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【旅日記】私の知らない京都を歩いてみる(京都府/京都市内)

京都というと観光地としてあまりにも有名だが、茶筒、お香、和菓子、版画、木版印刷など、観光名所ではないが私が行ってみたかったお店を訪れた。

開化堂、貝葉書院、京都徳力版画館 まつ九、林龍昇堂、三條若狭屋、竹笹堂、京都で今回訪れたお店の名前だ。ほとんど人がいなかった。京都が観光客で混み合っているなんて嘘みたいだ。

仕事帰りの金曜の夜、京都に向かうために東京駅へ。東京駅では急に海鮮丼が食べたくなり、夕飯はちょっと奮発した。ぷらっとこだまに乗り、3時間半かけて京都へ。23時半に京都に到着し、そのままホテルのベッドに倒れ込んだ。

深夜の京都駅

朝から京都。朝ラーメンを食べに京都駅近くにある「本家 第一旭 本店」へ。6時過ぎについたが、すでに10人以上の並びになっていた。人気店とはいえ、みんな朝から早い。

メンマが好きなのでメンマラーメン
本家 第一旭 本店

並んでから40分経って、ようやくラーメンにありつけた。味は、天下一品のこっさりに近い感じだ(比較できるものではないが)店主と思しき人が、4人分の麺を釜で一気に茹でて、平ざるで麺をすくい上げ、ひょいひょいと4人分に分けて丼に振り分ける。職人技だ。食べ終わって「ごちそうさまでした」と声をかけると、「おおきに!」と返してくれた。関西に来たんだなという実感が湧いてきた。

メンマが追加されたメンマラーメン

腹ごしらえを済ませた後、東本願寺へ。とにかく京都にあるお寺のスケールがデカい。一方で、朝早いからか境内にはほとんど人がいなかった。耳をすませると、堂内からお坊さんたちの念仏を唱える声が聞こえてくる。

東本願寺の本堂

靴を脱いで堂内に上がると、重厚なふすまで閉ざされていて中が見えない。入っていいかどうかわからず突っ立っていると、ふすまを開けて中から出てくる人を見かけた。中に入っても大丈夫そうだなと思い、私もふすまを静かにゆっくり開けて中に入ってみた。奥に、何人かのお坊さんたちがお経を唱えていて、手前には20人近くの人たちが正座するか椅子に座って、じぃっとお経を聞き入っていた。私もその仲間に加わり、聞いたことのないお経だったが正座して聞いた。朝からとても穏やかな気持ちになれた。

唐突に、洛陽三十三所観音巡礼を始めたいと思い、次に1番目の札所である六角堂を訪れた。街中にある比較的小さなお寺で、最初はどこにあるかわからず、通り過ぎてしまった。お寺の門をくぐると、遠くから水のせせらぎが聞こえてきて心地よい。鳩がペタペタと徘徊していたり、白鳥?らしき大きな鳥が池を泳いでいる。8時半になり納経所が開いたので、納経帳と御朱印をいただいた。

納経帳は2000円で、最初、2000円の中に御朱印代も含まれていると勘違いして2000円だけ出していた。すると、困ったような顔で「あの…、御朱印代が別途500円になります」と言われた。とても恥ずかしい気持ちになりながら、500円を取り出して払った。

納経所にあった釜

次に茶筒を求めて開化堂を訪れた。開化堂は思ったよりも住宅街の中にあり、お客さんは私を含めて2人だった。本当にやっているのかどうか外からだとわかりにくく、店の扉が重たくて、開けるのに難儀した。入ってみると、中国人のお客さんが茶筒を買い求めていた。なにやら、自分で上から漆を塗るつもりらしく、お店の人に問題ないかやり取りしているようだった。

120gのブリキの茶筒をくださいと店員さんにいうと、「お店で購入された方には茶さじをプレゼントしているんです。ブリキと真鍮製の茶さじのどちらか選べますが、どうなさいますか?」言われたので、「ブリキの茶さじでお願いします」と答えた。ブリキの茶筒なので、ブリキで合わせようと思ったからだ。

