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【重要】論文紹介:RNAワクチン接種後のSLE悪化が統計学的に有意

今日は非常に重要な報告がなされているので、それを紹介しよう。論文は以下のものである。

「Risk of disease flares after SARS-CoV-2 mRNA vaccination in patients with systemic lupus erythematosus」
(Immunol Med. 2024 Jan 8:1-9. doi: 10.1080/25785826.2023.2300163.)

この論文は自己免疫疾患であり代表的な膠原病であるSLEについて、RNAワクチン接種後の再燃リスクを科学的に臨床研究したものだ。今までの症例報告とは異なり、未接種症例を対象として統計的に比較しているという点で重要である。核酸ワクチン接種に伴うSLEの再燃についてはいくつもの症例報告があり、また健常人においても核酸ワクチン接種によって抗核抗体などSLEの原因となる自己抗体産生が促進される可能性も報告されてきた。これらの知見は全身性自己免疫疾患において核酸ワクチンが発症・悪化のリスク要因となる危険性を十分に示唆するものであったが、今回の研究でそれが明確に示されたと言ってもいいだろう。

今回の論文では2回のRNAワクチン接種(BNT162b2またはmRNA-1273)を受けた未感染のSLE患者と、過去のワクチン未接種患者を各90人ずつ登録して2回目のワクチン接種の4週間後に中和抗体、副反応、疾患の再燃を評価している。なおワクチン接種前のSLE疾患活動性指数(SLEDAI)とプレドニゾロン投与量は等しくなっている。

重要な知見として、SLEDAIがワクチン接種後に緩やかではあるが有意に上昇し、13例(14.4%)に再燃がみられ、4例(4.4%)に重篤な再燃(3例に腎炎、1例に血管炎)がみられたということだ。SLEDAIが統計的に有意な上昇を示したという事実は、科学的に核酸ワクチンの接種がSLEの悪化を引き起こすことを意味している。また、再燃率はワクチン接種患者でワクチン未接種の対照群より高かった。これらの結果は核酸ワクチンの接種がSLEの悪化に明確なリスク要因となっていることを意味している。

因みにであるが、インフルエンザワクチンなどではSLEの悪化は起こらないことが証明されている(Rheumatology. 2016;55(9):1664–1672. )。全身性自己免疫疾患に関して言えば、核酸ワクチンは核酸認識受容体の活性化に伴う自然免疫の活性化やインターフェロン産生の促進を引き起こすことが重大なリスクとなっている可能性が高い。また核酸ワクチンに特有のMHC-I経路による細胞性免疫の活性化が臓器特異的自己免疫疾患に寄与しているという事実は常に述べている通りだが、その現象に伴う自己細胞の破壊が間接的に全身性自己免疫応答の成立に寄与している可能性も十分にある。核酸ワクチンによる特有の免疫系活性化機序と、その強力過ぎる免疫活性化、免疫バランスの崩壊は明確に自己免疫疾患のリスク要因となり得る。今まで何度も主張していることだが、今回の研究はそれを明確にする第一歩だと言えるだろう。

私は断言を強める:
「核酸ワクチンは明確に自己免疫疾患悪化のリスク要因となる」

(参考)


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