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チェイサーゲームWの凄いところ③【日本のGLドラマとして全方位に画期的だった設定】

チェイサーゲームWの設定の凄さについて、まとめたいと思っていながらドラマ終了後から「いつ×ふゆファンイベント」までの尊い祭りに身を任せ、それに平行して全く違う世界線で存在する残業の日々に精神的にも物理的もまったく余裕がなかったのですがGWにやっと着手できました!

チェイサーゲームW制作委員会、チェイサーゲームWのファン、関わったすべての方へ感謝を込めて。

※これから書くことは個人的な見解です。チェイサーゲームW制作委員会の意図とは全く違っている可能性しかありませんのでご注意ください。

※そしてとにかく、ネタバレしかないのでご注意ください。

【日本のGLドラマとして全方位に画期的だった設定】


ドラマタイトル
チェイサーゲームW 
「パワハラ上司は私の元カノ」

このサブタイトル「パワハラ上司は私の元カノ」にこのドラマの魅力が詰まっているんです。

【設定①】今までの定番を覆した元カノ設定

林冬雨は酷い振られ方をした元カノの春本樹の前に5年ぶりに現れます。
復讐を心に。
そう、二人は元恋人。

今までの百合やGLドラマの多くは主に10代~20代前半の性の揺れが一番ある時期の話で「女性を好きになってしまった」どうしようとか「彼女は女性の私を受け入れられるのかな」とか、その辺の葛藤が多いけど、このドラマはその辺をすっ飛ばしています。元恋人という設定なので主人公の2人が愛し合っていたことは事実としてある。から始まっています。

樹と冬雨は女性を好きになってしまった葛藤を大学時代もしくはその前に済ましているので描かれず、「女性が好きかも問題」をすっ飛ばすことによって女性同士の恋愛の「女性が好きかもという葛藤」ではない感情をたくさん描くことができている。それが「どうしようもなく尊いシーン」をたくさん生み出しています。

だからキスシーンも「好きかも」の戸惑いが入ってないキスで、二人の気持ちが戻ってからのそれは付き合っていたころのキスなんです。4年付き合っていた二人なんです。それが当事者オタクをここまで生み出した理由の一つだと思います。

今まで私は百合やGLドラマを見てもあまりハマらなかったのですが、このドラマを見てこれが見たかったのか!と気づきました。  
私は「好き」になった後が見たかったんだと。


【設定②】尊いシーンを量産したパワハラ上司

そしてタイトルのもう一つのキーワード 「パワハラ上司」

冬雨は5年前に振られた樹に復讐するために中国から遥々、樹の働いているゲーム会社にクライアントとしてやってきます。
しかも樹の誕生日の日に。

5年ぶりの冬雨は黒の服に身を包んだ爆イケ、シゴデキな女性となっていました。サングラスまでして威嚇十分。
冬雨は樹に対し仕事における無理難題を要求し困らせようとします。
いちいち、キツイ言葉で突っかかって、樹の部下にも冷たい態度。
でもこの冷たい顔が美しい。
こんなに美しいパワハラ上司っています?
いません。即答

このパワハラ上司という設定が2024年トップオブツンデレ女子を生み出しました。

樹は真っすぐな性格と正義感と溢れるやさしさを持ち合わせています。
冬雨はとにかく、いろいろと樹を困らせるのですが、どんなに冬雨が挑発しても大きな愛で包んで自分の感情は二の次。冬雨のことを一番に考えて行動します。

そんな昔と変わらない樹に初日からやられてしまう冬雨は復讐しながら、樹への愛が溢れた表情や行動をしてしまう。
そこにはパワハラ上司になりきれない可愛いい冬雨がいるんです。そうトップオブツンデレ。

そして、気持ちが通じあった4話以降はさらにツンデレが加速。
冬雨は職場では責任感の強いシゴデキ女性なのですが、樹の前では甘々の上目づかいで樹を見つめて甘える女の子になるんです。
あの目にやられてこのドラマに沼ったオタクが何万人(中国のファンも含め)いたことか。

