AI作品/創作へのスタンス24.4.7

前回今年2月末にAI作品/創作へのスタンスをまとめましたが、速いペースでAIの発展や展開があり、また、それ以上に生成AIにまつわる問題・議論や反対運動が加速・過熱していることから、まとめを更新しておきます。※あくまで私個人がクリエイターとして生成AIに関わるスタンスのまとめです。
また、前提として私は現状、AI推進/反AIどちらのムーブにも参加はしません。

まず、クリエイターとして私自身の創作について、現在私がメインで(仕事としても自身の主要な創作活動としても)行っているゲーム開発には現時点ではAIは用いないスタンスです。(前回まとめ同様)
具体的にはIMYUICブランド(ディレクターとして開発している『Terminus Historia』シリーズ)/imayui個人(『ユトレピアの伝説』等自分の手でドット絵・手描き絵やBGM等の素材から作っているゲーム作品)の開発が私のメインのゲーム開発です。今年はそれ以外にもAVGを開発・リリース予定ですが、同様に生成AIは用いません。

現状、メインの創作に生成AIを用いない理由としては以下です。

1. 生成AIが受け入れられる状況ではない
前回まとめでは第一に生成AIの技術的な課題に触れましたが、現況を鑑みるとそれ以前の状況と思われます。これに関しては既に世間一般的な認知のレベルになってきているのではと感じるのでここで詳細に触れませんが、個人/企業ともに生成AIを使用した作品・商品を発表しただけで反感を買いマイナスイメージになってしまう状況下では、堂々と表立って生成AIを使用した作品・商品を公開することはできないと思われます。生成AIを使用していなくても疑惑をかけられるという魔女狩りが行われるフェーズです。仮に大手や有名企業が生成AIを使用したことを隠して公開してもこのフェーズでは必ず誰かが暴いて晒し上げを行ったり炎上する流れになるでしょう。

参考・関連記事

また、簡単に触れるに留めますが、市場に関しても生成AIを(主体として)使用した作品は実質的に区分け・隔離されている現状で、市場として成立しているとは言えないと思われます。DLsiteでは一時、生成AIを使用したゲームが数千本売れているのを目にしたことがあり、これは生成AIゲームのブームなのではと思ったことがあるのですが、フロアの区分け後は一気に売れなくなった、と耳にします。(前回時点では生成AIを使用した作品を受け入れるとしていたSteamや、生成AIを使用した作品が溢れたAmazon等が現在どうなっているのか全貌は把握できていません。生成AIに関してこれだけ課題・問題が噴出している時期に全てを自身の目で把握するのは困難ですので、現状はその時その時で入ってくる情報やまとめ記事等を参考にしています。自身の目で見て市場を体感しておくのが一番ではあるのですが…。)

2. 生成AI使用で生じる問題が多い
前回まとめで所感を書いていますが、既にWEB上に多数の具体事例のまとめがされているので参考・関連記事としてリンクを貼っておきます。

参考・関連記事

3. 生成AIの技術的な課題
仮に、現状で生成AIが受け入れられる状況・市場ができていたとして、(以下は前回同様になりますが)世界観を作る上で、各素材の統一感を維持する・統制を取ることは自身の創作において重要視している点なので、これまでに書いているように現状の生成AIで、ゲームや絵本・漫画等の連続して統一感の必要な創作且つ長編となると、必要な枚数や内容の素材を生成することは大変難しいというのがまず一つの理由。(予算のある企業や生成AIに精通した個人クリエイターが規模の大きいプロジェクトに生成AIを用いている例はあるだろうしこれからも増えてくるのではないかと思いますが、少なくとも現状では相当の技術やコストを要すると思うので、現実的ではなく、仮に同じコストを投入できるとしてもノウハウの面から人の手を用いた方がクオリティの面でもスケジュールの面でも確実に良い作品ができるだろうと思います。)(前回まとめ同様。こう書いた次第ですが、現状は企業においても第一に挙げた問題で生成AIに大きなコストを投入するのかどうかは疑問。ただ、大企業はやりづらいけど、中小の企業やインディペンデントの企業/個人が風潮を気にせず使ってくることは増えてくるのでは、とも思います。法的な課題・モラル的な課題を差し置いてもそれだけの技術的ポテンシャルがあることは確かなので。)
しかし技術的な課題に関して、かなりの速度で発展が進んでいることは感じます。私はmidjourneyのProPlanに入っていますが、--srefや--crefといったプロンプトの使用でスタイルやキャラクターをある程度保持できるレベルになってきています。部分的な修正も可能です。midjourneyだけを見ていても、技術の進展はかなり速く進んでいると感じます。(逆に色んなツールの技術発展が速すぎてとても追いきれない・把握しきれないレベル。)