「茶さじですが、3文字まで文字を入れることができます。どのような文字を入れましょうか?」とさらに聞かれたので、自分の苗字を入れてもらうことにした。すると、奥から職人さんが出てきて、目の前で文字を掘ってくれた。なんだか、自分だけの茶筒と茶さじのセットになった気がした。

ブリキの茶筒を購入したのだが「10年くらいでくすんできて、40年くらい使い込むとかなり黒みがかってきます。錫が剥がれてきて、それがまた模様を作ってくれて良い味わいになるんです」と聞いた。手で茶筒を撫で回しながら、大事に使って育てていく。一生ものの道具だ。最後に「最初から洗わずに茶葉を入れても大丈夫ですか?」と聞いたら、「加熱殺菌してあるので問題ないですよ」と教えてくれた。

次に仏教書を求めて貝葉書院を目指した。せっかくなので、鴨川沿いを歩くことにした。鴨川の水はとても澄んでいて川底が見えるくらい透き通っている。そして、様々な鳥たちが自生している。もちろん、鴨川というだけあって鴨も見かけた。東京じゃありえない光景だ。思わず川に手を入れて「気持ちいいー」とジャブジャブした。

犬の散歩をしている人や海外の方で日向ぼっこしている光景を見かけて、「こういう普通の何気ない風景がみんな癒やされるんだろうな。結局のところ」と思った。有名な観光地も良いが、何気ない日本の原風景もまた良い。小川のせせらぎは無限に聞いていられる。

4月中旬の鴨川では、川沿いのお食事やさんが納涼床と呼ばれる川にせり出す形で仮設の床を建てていた。5月からの営業に向けてそれぞれのお店が準備しているようだった。

納涼床の建築風景

貝葉書院に着くと、そこだけ過去にタイムスリップしたかのような空間だった。和紙に木版で刷られた和綴じ本や御姿、経典などが売られていた。ずっと来てみたいと思っていた店だったのでワクワクしっぱなしだった。和綴じ本は棚にしまってあったのだが、お店の人から「棚を開けて中を見ても構いませんよ」と声をかけてもらった。お言葉に甘えて、ガラガラと戸を開けて、丁寧に和綴じ本を開いて眺めた。何が書いてあるか、ぱっと見だと何もわからなかった。

貝葉書院
1681年、木版手摺りの経本出版社として創業

でも、せっかく来たのだから何か買いたい、という衝動に駆られた。漢文で書かれた書物はさすがに読めないので諦めたが、読み下し文になっている書なら読めそうだと思った。その中で見つけた2冊を購入した。買ったのは、成り立てのお坊さん向けの仏教書だ(臨済宗の「雛僧要訓」と曹洞宗の「学道用心集聞解」)また、全国の御詠歌を千首集めたものがあったので、それも購入した。

購入した仏教書と御詠歌

意外だったのが、キャッシュレス決済ができたことだ。江戸時代のお店で、PayPayで決済できるという不思議。「あんまり詳しくなくて…」と言いながら、お店の人がPayPayがQRコード決済であっているか確認してきた。一緒にiPadの画面を見ながら、「うーん、QRコード決済であっていると思います!」と返答した。

QRをカメラから読み取るために、スマホとiPadを近づけてのお店の人と共同作業。「PayPay!」というメロディーが鳴って、お互いホッとする。たぶん、この店でキャッシュレス決済する人のほうが珍しいだろう。払い終わったあと、現金で払えば良かったかな、なんかごめんなさいと思いながら店を後にした。

朝が早かったので、11時開店の「晦庵 河道屋」というお蕎麦屋さんでお昼を取ることにした。昔からあるお蕎麦屋のようで、暑い日だったので中庭までふすまを外して吹き抜けになっていた。日中は25℃近くあったので、風がよく通って気持ちいい。お店の人同士が「明日、甲子園に行って阪神を応援するんです。雨が降らなければいいんですが…」と話している声が聞こえた。京都の人も阪神を応援するんだなぁと思った。

道中、たけのこを売っていた
晦庵 河道屋
中庭

ざるそばに季節の御飯を注文した。そばは麺が太く、つゆは甘い。季節の御飯は春ということで「たけのこご飯」が出てきた。薄味の上品な味だ。柴漬けとご飯の組み合わせがよく合う。「ゴールデンウィークはもっときつくなるわぁ」とお店の人が京都弁で喋っていた。ゴールデンウィークはたくさんの人が来て繁盛するんだろうけど、大変なんだろうなぁと思った。

