水性を保持

          不耕起処理で土壌の排水性が良かったのは、ミミズ類などの土壌動物の土壌への継続的な作用と動植物由来の孔隙の維持が土壌の物理性の改善に寄与したと考えられます。 排水性に優れた不耕起 長野県松本市の耕起法を比較した畑では、2004年10月の台風23号による豪雨時に冠水しました。土壌の排水性は耕起処理に比べて不耕起処理で良く、有機物の集積層では冠水はしませんでした(図1)。 豪雨後の土壌の気相率(排水性の良さ)に差 台風23号(10月19-20日)による豪雨後の10月22日に

          不耕起栽培畑では、集中豪雨時に土壌の排水性を保持

          農産物の品質は、どのように決定されるのか?

          科学的データにもとづいた有機農産物の品質解明への期待は大きく、「有機農産物の味や香りの特徴がどのようなものか、その特徴はどのような経路をたどって形成されるか」という消費者の疑問に対して、客観的な説明が求められます。 ここで紹介するように、有機農業で栽培した農産物が必ずしもその品質を保証するものではありません。まずは、自ら「美味しい」と思える農産物の栽培に心がけることが大切だと思います。 有機農産物の特徴 有機野菜には、 包丁で切ると、バリバリと音がするほど硬いが、よく

          農産物の品質は、どのように決定されるのか?

          地温の変化を和らげる緑肥間作の効果

          緑肥間作が、地温の上昇を和らげ、生きものにとっても棲みやすい環境を創出していることを紹介します。 緑肥間作は地表面を保護し有機物を供給する 緑肥間作を導入した栽培では、主作物を栽培しながら、土壌の侵食を防ぎ、地表面を保護し、土壌動物の餌や生息場所となる有機物を生産補給できるなどの利点があります。しかし、緑肥作物を単作してすき込む方法に比べて実施者が少なく、その導入方法について十分な理解が得られていないのが現状です。 緑肥間作導入が地温に及ぼす影響 長野県松本市の畑で、

          地温の変化を和らげる緑肥間作の効果

          コウノトリが認めた「野生復帰」の取り組み――兵庫県豊岡市

          2015年10月、兵庫県豊岡市を訪問し、自治体とJAおよび農家が協力して推進している「コウノトリ育む農法」の取り組みを取材しました。 この取り組みをコウノトリが評価し、現在では豊岡市だけでなく日本の野外で400羽近くのコウノトリが暮らすようになりました。 コウノトリの野生復帰への取り組み 兵庫県豊岡市の中央部を流れる円山川に沿って湿地や森林、水田、中洲などが発達。このような自然環境は、鳥類をはじめ多くの生物に豊かな生息環境を提供しています。しかし、土地改良事業や河川の改修

          コウノトリが認めた「野生復帰」の取り組み――兵庫県豊岡市