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国税徴収法アラカルト(1)滞納処分それ以前のお話し(納税義務の確定)

国税徴収法は、主に滞納処分等について規定した法律になります。

租税についての滞納処分等が行われることそれ以前に、その滞納処分の対象となる租税が存在していなければ、滞納処分等へ進行していくはずがありません。

非常に当たり前のように聞こえますが、
国税徴収法という、「一品税法」を知り、味わう前には、その前提を知る必要があります。

それでは、課税庁と納税義務者との間に租税債権債務の関係が発生するためには、どのようなプロセスが前提になるのでしょうか。

租税は以下のようなプロセスを経て、発生していきます。

①納税義務の「成立」
②納税義務の「確定」
③①②を経て、租税債権債務が、課税庁と納税義務者との間に発生する。

そして、その後に…、

④もし納税者が、きちんと「納付」すれば、租税債権債務関係は「消滅」して、ここで無事、一件落着となります。

いわば、国税徴収法の出る幕なし、といったところでしょうか。

⑤しかしながら、④のように、無事「納付」が履行されない場合、その租税債権債務の関係は、残念ながら「滞納」という状態へ、突入していくことになります。
この段階で、いよいよ国税徴収法の出番、となるわけであります。

上記①、②の段階について、もう少し説明が必要となるでしょう。

上記①の「成立」もいう概念については、国税通則法第15条に規定されております。

金額はいまだ不明だが、なにかしら税額がでる可能性がある事由が発生したのがいつであるか。
その「発生時期」を、各税目ごとに規定している条文です。

例えば、最もポピュラーな所得税ならば、「暦年終了の時」、と規定されています。

すなわち、12月31日で一年が終わると、「計算してみないとわからないけど、もしかしたら税金を収めなくちゃいけないかも…」という状態に、誰もが置かれるということを意味しています。

上記①を受けて、上記②において、具体的な金額を計算し、税額を「確定」することが行われます。

その「確定」させるための方式は、国税通則法第16条に規定されており、2つの種類が取り上げられてます。

(1)申告納税方式
(2)賦課課税方式

これに加えて、国税通則法第15条③項の規定になりますが、

(3)自動確定方式

という方式を合わせて、3種類の確定方式が存在します。

(2)と(3)の方式については、ここではひとまず詳細割愛で、置いておきたいと思います。

やはり、税額確定の方式で主要なのは、上記(1)の申告納税方式となります。

原則的には、納税義務者からの「申告」によって、税額が確定し、ここではじめて、租税債権債務関係が発生することになります。

ここのでの確定行為は、納税義務者からの、申告に対する「自主性」が、最大限に尊重されている分、納税に対しての心理状況も、幾分穏やかなものと考えられます。

しかしながら、
a「①の納税義務が成立しているのに、申告がない」場合、すなわち「無申告」と呼ばれる状態の場合や、

b「②の申告があったにも関わらず、課税庁の税務調査等により、その税額が異なることが判明した」場合のようなときは、

課税庁サイドから、
aの場合→「決定」
bの場合→「更正」

という、「処分」を通じて、
一方的に税額を「確定」させられることで、租税債権債務関係が発生するようなケースもあります。

この形で税額が確定されると、一方的処分感が強く、納税義務者の心理状況としても、消極的な感情になってしまいがちです。

申告納税という前提の中にも、税額確定のルート次第で、納税モチベーションが大きく左右されるのは、なかなか悩ましいところでしょう。

この納税モチベーションが、後の国税徴収法適用フィールドに突入したときに、実務的に様々な悩ましさを発生させているのかもしれません。



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