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国税徴収法アラカルト(2) 「即差押え!」なんてなるわけでなくて(納付が困難と思われる際にまずすべきこと)。

前回、納税義務者と税務署との間に、租税債権債務が確定することで、はじめて税務署側に徴収権限が発生することをお話ししました。

何事もなく、納期限までに納税義務者が、納付履行すれば、租税債権債務は消滅し、一件落着となることもお知らせしたところです。

しかしながら、納期限までに履行することがなされないケースは、必ずしも少ないとは言えず、その理由は、資金繰りの問題もさることながら、納税義務者側の倫理観的な側面から、履行がなされないようなケース、はたまた、もっと単純に「納付するのを忘れてた」なんていうケースなどなど、原因は本当に様々です。

特に資金繰り上で、納付が困難な場合、まずなにはともあれ、恥ずかしがらずに、正直に、管轄の税務署に納税相談に行くことが望ましいと思います。

表現が適切でないかもしれませんが、納税者の方々は、必要以上に税務署に恐恐としている印象も少なからずあるようです。

ですが、事情を説明すれば、税務署の方々は、真摯に相談にのってくれることと思われます。

国税庁徴収部も歴任された深井剛良先生の著書「滞納整理のカンどころ」(一般財団法人大蔵財務協会)の中で「徴収職員は、滞納という病気を治すお医者さん」と語られているように、納税者側のイメージ以上に、親身に対応していただけるのではないかと感じています。

そしてここで大切なことは、国税徴収法関連の法規には、よく出てくるフレーズですが、納税者が、納税について「誠実な意思」を有していることです。

非常に抽象的な表現ではありますが、この意思を有して相談に臨むことが、大前提となると思います。

そして、本来であれば、法規に沿った、各種納税の猶予や換価の猶予などの制度を適用して、納税者に無理のない納税計画をプランニングしていくことになります(これらの正規の猶予制度については、次回以降に詳細を掘り下げていく予定です)。

そんな正式な猶予制度が存在するわけですが、適用要件が意外と多く、ややハードルが高めのものも存在することも事実としてあります。

そこで、実務的に法規に基づかず、ある程度の所轄庁の裁量で、融通のきいた対応をしていただけるケースがあります。

たとえば、よく耳にしたことのある「分納」なんて俗にいわれているもの。

最近では、特に消費税の納付が厳しく、納税相談に足を運ばれるかたも多いと思いますが、例えば「3回の分割納付でお願いします」「それではこちらの納付誓約書に記入を」、なんていうかたちで、話し合いがついたりするケースです。
ただし、延滞税は発生することにはなります。

自分がまだ税務の仕事のかけだしのころ、「あれはきっちり法律根拠にもとづいて厳格におこなわれているものなんだろうなあ」なんて思っていましたが、実はあれ、どこにも法律的に手続き規定があるわけではないのです。

もちろん、内規的なマニュアルはあるのでしょうが、がちがちに法律通りというわけではなく、それゆえ、個別の事情に応じて、税務署の方々も、柔軟に対応していただけることが可能となっているのだと思います。

そもそも、滞納なんてしたくないと思う納税者の気持ちに対して、税務署側も滞納なんてさせたくないと考える気持ちは同じであります。

ちょっとでも納税が心配だな、と思ったら、とにかくまず税務署に相談。

滞納以前に、それを防ぐ納税者側の初動として、大事なことではないでしょうか。

滞納の状態になってしまうと、正式な「国税徴収法」という法規に基づいて、徴収職員が滞納状態を解消させる処分に移ることになるのですが、それでも、簡単には、「即差押え!」なんていう鬼のようなこともないと思います。

必要以上に怖がらないこと、そしてくどいようですが、納税について「誠実な意思」を有することが、まず肝心なところだと思います。





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