そして冬雨は「私は春本樹を愛しています。その事に後悔していません」
と職場で宣言する強さもある。

とにかく2024年トップオブツンデレ女子林冬雨なんです。

逆にパワハラ上司に立ち向かうのがプロジェクトリーダーの樹。
冬雨がプロジェクトメンバーに対して仕事優先の無茶な要求をすると壁になってメンバーを守ろうとします。そんな樹はかっこよくて美しい。
そんな美しい上司います?いません 即答

ただ、樹は冬雨のことになると感情的になって手が出てしまうという弱点もあります。冬雨の上司の呂部長が冬雨に土下座をさせ追い詰めた時、とっさに突き飛ばしてしまいます。デキる社会人としては冷静に対処していただきたいところですが。冬雨としては嬉しかったようです。

こんな風に一途で、守ってくれる強さもあって、落ち込んでる時には笑わせてくれて、甘えさせてくれるうえに仕事が出来て料理や家事も得意でスタイルがよくて可愛い服も似合うビジュアルも最強な樹に冬雨とファンは沼っていったのです。


【設定③】27歳という年齢の魅力

主人公の2人女性はの設定は27歳。大人の女性です。
最初にも触れましたが、GLドラマや百合小説はだいたい10代後半から20代前半の設定が多い。
最近では百合小説や漫画に社会人百合というジャンルが人気になってきたという流れがありました。それをドラマに持ってきた。

20代後半は現在の日本において女性が将来を真剣に考える年代です。
結婚に焦りを感じはじめ、自分は結婚するのかしないのか、出産するかしないのか、この環境で仕事を続けるべきか、働き方を変えるか女性は選択肢が多く、何かを選択すると何かを諦めなければならない現状もあります。
同性愛者の場合はまだ結婚は出来ませんが、パートナーと人生を歩むか、代理出産で子供をつくるか、シングルのままか、ゲイ友と友情結婚出産するかか等々迷う時期です。

樹もきっと自分の人生について考えていた時にもう一度、冬雨が目の前に現れた。 

そんな現実や理想に揺れ動く年代。

冬雨は樹に振られた後、混乱の中、愛する男性と出会い結婚出産を選び、愛する月ちゃんを授かっています。
それでも、樹の前に現れたのは「自分の人生はこのまま進んでいいんだ」という確信がほしかったのかもしれません。

一方、樹は5年間きっと誰とも付き合っていなかったのではないでしょうか。いまだに冬雨と付き合ってた頃のお揃いのイヤリングをして出社していたくらいですから。冬雨を忘れられないなら一生シングルの覚悟をしていたかもしれません。

このドラマはそんな自分の人生を決めていく重要な時期の数ヶ月の話なのです。この短い期間に、二人は将来について大きな決心をしました。

そして、この二人の特徴はどちらも自立した意思の強い女性だということ。そして美しい。
どちらかがどちらかに依存するわけでもなく、大事な決断はお互いそれぞれで決めています。職場でもしっかり意見も言える。もう一度言います。そして美しい。
二人とも女性が憧れる大人の女性です。

そして、この年代は女性が一番キレイで美しく、可愛いのに色気も持ち合わせている年代でもあります!(これは性癖による個人的な持論です。偏見ではありません)20代後半~30半ばの女性は可愛さと美しさが両立している貴重な年代。
経験も積み、自立もし、自信も少しづつ付いて、自分自身というのもわかり始める。それが外見にも表れて魅力になります。

実際に樹を演じる菅井友香さんは28歳、冬雨を演じる中村ゆりかさんは27歳で役柄と同じ年代。
菅井友香さんは昨年末に事務所を移籍したばかり、中村ゆりかさんも昨年末に事務所から独立したばかりとお二人とも仕事の環境を大きく変える決断をしています。

お二人がこの年齢ならではの美しさと可愛いさが爆発した状態で樹と冬雨を演じられたことが本当に奇跡的なことでした。

そんな外見も内面も女性が一番、美しいタイミングを切り取ったのがチェイサーゲームWなのです。


【設定④】国と時代を超えた設定

チェイサーゲームWは現代の日本が舞台です。
樹と冬雨は大学生時代に付き合っていました。冬雨は中国人の留学生。
学生時代に冬雨のママは樹に対し、冬雨の幸せを思うなら娘と別れてくれるように懇願します。