ざるそば
たけのこご飯

腹ごしらえをしてお店をあとにする。次は版画の版元のお店に行く。京都の街を歩いていて感じるのは、ゆっくりとした時間が流れていることだ。お昼のあとということもあり、どことなく自分の足取りも自然とゆっくりとなる。

目的地である「京都徳力版画館 まつ九」に着いた。入口には暖簾がかかっていて、他に人は誰もいないようだったので、入るのを一瞬躊躇した。思い切って入った先に玄関みたいなところがあり、さらに靴を脱いで入る。ここであっているのかなぁとソワソワしていると、お店の人が出てきてくれて案内してくれた。「3階は版画の展示室になっているんですが、見ていかれますか?」と言われたので、買い物する前に展示室を見せてもらうことにした。

京都徳力版画館 まつ九

3階が展示室になっていて、美人図や川瀬巴水の新版画など、かなり貴重な版画が飾ってあった。私のためだけに電気までつけてくれて、見守られながらの鑑賞だったので少し緊張した。あまり長居をしても迷惑だろうと思い、短時間で鑑賞した後、2階のお店に案内してもらった。

何か買って帰らないといけないというプレッシャーを勝手に感じていた。幸い、良さそうなはがきサイズの版画2点と、仏教の言葉を版画で綴った8枚セットを見つけて購入した。お店の人も同じ仏教の言葉が綴られた版画を持っているようで、たまに好きな一枚を引っ張り出して眺めているそうだ。「いい言葉ですよね」と話して、心が通じあえた気がした。ポストカードも何枚かサービスで入れてくれた。

お店の去り際に「良かったら住所を書いていってください。年賀状などを送りますので。」と言われたので、自分の住所を書き残していくことにした。また、今度来るときに思い出せるように。

没後100年の富岡鉄斎の展覧会をやっていたので、京都国立近代美術館に行ってきた。美術の良し悪しはわからないが、絵を見ていると心が落ち着く。読書しているときの感覚に近いものがある。美術館周辺まで来ると山が近くに見えて驚いた。

橋の向こう側に山が見える

次に、林龍昇堂へお香を買い求めて行ってきた。ここも江戸時代を思わせる店構えで、パッケージも昔のままときている。お店の人がいくつかお香を試しに焚いてくれた。「自分のお好きな香りを選ばれるのが一番です」といっていたので、入っているもの(白檀や沈香など)や値段ではなく、自分の鼻が好きだと思ったお香を買った。結果的に、すみれのオイルが入った「笑蘭香」というお香を買うことにした。

店主さんがお香を炊いてくれた

次に、三條若狭屋でちご餅を買いに行った。ちご餅とは、白味噌を甘く炊いたものを求肥に包んだ和菓子である。お店に入ると店員さんがおらず、困ったなぁとキョロキョロしていた。ちご餅を買うと決めていたので、勇気を出して「すいませんー」と声を出してみた。遠くからうっすらと「はぁーい」という声が聞こえて、お店の人が出てきてくれた。そして、事なきを得てちご餅をゲットした。

三條若狭屋

最後に、竹笹堂を訪れた。ここも木版の版元の1つで寄ってみたかったお店の1つだ。大通りの裏路地みたいなところから歩いていき、本当にここで合っているのかなというような場所に存在した。ここでは、版画のしおりとブックカバーを購入した。版画から描き出される模様が素敵だ。

裏路地にて
竹笹堂
版画のしおりとブックカバー

今日だけで19km歩いたので、夕飯を食べに遠出する元気は残っていなかった。なので、京都駅の近くにあるイオンモールのレストランで食事することにした。京都の町中華の名物となっている「からしそば」を初めて食べてみたが、うまさよりも辛さが強調されて、私の口には合わなかった。他の料理と一緒なら良さそうだが、単品で頼んで食べるもんじゃないなと思った。

からしそば

京都って観光客でごった返していると聞くけど、行く所によっては全然人がいないから良い。

旅日記(2024/04/20)

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