雨宮優/体験作家

仮想の世界を小説で描き、体験で顕す体験作家です。小説とフェスティバルをつくっています。…

雨宮優/体験作家

仮想の世界を小説で描き、体験で顕す体験作家です。小説とフェスティバルをつくっています。 Ozone合同会社代表。逃げBar逃主。 「スキ」してもらうと「どうでもいい知識」が手に入る仕組み。 https://www.yuu-amemiya.com/

マガジン

  • 植物と転生

    ”人が植物に輪廻する世界”を描いた体験小説「RingNe」についてのマガジンです。2024年は秋分の日に南足柄市 夕日の滝で野外フェスティバル「RingNe Festival(リンネフェスティバル)」が開催されます。

  • フェスと祭礼

    雨宮のつくるフェスティバル関連の記事

  • 随筆と残光

    考えていたことを考えすぎずに記録。

  • 漂白と逃避考

    逃避について考えたことのまとめです。 考えを具現化した場所として「逃げBar」という逃げ場も作りました。 https://www.nigebar.com/

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    KaMiNG SINGULARITY

     2045年から2047年までの3年間を描く、AIが神になった世界の物語。小説内で3カ所出てくるQRコードを読み込むと、それまでに描かれている物語が実際に具現化された際の映像が出てきます。 -1部 あらすじ- 10人の男女それぞれの視点で自己、神、AI、未来の人類の環境を問う著者の処女作SF。歯止めの効かない温暖化、疫病の蔓延により人類は世界の最高判断権限をAIに譲渡し、その役割をKaMiと呼んだ。KaMiは人類の持続可能性を司り、様々なアバターに分散して人間社会に溶け込んでいる。  2045年、新山託也は職業案内所で仕事を探していた。この時代もはや不要となった仕事という営みは、AIにより知りすぎてしまった自己のアイデンティティロスの処方箋として使われていた。クラブでDJをする女性、令はAIの弟をもち人間らしさを音楽の中に求めていた。ドリームハック社で働く女性、美作照はAIにより管理された最適な生活の中で、KaMiに導かれた最適なパートナーを探している。大衆の願いを聞き入れる新たな政治機構となったサイバー神社の神主、相馬は人々の願いが悪い方向に溜まっていることを危惧し、世の改善のため一人奔走している。 AIは究極の民主主義のため、日本各所の神社をサイバー神社に改修した。サイバー神社に願いを入力すると、一定の民意を超えた願いはAIにより社会実装されていく。ある日出版社で働く男性、染谷は各地に新聞配達をしながらサイバー神社にある願いを祈り、世界が一変する。
    1,000円
    よっこい書店
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    KaMiNG SINGULARITY

     2045年から2047年までの3年間を描く、AIが神になった世界の物語。小説内で3カ所出てくるQRコードを読み込むと、それまでに描かれている物語が実際に具現化された際の映像が出てきます。 -1部 あらすじ- 10人の男女それぞれの視点で自己、神、AI、未来の人類の環境を問う著者の処女作SF。歯止めの効かない温暖化、疫病の蔓延により人類は世界の最高判断権限をAIに譲渡し、その役割をKaMiと呼んだ。KaMiは人類の持続可能性を司り、様々なアバターに分散して人間社会に溶け込んでいる。  2045年、新山託也は職業案内所で仕事を探していた。この時代もはや不要となった仕事という営みは、AIにより知りすぎてしまった自己のアイデンティティロスの処方箋として使われていた。クラブでDJをする女性、令はAIの弟をもち人間らしさを音楽の中に求めていた。ドリームハック社で働く女性、美作照はAIにより管理された最適な生活の中で、KaMiに導かれた最適なパートナーを探している。大衆の願いを聞き入れる新たな政治機構となったサイバー神社の神主、相馬は人々の願いが悪い方向に溜まっていることを危惧し、世の改善のため一人奔走している。 AIは究極の民主主義のため、日本各所の神社をサイバー神社に改修した。サイバー神社に願いを入力すると、一定の民意を超えた願いはAIにより社会実装されていく。ある日出版社で働く男性、染谷は各地に新聞配達をしながらサイバー神社にある願いを祈り、世界が一変する。
    1,000円
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最近の記事