「中国では同性愛は幸せになれません」

樹も冬雨が幸せになるならと、冬雨のママの言葉で別れを選びました。

この選択は視聴者にとって違和感がありました。特に樹と冬雨の同じ世代には。今の20代~30代は同性でもパートナーシップを結んだり、女性同士でも子供を授かっているカップルもいます。企業もLGBTQフレンドリーを公表したりダイバーシティ研修をしていたり、同性パートナーを認めている職場もあります。テレビでも盛んにセクシャルマイノリティーでも自分らしく生きようとメッセージを送っています。SNSでは色々な同性カップルが発信もしています。

なのにです。
樹は別れを選びました。

でも、ここでポイントなのは冬雨が中国出身の女性だということ。
日本とは状況が違います。
中国の状況は私も詳しくはわからないのですが、冬雨がドラマで言っているように「1997年まで同性愛は流氓罪、2001年までは精神病」とされていた。
現在は取り消されていますが、まだまだ、LGBTQが認められない現状があるようです。
そんな、現状を踏まえると樹や冬雨の選択もそうするしかなかったとも考えられます。

完璧なキャラクター樹の中国での人気はもちろんすが、冬雨を中国人としたことで、中国で冬雨が人気となりました。中国の方からすると7話で中国人である冬雨が「私はレズビアンです」というセリフを言ったこと。それがドラマ史上初めてで歴史的で衝撃的だったことが理由でした。そこからもわかるように、中国ではまだセクシャルマイノリティーに関する表現も限定的なようです。

しかし、この設定にはもう一つの側面があります。

きっとこのドラマが一番伝えたかった事。

女性同士の恋愛がまだまだ認められていなく、同性パートナーと生きていくことが難しく、すべてを諦めて男性との結婚を選ばざるおえなかった。男性との結婚出産を選ぶことが一番最善の選択だと思えた現状は10~20年前までの日本の現状でもありました。

今回、このドラマによりその人生を選んだ女性達にスポットが当たることになりました。この現状は、日本のレズビアンの当事者たちでも知らない人も多かった。若い人達は特に。
いや若くなくてもこんなこと誰にも言えるはずもなく、その存在を知ることが難しかった。

実際に、この日本の長い歴史の中でどれだけの方がこの選択をしたのかわかりません。

この事を考えると私は涙が止まらなくなる。
これを書いていて涙が止まりません。

このドラマによって冬雨のように男性との結婚を選んだレズビアン(男性との結婚を選んでもレズビアンであると自認している)がいるということを私たちが知ることになった。

でも、実際にその選択をした人たちは
後悔はあるかもしれないけど
自分で選択した人生をしっかり生きて、幸せに生きている。
と勝手ながら感じています。

そんな選択をした方たちの中で「今までより自分のことを認められるようになった」方がいたとしたら。
そして、「この選択をしたのは自分だけではないんだ」ということを感じられるようになっていたら。

それは本当にすごい事です。

これがチェイサーゲームWのファンは、若い女性だけでなく40代以上の女性も多いことの理由の一つです。前に最近は社会人百合が人気になってきたと言いましたが、何で今まではそのような作品がなかったと思いますか?それは働いている女性の同性愛者たちは存在しなかったからです。同性愛は若い頃にみんな卒業して異性愛者として生活していることになっていたからです。当事者自身もそう振る舞っていた。でも今は確かに存在を認められている。時代は変わってきています。

ただ、今の若いレズビアンの方でも環境や自分の価値観で男性との結婚出産を選ぶかもしれない。それはその人の最善の選択なんだと思います。

このドラマは自分自身の気持ちに蓋をしていた当事者達が改めて自分と向き合うきっかけとなりました。
それは辛い作業でもありますが、もしこのタイミングでそれができたら。

でも、もしタイミングが今でなければ、それはまたその時が来たら向き合えばいいだけです。

とにかく、チェイサーゲームWの設定は色んな意味で凄いんです。

この凄いチェイサーゲームWの続編の製作を切に願います!



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