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火音



ここにいたいと光っている
傷が
消えても
まだ痛みますか?
 
そうじゃなくて、別の答えが欲しいのです、
朗読するような訊き方で 採集していく日々の
鼓動や
波音、すぐに
砕かれるものが
君の孵す言葉の中でまだ大きく口を
開いているから、身に着けることを
夢見た輪のように
ひとつ閉じて、裸眼のまま
首にかけた手を滲ませている
 
ひとまわりして
 
戻ったつもりの
別世界は、星が動いて、誰にも
言い出せないまま 冬も 春も
どちらを切っても崩れ落ちる現実を 愛して
傾いていった夜、
弾けた導線は
散り散りに燃えて、見えないはずの
星雲を照らしていた、人間という
レンズの向こうで、首に
触れている魔術師の最後のひと息に火を放つ、
鱗粉が昇ってゆく光に 重なる
時の影を
見逃さなかった絵描きの眼に呑まれて続く、
投げ捨てたリングの
鳴る夜は
 
愛している
なんの力も持たない
ことばたちが、
僕を動かしていた
 
あのときも
 
拭った
顔を
 
 
水に浸した








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眠れない夜に

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