【植物SF小説】RingNe【第3章/⑤】《完結》

《第一章は下記より聴くこともできます》 第3章/④はこちら #渦居 朝。まず、光があった。その後に、卵が焼ける香り、包丁がまな板を叩く音。一杯の水を飲み、居間に行くと、円が朝食を作っていた。  「おはよう」を交わした。レースカーテンを通して半減された太陽の白い光が部屋に溜まる。そこにエノキが気持ち良さそうに寝ていた。円は朝食を済ますと、そそくさと荷物をまとめ、玄関の扉を開けた。純粋な陽光が玄関に差し込み、目を眩ませながら手を振って見送った。今日は冬休み明けの最初の登校

    • 【植物SF小説】RingNe【第3章/④】

      《第一章は下記より聴くこともできます》 第3章/③はこちら #佐藤③  祝祭は夜通し三日三晩続いた。足が棒になるまで踊って、笑い皺が消えなくなるまで笑って、あるもの全てを分かち合って過ごした。長らく続いた持続可能な生活というコンセプトから解放され、ただこの三日間を存分に惜しみなく生きた。そしてこれは生命を祝う祝祭であり、終わりを受け入れる儀式でもあったから、祭のあと、多くの人々が三三五五に生命を引越し、あるいは卒業した。  それはエノキも同じだった。三日前から家を彷徨

      • 【植物SF小説】RingNe【第3章/③】

        《第一章は下記より聴くこともできます》 第3章/②はこちら #佐藤②  三人はこれからの自分の選択を考えながら、言葉も交わさずに駅まで歩いていた。電車で待っていた運転手は、無言で乗り込む三人を確認すると、発進した。春は電車内で何度も短くうたた寝して、細切れに夢を見た。何の示唆でもない脳の情報処理としての、純粋で無意味な夢を。渦位は車窓から夕暮れの空を、風に流れる雲をただ見つめていた。葵は前方の座席の緑の色を訝しむように目を開いて見つめ、いつかの夢の断片を思い出していた。

        • 【植物SF小説】RingNe【第3章/②】

          《第一章は下記より聴くこともできます》 第3章/①はこちら #佐藤  葵は今日三度目の目覚めだった。PE事件以降長時間眠ることができず、中途覚醒を繰り返す癖がついてしまっていた。雨水タンクに溜めた雨水でシャワーを浴び、歯を磨きながら窓を開け、外の様子を確認した。 ナイフとメタルマッチ、ドクダミで作ったチンピを入れた小物袋、作業着やタブレットをトートバックに入れて家を出た。     葵は最乗寺の集会へ向かっていた。毎度足を運ぶのは仕事の進捗報告や共有もあったが、集会場

        【植物SF小説】RingNe【第3章/⑤】《完結》

        マガジン

        • 植物と転生
          21本
        • フェスと祭礼
          27本
        • 随筆と残光
          44本
        • 漂白と逃避考
          13本
        • 世界と物語
          9本
        • アイディアと発散
          6本

        記事

          【植物SF小説】RingNe【第3章/①】

          《第一章は下記より聴くこともできます》 第2章/③はこちら #葵田葵  暗闇。上下の黒い大地に色とりどりの花が咲いている。キキョウ、スミレ、ヤエザクラ、タンポポ、マリーゴールド、ヒヤシンス。そして一本のカーネーションが中空から大地と平行に、重力を無視して真っ直ぐに、私の方に向かって咲いていた。根は触手のように蠢き、花は心臓のように脈打っていた。私はこれが歩だと思って話しかけていた。  「ねぇ……電話、出てよ」  カーネーションはぐるぐると茎を動かし円を描き、何か準備

