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国税徴収法アラカルト(3)~滞納処分に進まないようにまず検討しよう①「納期限の延長」~

前回、取り急ぎ、まずは税務署への納税相談の大切さについて触れたところですが、納付誓約書等でひとまずの対応をするような、法律に規定のない分割納付については、むろん限界があり、実務的にも、「3か月分割」が限度として運用されているようです。

3か月程度の猶予では、到底済まないようなケースも当然でてくるわけでありまして、そうすると、やや敷居が高くとも、やはり法律に沿った、正規の納税猶予制度を適用していく可能性を、検討していく必要があるものと思われます。

納税者の側としては、税務署に納税相談に訪れる前に、少しでもこれらの正規の納税猶予の知識を持っておくだけで、安心感が全然違ってくるでしょう。

そこで、ここからやや長期にわたるとは思いますが、少しづつ、これら正規の納税緩和制度について、何回かに分けて触れていきたいと思っております。

今回は、文字通りの「納期限の延長」についてになります。

これは、国税通則法第11条に規定されています。

(国税通則法第11条)災害等による期限の延長

国税庁長官、国税不服審判所長、国税局長、税務署長又は税関長は、災害その他やむを得ない理由により、国税に関する法律に基づく申告、申請、請求、届出その他書類の提出、納付又は徴収に関する期限までにこれらの行為をすることができないと認めるときは、政令で定めるところにより、その理由のやんだ日から2月以内に限り、当該期限を延長することができる。

文字通り、すなわち「納期限そのものを延長する」というものです。

先の「納付誓約書よる分割納付」も一種の「納付の延長」という性格があり、その違いが分かりにくいかもしれません。

違いとして、国税通則法第11条に基づくものは、大きなメリットがあります。

どのようなメリットかと言いますと、国税通則法第63条第2項を見てみますと、次のように記されているからです。

(国税通則法第63条第2項)
第11条(期限の延長)の規定により国税の納期限を延長した場合には、その国税に係る延滞税のうちその延長をした期間に対応する部分の金額は、免除する。

つまり、遅れて納付することとなりながらも、延滞税はかからないという点が、大きなメリットとなるわけです。

前回、お話ししました通り、法律の規定に基づかない「納付誓約書による分割納付」の場合、延滞税はかかってしまう事になり、その点で大きく異なります。

大きなメリットがある一方で、国税通則法第11条の規定により、納期限の延長を認めてもらうためには、「一定の理由」があることが必要となってきます。

延滞税免除の分、もちろんの事、ハードルが高めになっているのです。

そこで、税務署にその「一定の理由」を知ってもらうために、「災害による申告、納付等の期限延長申請書」の提出が必要となってきます。

「一定の理由」が止んで、提出可能となってから2ヶ月以内に、申請書を提出する事することで、税務署側が、申告納付可能と思われる期日を、個別に設定してくることとなります。

近年のコロナ禍において、まず推奨されている納付困難時の初動対応が、この延長申請です。

突然のアクシデント時には、まずこの延長申請をすることが、望ましいものと考えられるでしょう。

ただし、即効性を有する反面、経済的困難に起因する問題の解決には、直結しないという性格もあります。

あくまで「応急処置」という位置付けになるのが、この国税通則法第11条の「納期限の延長」規定なのではないでしょうか。





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