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ありがとうパステウ、からのミートパイ

昔から村上春樹の小説を読むと決まって料理を作りたくなる。

ランニングをした後、シャワーを浴び、肌触りのいいセーターとジーンズに着替えて、お気に入りのジャズを聴き、ビールを飲みながらパスタを作る。

オリーブオイルに細かく刻んだニンニクが香りだしたら、大きく切ったトマトも一緒に炒め、塩とバジル、黒コショウでシンプルに味付け。

お気に入りの皿に盛りつけ、一口目。

まっずっ!!


トマトの旨味は見事に消え、酸味しかないパスタだった。ビール飲むぐらいまでは見事にハルキストだったのに肝心の料理でスベった。

見よう見まねで作ったパスタの出来があまりに残念だったので、「村上レシピ」という小説に出てくる料理が作れるレシピ本を買った。

それを見ながら何度も料理を作ったが、小説で読んだ想像を上回るものに巡りあうことはなかった。

先日、noteを読んでいて、同じように料理を作りたい衝動に駆られた。


いつも見たこともない景色を見させてくれる微熱さん。これを読むと、誰もがここに出てくるブラジル料理 パステウを食べたくなるはずだ。

薄くのばした生地に、牛ひき肉、チーズ、トマト、玉ねぎを煮詰めたものを角形に包み、大量のラードでサクッと揚げる。10歳の私は、このブラジルのソウルフードにすっかり心奪われた。
タイス、おかえりパステウより


私もこの作品に心を奪われた。

タイスが作る熱々で優しい味のパステウを食べたくてたまらなくなってググってみた。

つくれぽゼロ。


昔夢中になった村上レシピのことを思い出した。

物語で食べたパステウ以上のものは作れないよ。

頭の中でイメージが肥大しちまってるのさ。

ハルキの二の舞だよ。

パステウ……、

パイ生地、

ひき肉、チーズ、玉ねぎ、トマト……

そうだ!!

ミートパイだ。


あまりの切り替えの早さにタイスもさぞビックリしたことだろう。真心だけは精一杯詰めこもう。

初めてのミートパイ作り。

玉ねぎ、にんじん・ミンチを中火で炒め、塩コショウ、ケチャップ、ウスターソースで味付け。クミンも少々。

味付けは、子ども向けにミートソース風。1個を包み終え、次のパイシートをまな板に並べていると、風呂上がりの三女がやってきた。

「やりたーい!!」

まず髪をふけ


「あれやってもいい?」

「…えっ、また?いいよ。。」

パイシートを見たら、必ずこれするんだよな。

大きくなったね、うん。

今回もバッチリ手形を残した。娘にとっちゃ粘土と同じ。具材の上にたっぷりチーズを乗せ、パイシートで包む。

卵黄を絵の具のように塗り塗り。

200度のオーブンで待つこと30分。

栃尾の油揚げかよ!

卵黄をべっとり塗り過ぎたようで、油揚げか、とん平焼きかという風体になってしまった。

でも、食べてみるとカリッ、さくっ、ふわっのたまらない食感。鼻から抜けるバターとスパイスの香り。溢れ出る肉汁。とろーりチーズと玉ねぎの甘さ。

「誕生日に出てきてもいいレベルだね」

斜め上から長女が褒めてくれた。

ありがとう微熱さん

食べ終わった後にもう一度、作品を読ませてもらった。

あんなにたくさんミートパイを食べたのに、またパステウが食べたくなった。

でもきっと次もミートパイを作ると思う。


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