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趣味は「映画と読書と音楽」と言っても良いですか? vol.344 読書 酒井順子 「紫式部の欲望」

こんにちは、カメラマンの稲垣です。

今日は読書 酒井順子さんの 「紫式部の欲望」についてです。


ここ最近酒井順子さんのエッセイを結構読んでいる。

まあ自分の中のマイブームは燃えるだけ燃やして読書欲に火をつけたいので、次々と買って読んでいこう。

さて今回は「源氏物語」を書いた紫式部に焦点を当てた本。

女性と作り手について描くのは酒井さんのオハコなので興味深い。

紫式部の「源氏物語」、はい、学校の授業でさらりと内容を知るだけで、原文はもちろん読んだことがありません。

ただ源氏物語を題材にしたアニメや漫画や映画は見たことがあります。

平安時代の雅な宮廷の世界、絶世の美男子でプレイボーイの光源氏がいろいろな女性と恋愛する話。

そんなふんわりとしか知らない源氏物語を酒井さんは紫式部という女性作家にスポットを当てて、彼女自身の欲望からこの物語を書いたのではという考察です。

それを面白くおかしく、時にはなるほどと思う納得感を得られ、学術書ではありませんが、源氏物語を読んでみよう、新しい見方を知る、機会になる本でした。

それで紫式部の欲望ってどんなものだったんでしょう。

目次から
「連れ去られたい」「ブスを笑いたい」「嫉妬したい」「プロデュースされたい」
「頭がいいと思われたい」「見られたい」「娘に幸せになってほしい」「モテ男を不幸にしたい」「専業主婦になりたい」「都会に住みたい」「待ってほしい」「乱暴に迫られたい」「秘密をばらしたい」「選択したい」「笑われたくない」「けじめをつけたい」「いじめたい」「正妻に復讐したい」「失脚させたい」「出家したい」

1000年前の人なのに、今の女性と同じような欲望を持っているかもしれないと言うところが、あの古典名作「源氏物語」をものすごく身近なものにします。

確かに時代が違い生活様式もずいぶん違いますが、やはり同じ人間、同じ女性
今の現代の女性とも共感できる部分も大いにあるでしょう。

それも根源的な感情の部分は変わらないのでは。

それも作者紫式部自身のプロフィールが、上の下ぐらいの身分で未亡人で頭はいいけどさほど美人でもなく、天皇の妃のお付きの女官と言うキャリアウーマン。

そしてライバルで先輩である「枕草子」を書いた清少納言のように明るくサバサバとして宮廷生活の随筆(エッセイ)を書くタイプではなく、

表には出さないタイプだけど、数々の欲望を抱え込んで、それを物語として発出したのではという考察。

そうこれは物語だからこそ、大いに宮廷生活で見て感じたものを、自分の欲望の赴くまま書いたのでは。

それに源氏物語は主人公がプレイボーイで女遊びの物語ではなく、女性作家が書いたもので、いろいろな女性たちを思いや生き様を描きたかったのではと思います。

まるで「男はつらいよ」で寅さんが主人公ですが、彼を描くのではなく、女性の人生をいろいろ描きたかったのと同じような気がします。

特に一番印象に残ったのは「娘に幸せになってほしい」章です。

この「源氏物語」では不幸になった女性がいてもその娘は帝の妃になったり、幸せな結婚生活を送ったりと、

紫式部も娘がいる母親。平安時代の女性は後ろ盾をなくすと落ちぶれていくのを見て、せめてもの願いは娘が幸せになる物語を書いたところは、母の愛を感じ好きなところです。

そして散々女遊びをした光源氏が最後一人取り残されるところは、思うままに生きれなかった平安時代の全女性たちの想いが込められていると。

酒井さんはじっくりと源氏物語を原文で読んだらしいですが、まあ自分では無理なので数多くある現代語訳を読んでみようと思います。漫画もいいかもしれません。

今日はここまで。




紫式部もまた、源氏物語を書いている時、登場人物の身を借りて、様々な人生を生きたことでしょう。女性が、自らの思い通りに行動する自由を与えられていなかった時代に生まれた彼女はまた、自らの感情を素直に表に出すことができないタイプでもありました。複雑な人間関係が渦巻く宮中において、彼女の胸には、様々な感情が鬱屈していたことと思います。しかし彼女の中に溜まったものは、書くと言う作業によって外にほとばしり出て、それが源氏物語として結晶化したのです。
/P.206「紫式部の欲望」より






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