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斎藤美奈子著『挑発する少女小説』

映画『水深ゼロメートルから』(山下敦弘監督、2024年)は、補習と称して教師から、水を抜いたプールの底に溜まった砂を除去せよ、という途方もない指示を受けた女子高校生たちを通じて、ジェンダーの理不尽さを描いた。 映画の中で主に4人の女子高校生たちはそれと闘っているのだが、思えは、彼女たち、というか映画の中の教師を含め、先人のあらゆる女性たちがそれと闘ってきたはずで、しかも、それはある年齢に達したから、ではなく幼い、少女の頃からの闘いだった。 実際、「人対人」の「実戦」は歴史上

    • 映画『ゴースト・トロピック』

      以前、別稿にも書いたが、酔っ払って終電に乗れなかったり、乗れても寝過ごしてしまったりして、深夜の街を自宅目ざして歩き続けた経験が、何度もある。 見知らぬ場所ということもあるし、それ以上に「深夜」という要素が大きいのだと思うが、普段は見えない物や人に遭遇することが多い。 間違ってはいけないのだが、それは、昼と夜で街に出る人が入れ替わる、ということではない。 夜遭遇する人も、ドラキュラでない限り、我々と同じように昼の続きで夜があり、夜の続きで昼がある。 それは「見え方」が違う、

      • 映画『夢の中』

        あえて、ここから始める。 2024年5月4日、劇作家・演出家・俳優の唐十郎氏が逝った。 70年代アングラ演劇を牽引してきた氏の作品は、新宿花園神社に紅いテント造りの、謂わば「見世物小屋」のような場所で上演され、その作風は「幻想譚」「観念的」とも云えるものだった。 映画『夢の中』(都楳勝監督、2024年。以下、本作)を観た人は、本作に「幻想譚」「観念的」という感想を持つかもしれない。 しかし、本作と唐氏のそれらは全くの真逆である。 唐氏を含めた「従来の」意味での「観念的」作

        • 映画『悪は存在しない』を観て思った取り留めもないこと…(感想に非ず)

          物語の序盤、ちょっと奇妙な電子音楽をバックに子どもたちが各々奇妙な姿勢で静止しているシーンを観て、映画『悪は存在しない』(濱口竜介監督、2023年。以下、本作)は当初、「サイレント映画」として企画されたものだったことを思い出した。 日本で生まれ育った我々には、後のセリフでそれはすぐに「だるまさんが転んだ」をやっているのだとわかるのだが、しかし、もし「サイレント映画」だったらと考えた後、本作が初めて上映され評価されたのは、2023年のヴェネチア国際映画祭(銀熊賞受賞)だったこと

        斎藤美奈子著『挑発する少女小説』

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          『TSURUBE BANASHI(鶴瓶噺) 2024』

          「何で、こんなことが起こるんやろ?」 笑福亭鶴瓶師匠は、首を傾げながら、自虐的な呟きを繰り返す。 鶴瓶師匠の奇妙な出会いや出来事を観客に披露する、ライフワークともいえる「スタンディング・トークショー」(「落語会」に非ず!)、『TSURUBE BANASHI(鶴瓶噺)』。 今年もその季節がやってきた。 例年、(もちろん師匠の頭の中では、ある程度進行予定を決めているのだろうけれど)その場の雰囲気や話の流れでどんどん話題が変わり、広がってゆく、「フリートーク」のスタイルだったが

          『TSURUBE BANASHI(鶴瓶噺) 2024』

          何故働くのか、何故本を読むのか~島田潤一郎著『古くてあたらしい仕事』~

          2024年のGWが終わった。 世間は「最大10連休」と騒ぎ立てたが、職場はカレンダーどおりだった。 それでも3連休+4連休というのは、とてもありがたく……ではなく、何だか希望に満ちているというか「あれをやろう」「これもしたい」とウキウキしたが、蓋を開ければ何のことはない、例年どおり、ただ酒を飲み、昼間は二日酔いで動けず、夜また酒を飲む……この繰り返しで終わった。 10連休じゃなかったくせに、ちゃっかり五月病みたいになり、働くことが嫌になり、その言い訳のように「働く意義がわから