メインの創作に生成AIを用いない理由としては一旦以上です。

生成AIによって起こること・既に起こっていることでもあると思いますが、懸念点というか、一体どうなるのか、と思うところについても書いておきます。この点についても、幾つか同じ懸念を挙げている記事にも触れているので、一つリンクに挙げておきます。

参考・関連記事

上記記事からの引用

音楽生成AIの課題:
1.市場の飽和:
誰でも容易に音楽を生成できるようになると、市場には大量の音楽が溢れ、特に新規参入者や独立したアーティストにとっては深刻な問題に発展する可能性がある。
…(中略)…
3.音楽市場の不均衡:
音楽生成AIの普及は、音楽市場の構造を変え、不均衡を生じさせる可能性がある。特に、生成AIによる低コストの音楽制作が普及すると、従来の方法で音楽を制作するアーティストに大きな影響を与える可能性がある。

https://note.com/creative_edge/n/nfe94948d4c00

これは音楽生成AIに限った話ではなく、全ての生成AIに言える話だと思いますが、既存の市場に与える影響についてですね。
私の知るところだとDLsiteやFANZAはかなり速い段階で生成AIを使用した作品を区分けする措置を取りました。pixivもそうなっていたと思います。(先述のようにAmazonやSteamの現状は把握できておらず。音楽・映像だとYoutubeはAI使用作品を区分け・隔離等はしていない。ただアルゴリズム内部はわからないが……また、SpotifyやAppleMusic等の音楽ストリーミングサービスやダウンロードサービスもAI生成音楽を区分け・隔離はしていないようである。)
体感ですが、DLsiteやpixivで生成AIフロアが分けられたことで、分けられただけで、既存のクリエイターの市場はかなり守られたように感じます。
ただ、生成AIを使用した作品で、作品の質・内容として素晴らしく出来のいい作品が出てきた時に、単に生成AIを使用した作品だからということでその作品が受け入れられない・認知されない、というのはどうなのだろう……ということは思ったりもします。
画像生成AIを例に取れば、仮にプロンプトも既存のプロンプトを使ってボタン一つでプロレベルのクオリティのイラストが生成できる水準になっており、SNSでもいわゆる神絵と言われるレベルの絵が溢れても、そのイラストを生成した人がプロのイラストレーターとして生業を立てたり人気絵師として(あるいは人気術師という呼称があったとしてそうとしても)広く一般に認知される、といったことは基本的には起こり得ていないのではと思います。(私も画像生成AIが流行した初期、試行的にSNSで生成したイラストを投稿してみた時期がありますが、その初期、生成AIに注目した人達からの少しばかりの反応があったというくらいで、結局的にはSNSの使い方の上手い人がある程度フォロワーを獲得していったということはあれども生成AIへの現状の風潮の中、一般的なファンを多数獲得するということにはなかなかなり得ていないではと体感では思います。※インフルエンサーとして注目されているごく一部の人は除く)
これが、音楽生成AIなら、映像生成AIなら、どう反応が変わるのか……あるいは、それらを組み合わせた作品なら? あるいは一部を人の手で作り、一部を生成AIを使用して作った作品なら? と。そういうことは考えます。
勿論現状でも生成AIを補助的に使用したり作品の一部に使用している作品はそこそこ作られて市場にも流通していると考えられ(その面ではかなり生成AIのツールとしての使用は一般化してきているのではと思うのですが)、先述のDLsiteにおいてもゲームジャンルだと一部使用(ゲームで背景だけに使用とかどのくらいの使用範囲ならよいのかまでは詳細把握できておらず)であれば生成AIフロアに区分け・隔離されることなく、しかし「AI一部利用」は明記の上で、販売されています。それを見る限りにおいては、売上に影響もなく売れる作品は売れているし一部にAIを使用していることに批判があるでもなく受け入れられているように感じます。それはゲームの場合は主眼がイラストのみにあるわけではないことも大きいでしょう(ゲーム性やストーリーやイラスト・音楽等の総合芸術であり、またイラストにおいても基本的に主体となるのはキャラクターと言えるので)。2万本以上売れているゲーム作品で「AI一部利用」のゲームもあります。
急進的な反AIの考えでなければ、人の手が入っていれば(もしくは一部利用や補助的利用等AI利用の度合いが低いほど)AIを使用していても受け入れられるというふうに感じますが、現状は画像生成AIを中心に生成AIへの反対運動が過熱・苛烈化している渦中にありその声や動きが大きく、生成AIを使っていることへの過剰反応が起こり、すぐに炎上してしまう、という状況というところではないかと感じます。また、生成AIを悪用した問題の印象も大変に悪く、世間一般にもそういったマイナスイメージが浸透している面もあるのか、とも思います。