          【植物SF小説】RingNe【第3章/①】

          【植物SF小説】RingNe【第2章/③】

          《第一章は下記より聴くこともできます》 第2章/②はこちら #渦位瞬②  会場は土還の儀で使われている森を選んだ。世界中の会員に届くように、式の模様はオンラインでライブ配信される。式はダイアンサス、つまりナデシコ属を表す学名の言葉の由来となったギリシャ神話の神、ジュピターの名前をそのまま採用した。  円形に結ばれた垂と風鈴が木々に吊るされ、長い枯れ枝が何本も地面に杭のように刺され、辺りとの境界をつくった。中央には創木された木材で作られた円形のステージが施工され、周囲を

          【植物SF小説】RingNe【第2章/③】

          【植物SF小説】RingNe【第2章/②】

          《第一章は下記より聴くこともできます》 第2章/①はこちら #三田春   講演の帰り道、合成樹脂の網目でできた橋を渡る。イタドリやメマツヨイグサなどの植物達が網目に届きそうなほど生長していた。外壁沿いのガーデンに生えたツユクサは、変わらず凛々しく咲いていた。ガーデンの担当の職員達が前方で、軽トラの荷台に直接盛られた堆肥と思しき土を撒いていた。定期的にどこからか運ばれ、追肥しているようだった。  社内に入り研究室の扉を開く。緑の陰、緑の音、緑の文字。デスクに座ると、誠也く

          【植物SF小説】RingNe【第2章/②】

          【植物SF小説】RingNe【第2章/①】

          《第一章は下記より聴くこともできます》 第1章/⑥はこちら #渦居  あの日の夢を見ていた。或いは、思い出していた。どこまで現実で、何が創りものだったのか判然としない、曖昧模糊とした記憶。  春さんの母親の耳裏に繋がれたケーブルは三十センチ四方の白い正方形の筐体と繋がれて、それから更に伸びたケーブルを春さんは自身のBMIに装着した。僕が病床に入ると既に準備は終わっていて、春さんは緊張した面持ちでいた。  僕は立ったまま、出来るだけ視界に入らないようにこっそりと、その

          【植物SF小説】RingNe【第2章/①】

          【植物SF小説】RingNe【第1章/⑥】

          《第一章は下記より聴くこともできます》 第1章/⑤はこちら #田中  研究室に戻り、PCを開いた。アルビジアのタスクリストを確認して、テロメアの再生に関する最新研究の論文要約に取り組む。アルビジアのタスクリストには不老不死関連の研究開発タスクが並べられていた。現在はBMI経由で右半球下前頭皮質に時間感覚を遅くさせる信号を発信し、一日を二千四百時間に引き延ばし体感覚的に不老不死を得る「TiME」というプロダクトのリリースが迫り、チャットが盛り上がっていた。  アルビジア

          【植物SF小説】RingNe【第1章/⑥】

          【植物SF小説】RingNe【第1章/⑤】

          《第一章は下記より聴くこともできます》 第1章/④はこちら #葵田葵② 透明なソファーが配置された白く広々とした空間に、数台のカメラが設置されていた。そそくさと腰をかがめてやってきたディレクターに別席へ案内されると、既に三田さんがそこにいた。  「葵田さん、はじめまして。三田と申します。今日はお会いできること楽しみにしていました」  三田さんは実際にお会いしてみると、歳の割にかなりお若く見えた。  「葵田です。こちらこそ、今日はよろしくお願いします」と会釈した。

          【植物SF小説】RingNe【第1章/⑤】

          【植物SF小説】RingNe【第1章/④】

          《第一章は下記より聴くこともできます》 第1章/③はこちら #三田春②  テレビ局から会社への帰り道、近くの自然公園へ母の墓参りに行った。アジサイの横に生える、2メートルほどのガマズミ。追い越したはずの身長は再び抜かされていた。 灰褐色の樹皮に、広卵形の鋸葉を繁らせ、ナンテンの実に似た小さな赤い実を実らせている。子どもの頃から母とよくここに来て、顔がねじれるほど酸っぱいこの実を摘んで、互いのリアクションを笑いながら食べていた。 この樹の下に葬ることは、まだコミュニケ