          何故働くのか、何故本を読むのか~島田潤一郎著『古くてあたらしい仕事』~

          映画『あんのこと』(完成披露舞台挨拶付先行上映)

          現実に起きた事件をモチーフにしています。 映画『あんのこと』(入江悠監督、2024年。以下、本作)の冒頭のテロップに身構えそうになる。 冒頭の主人公・杏の表情と、続く退廃的なシーンに怯みそうになる。 しかし、身構えることも怯むことも、してはいけない。 それでは本作が見せたいものを見られなくしてしまう。 冷酷な言い方だが、本作は「映画」だ。 スクリーンの中の杏が、どんなに酷い・辛い状況に陥っても、手を差し伸べるどころか、背中をさすってあげることさえできない。声も掛けてあ

          映画『あんのこと』(完成披露舞台挨拶付先行上映)

          2024年5月1日~5月5日 酒。読書。観劇。それだけ。GW後半戦

          私の「note」のプロフィールは、『酒。読書。観劇。それだけ』とそっけない、というか投げやりな一文だが、それで充分説明に足りている。 たとえば、2024年5月1日から5月5日にかけて…… 2024年5月1日テレビなどでは「最大10連休」なんて言っているが、ほとんどの人はカレンダー通りなのかもしれない、と思うのは電車の込み具合がいつもとそんなに変わらないという実感からだ。もちろん私もその一人。しかし、同僚の中には休暇を取っている人もいるし、私も今すぐやらなければならない仕事

          2024年5月1日~5月5日 酒。読書。観劇。それだけ。GW後半戦

          立ち現れた「等身大の女子高校生」~映画『水深ゼロメートルから』~(改稿)

          高校演劇のリブート企画第二弾で、4人の女子高校生の物語で、しかもそれを、4人の女子高校生の物語を描いた超名作映画『リンダリンダリンダ』(2005年)を生み出した山下敦弘監督が撮る。 これはもう絶対観るしかない! ワクワクしながら、映画『水深ゼロメートルから』(山下敦弘監督、2024年。以下、本作)を観て、見事なまでに強烈なビンタを浴びせられた、いや、物語に即して言えば「砂をかけられる」、しかも男である私にとっては「頭から砂をぶっかけられ」てしまった気になった。 断っておくと、

          立ち現れた「等身大の女子高校生」~映画『水深ゼロメートルから』~(改稿)

          他人の人生を繋げてゆく~映画『青春18×2 君へと続く道』~

          1988年10月10日、大阪国際交流センター。 「子供ばんど(KODOMO BAND)」の2000本目のライブが行われた。 何度目かのアンコールで、ヴォーカル・ギターでリーダーの、うじき"JICK"つよしは、2000本ライブを達成した喜びを語り、メンバーとスタッフたちに感謝を述べた後、歌い始めた。 映画『青春18×2 君へと続く道』(藤井道人監督、2024年。以下、本作)の主人公・ジミーはたぶん、この年に台湾で生まれた。 そして、18年後の2006年運命的な出会いをし、その

          他人の人生を繋げてゆく~映画『青春18×2 君へと続く道』~

          史実に基づいた"IF"の物語の先~音楽劇『瀧廉太郎の友人、と知人とその他の諸々』~

          ♪兎追いし彼の山 恐らく、日本で生まれ育った人ならこの続きが歌えるのではないか。 1914(大正3)年に尋常小学唱歌(音楽の授業で歌う曲)として発表された「故郷」、実は1960年代まで作詞・作曲者が明かされていなかったのだという。 現在では高野辰之作詞・岡野貞一作曲として教科書に載っている。 上記の出典はWikipediaだが、岡野貞一(1878-1941)と同世代で同時期に東京音楽学校(現・東京芸術大学)に在籍していた日本を代表する作曲家・滝廉太郎(1879-1903)に