最後に私としては、メインでの創作以外に生成AIツール自体は実験的に使用は続けるつもりです。画像生成AI・音楽生成AI・映像生成AI……特にこの後(今年中?)に一般公開されると見られているOpenAIのSoraは情報を見聞きする限りでは驚くべき技術です。声高に推進を語ることはしませんが、詩人として言葉を書き、ゲームクリエイターとしては絵も音楽も手一つで作りとしてきましたが、今はディレクターとして言葉や絵や音楽を統合的に扱い、それらを編集や補助する(そこに生成するが加わったことになりますが)制作ツールとどう関わるかが重要な身としては、技術の発展にどう接するかは自身の命綱でもあります。
前回触れたように、クリエイターを守るための法整備は不可欠であると思いますが、その上で私にはここまで発展した技術をなかったことにすることはできない、不可逆であると思っています(勿論生成AIが禁止される未来もあり得なくはないと思います。それでも)。クリエイターとしてのサバイブに関わる以上、状況が整うまで様子見する・見守るのは自身のクリエイターのスタンスに反すると判断します。

(この部分は前回同様となりますが)法整備・各プラットフォームの整備が成され、技術的に更に発展されれば、創作を飛躍的に向上させるツールとなり得ると考えるからです。(ただそれには現状まだまだ問題が多い……というのは上に書いた通りです。)
あくまでそう考えるだけで、その時に私自身がAIをツールとして使うか(あるいは使いこなせるか)はわかりません。もしかしてそういう状況が整っても、最終的には現時点でのメインである創作方法のまま、人の手や自分の手だけで作品を作り続けるかもしれません。

今は今まで通りの人の手による創作・制作を続けると共に、AIについては試行と実験を行うスタンスを取ることを記載しておく次第です。

あとがき
この記事を書くのは疲れました。前回記事やこれまでの生成AIを触ってみた記事のように楽しいということを書くのも憚られるような、日々目に入ってくるニュースや声は、生成AIへの反対表明や運動が苛烈な現状です。勿論それには生成AIを悪用して被害を受けているクリエイターがいる事実もあります。
noteには生成AIを楽しく触ってみた記事や生成AIの使い方や普及につとめる記事も多いですし、私もまた生成AIを試してみてどうだったという記事は書こうかと思っていたものの、この状況を鑑みるにあまり気乗りはせず筆は進まないです(元々そこまでnote記事を書くことに注力しているわけでもなく)。休み中には生成AIを使ってみたり生成AIについて考えたりしてきましたが、そろそろ休みも終えて、今後はまたメインであるゲーム開発に戻り、休みや合い間での試行を続け、まとまった記事や何らかの成果があった際に記事にするかと思います。


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