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IMPACT ONLINE SESSION〜第二回 IMM勉強会〜

こんにちは。インパクトスタートアップ事務局です。
先日、会員向けに「IMPACT ONLINE SESSION〜第二回 IMM勉強会〜」を実施しました。第1回では、IMMの基礎やコンセプトについて学びました。
今回は、実例を踏まえ、実務でどのようにIMMが規定され、活かされているのかをレポートでお届けします。

講師のご紹介

今回講師としてご登壇したのは、協会の理事を務める五常・アンド・カンパニー株式会社(以下五常)の経営企画部長 田中はる奈さんと、協会の副事務局長を務めるライフイズテック株式会社(以下LiT)取締役CFO兼インパクトオフィサーの石川孔明さんです。なお、モデレーターは、第1回と同様に協会の代表理事を務める星直人さんが担当しました。

前回のおさらい

IMMとは、Impact Measurement and Management(インパクト測定及びマネジメント)の略称です。
インパクトマネジメントとは「事業や取り組みがもたらす変化や価値に関する情報を各種の意思決定や改善に継続的に活用することにより、インパクトの向上を目指す体系的な活動」を意味し、その目的はインパクト拡大に向けた事業活動の改善です。
では、実務でどのようにIMMが実装されているのか事例とともにご紹介いたします。


■五常・アンド・カンパニーの事例

五常は、発展途上国の金融機関(グループ会社)を通じ、マイクロファイナンス(小口の金融サービス)を現地の低所得者層に提供するスタートアップであり、グループ会社への資金提供や経営支援といった手段で、付加価値を創出しています。

IMMを始めた経緯

五常では、「業務の改善」「責任ある経営の実現」「資金調達」の三つを目的に、創業当初からIMMを行っています。創業当初はソーシャルパフォーマンス管理という、顧客保護を中心としたオペレーション監査及び改善に注力し、徐々に顧客理解や顧客へのインパクト創出、直近ではESG的な要素も含むステークホルダーインパクトへとスコープを広げていきました。

IMMが実務でどのように実行されているか

五常はTheory of Changeというフレームワークを用いて、各ステークホルダーへのインパクトが最終的に顧客インパクトの最大化にどうつながるかを定義しています。同時にマテリアリティマップも策定し、五常にとって最も注力すべきインパクトの領域は何かを決定しました。特に重要である顧客インパクトに関しては、Client Centric Frameworkという独自のモデルを採用し、フレームワークに沿ったインパクト指標のデータ収集を行っています。

また、インパクト測定を行う上で、様々なデーターソースを活用しています。貸付を行う際に全顧客から収集するデータ、サーベイデータ、第三者によるインパクト調査、少数の非常に詳細な家計簿データを収集する独自の調査などを行い、事業全体の定量的なデータと個別の顧客へのインパクトを把握しています。

IMMの振り返り

IMMを通じて、顧客や会社を取り巻くもっと多様なステークホルダーを意識するようになった、投資家へのコミュニケーションツールとなるインパクトレポートを作ることができた、等の良い面があった、と田中さんは語っていました。
その一方で、インパクト測定が事業改善まで繋がりにくいこと、投資家の重視したい指標・データが相異なっており、提供できるインパクトデータが限定的であることが現状の課題であり、データ取得の観点においても、フレームワークが日々更新されていく中で、データの連続性に問題があったり、データ取得そのものに多大な労力・コストを要することも問題視していました。


■ライフイズテックの事例

LiTは子どもたちのウェルビーイングの向上・イノベーション人材の育成、の二つを目標に、プログラミング教室やイベントの企画運営を行う会社です。中高生向けプログラムから始まり、現在では学校で利用する教材システムから、企業向けDX研修事業にまでその事業領域を拡大しています。

IMMがなぜ大事なのか

石川さん曰く、「中高生にどんな機会を提供したいのか」「そのためにはどのような事業を行う必要があるのか」という問いに対する探究のPDCAサイクルを回すことがIMMであり、投資家に要請されてやるものではないことを強調していました。
スタートアップとしてリソースが限られる中で、完璧なIMMを目指すのではなく、自社がIMMに取り組む理由を明確化し、それに沿った重点領域にフォーカスすることが大切だと語ります。
ライフイズテックはIMMをコストではなく投資だと考えており、インパクト創出のためのR&Dとカスタマーサクセスのプロセスに組み込み、マーケティングや組織運営にも活用できるといいます。
最後に、IMMを推進するにはトップのコミットメントが不可欠であり、会社一丸となって取り組むことで初めてIMMが価値あるものになると語っていました。

実際どのようにIMMが運用されているのか

LiTでは、事業ごとにロジックモデルを構築し、このモデルに沿ってアンケートやヒアリングを通じたデータ収集や、学術研究との連携を行っています。実際に、事業を通して「自己効力感が高まった」という子どもや、「ITを教える立場としての不安が減った」「こども一人一人と丁寧に向き合えるようになった」という先生の数が増えていることが判明しました。また、長期的な成果として、起業する次世代人材も増えているそうです。
こうした積み上げが営業先への単なるアウトプットではない訴求や、社員の自信を生み出すことにも寄与していることも、IMMの実際のメリットとして挙げられていました。


最後に

スタートアップは多種多様でIMMのアプローチは千差万別です。五常・LiTの両社が「まずは始めてみて、トライアンドエラーを通じて改善していくこと」を特に重視していました。
限られたリソースや、経営者のIMMへのコミットメントが大きな課題となりがちですが、今回の実例の紹介を通し、IMMを推進していくメリットが明確化されたのではないでしょうか。

最後までお読みいただきありがとうございました。
引き続きIMM勉強会の様子をレポートしていきますのでご期待ください!

 

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