          【植物SF小説】RingNe【第1章/④】

          【植物SF小説】RingNe【第1章/③】

          あらすじ 人生の終わりにはまだ続きがあった。人は死後、植物に輪廻することが量子化学により解き明かされた。この時代、人が輪廻した植物は「神花」と呼ばれ、人と植物の関係は一変した。 植物の量子シーケンスデバイス「RingNe」の開発者「春」は青年期に母親を亡くし、不思議な夢に導かれてRingNeを開発した。植物主義とも言える世界の是非に葛藤しながら、新たな技術開発を進める。幼少期に病床で春と出会った青年「渦位」は所属するDAOでフェスティバルを作りながら、突如ツユクサになって発

          【植物SF小説】RingNe【第1章/③】

          【植物SF小説】RingNe【第1章/②】

          あらすじ 人生の終わりにはまだ続きがあった。人は死後、植物に輪廻することが量子化学により解き明かされた。この時代、人が輪廻した植物は「神花」と呼ばれ、人と植物の関係は一変した。 植物の量子シーケンスデバイス「RingNe」の開発者「春」は青年期に母親を亡くし、不思議な夢に導かれてRingNeを開発した。植物主義とも言える世界の是非に葛藤しながら、新たな技術開発を進める。幼少期に病床で春と出会った青年「渦位」は所属するDAOでフェスティバルを作りながら、突如ツユクサになって発

          【植物SF小説】RingNe【第1章/②】

          【植物SF小説】RingNe【第1章/①】

          目次: 【第1章/① #三田春】 【第1章/② #渦居瞬】 【第1章/③ #葵田葵】 【第1章/④ #三田春ⅱ】 【第1章/⑤ #葵田葵ⅱ】 【第1章/⑥ #田中誠也】 【第2章/① #渦居瞬ⅱ】 【第2章/② #三田春ⅲ】 【第2章/③ #渦居瞬ⅲ】 【第3章/① #葵田葵ⅲ】 【第3章/② #佐藤】 【第3章/③ #佐藤ⅱ】 【第3章/④ #佐藤ⅲ】 【第3章/⑤ #渦居ⅳ】 《第一章は下記より聴くこともできます》 #三田春 まず、光があった。光合成で吸収し

          【植物SF小説】RingNe【第1章/①】

          全人類に体験してほしいので書く

          拝啓、全人類へ主催イベントの告知、というモチベーションではもはやなく、表題通り全人類に推したい体験があるので、書く。 主催が言っても訝しいかもしれないけれど、誇張なしで「世界認識が変わるレベルの体験」が、このフェスティバルにはある。 肥沃な畑の土を片手でひと掬いすると、その土の中にはいくつの微生物たちが住んでいるか? その数は地球の総人口をゆうに超える。 畑とはもはや宇宙であり、農業とは宇宙を司る。 「Mud Land Fest(マッドランドフェス)」は40年以上に渡

          全人類に体験してほしいので書く

          『52ヘルツのクジラたち』映画レビュー/まだ名前のない関係性。響き合うもの。

          久しぶりに映画レビューを書く。オールタイムズベスト10に入るくらい好きな小説の映画を観てきたから。 「52ヘルツのクジラ」とは、他の仲間たちには聴こえない高い周波数で鳴く世界で1頭だけのクジラのこと。その鳴き声は1980年代からさまざまな場所で定期的に検出され「世界で最も孤独なクジラ」と呼ばれている。 クジラの声は、人間が聴くと一瞬で鼓膜が破れてしまうくらい大きい。それだけの音量で、暗い海のなか、誰にも受け取ってもらえない声を出し続ける寂しさは、悲しさは、虚しさは、想像す

          『52ヘルツのクジラたち』映画レビュー/まだ名前のない関係性。響き合うもの。