          史実に基づいた"IF"の物語の先~音楽劇『瀧廉太郎の友人、と知人とその他の諸々』~

          2024年4月26日~4月29日 酒。読書。観劇。それだけ in 大阪→京都→東京。GW前半戦

          私の「note」のプロフィールは、『酒。読書。観劇。それだけ』とそっけない、というか投げやりな一文だが、それで充分説明に足りている。 たとえば、2024年4月26日から4月29日にかけて…… 2029年4月26日13:03 東京駅 午後休暇を取り、少しだけ早くGWに突入。 お昼の東京駅新幹線ホームは、それなりの人。 特に、今日からGW期間中は、のぞみ号が全席指定席になる、というので、自由席のあるひかり号に乗客が殺到。 品川駅からの乗車客が自由席に座れない、という混雑ぶり

          2024年4月26日~4月29日 酒。読書。観劇。それだけ in 大阪→京都→東京。GW前半戦

          歌の力は凄い!~映画『ラジオ下神白』~

          震災なんて無かった方が良かった。 もちろん、そのとおりだ。 2011年の東日本大震災では自然災害だけでなく、それ以上に、原発事故や復興計画・復興事業の混乱・不手際といった人災に被災者の方々は翻弄され続けた。 震災なんて無かった方が良かった。 もちろん、そのとおりだ。でも、震災も人災も起きてしまった。 それがどんなに理不尽なことであっても、その過去を変えることはできない。 とても不謹慎な言い方かもしれないが、でも……もし…… 震災があったおかげだね。 そう思える事がたった一つで

          歌の力は凄い!~映画『ラジオ下神白』~

          ワインで反戦を訴える~舞台『ワインガールズ』~

          華やかな香りとフレッシュな舌触りに心地良さを感じた後、しかし、腹にガツンときて、それが持っている本質に驚く、そんなワインがある。 舞台『ワインガールズ』(菅野臣太朗脚本・演出。以下、本作)もまさにそんな物語で、アイドル的若手女性俳優3人が演じる高校生がワイン作りに情熱を注ぐ青春物語、という心地良さをまとった本作は、しかし、実に重たい本質を持っている。その本質を決定づけているのは、フィクションでありながら本作が「実在の人物と実話を基にしている」からだ。 舞台は⾧野県塩尻市にあ

          ワインで反戦を訴える~舞台『ワインガールズ』~

          TM NETWORK 40th FANKS intelligence Days ~YONMARU~@大阪城ホールDay1

          TM NETWORKがデビュー40周年を迎えた(1984年4月21日デビュー)。 昨年から今年にかけて全国を回った『TM NETWORK 40th FANKS intelligence Days』の集大成、東京・大阪・横浜各2Daysのアリーナライブ『YONMARU』(以下、本公演)。その3公演目、大阪城ホール 1日目。 メンバー3人だけで回った全国ツアーから、阿部薫(ドラム)と北島健二(ギター、FENCE OF DEFENSE)のサポートメンバーが加わった。 上で「集大成

          TM NETWORK 40th FANKS intelligence Days ~YONMARU~@大阪城ホールDay1

          原作ものの映画を撮る~西川美和『スクリーンが待っている』~

          ここ1カ月の間に、偶然にも、原作ものの映画制作についての本を立て続けに読んだ。 一冊は、『日日是好日』(大森立嗣監督、2018年)の原作者・森下典子の著書『茶の湯の冒険 「日日是好日」から広がるしあわせ』(文春文庫、2024年。以下、本書)で、これは原作者から見た映画制作について。 もう一冊は、2021年公開の映画『すばらしき世界』を監督した西川美和氏が著した『スクリーンが待っている』(小学館文庫、2024年。以下、本作)で、こちらは佐木隆三氏の小説『身分帳』を映画化した監督

          原作ものの映画を撮る~西川美和『スクリーンが待っている』~