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【雷乃収声】かみなりすなわちこえをおさむ『結婚初日に落ちた話』秋分/初候🍀


小さい頃から運動神経が鈍いせいか、はたまた単なるおっちょこちょいなのか?よく転ぶし、よく落ちる。
ひざ小僧はいつも傷だらけだったし、この年になってもまだと言うか、この年になったから更にと言うべきか、どちらにしても毎年恒例のようにドタッ!と転んで恥ずかしい姿を世間様にさらしている。


小学生の頃に、二段ベッドの上の段から寝ている間に落ちたり、幼稚園の時には二階の手すりから真っ逆さまに落ちてきたこともあるらしい。
小さかったので、どういう状況で落ちたかははっきり覚えていないが、怪我をしたとか病院へ行った記憶もない。
母からすると、夜中に大きな音がしたから見に行くと娘がベッドの下に落ちていたという状況のみ。


これも母から聞いた話だが、寝ている時に急にむっくと起き上がり部屋を出て行こうとする私。
「どこ行くん?」
と母が尋ねると
「トイレ」
とひと言、そして真っ直ぐ玄関の方へ向かって歩いていく。
その頃住んでいたのは結構古い家で、造りが金沢独特の造り(鰻の寝床?)奥の部屋から1度土間へ降りトイレや台所がある。
更にいくつかの部屋を通り越し土間づたいにずっと進むと玄関へと続く。
その長い土間をボーッとしたままトイレを通り越して歩いていく私。
「どこまで行くんや」
もう母の声なんか聞いてない様子。
小さい頃の私には、そんなことがよくあったらしい。
大人になるまでには、そんなことはなくなったから良かった。


話がまたまた逸れたようだ。
新婚旅行から帰ってきた私達に、義母はお鍋を用意してくれていた。
始めての海外旅行、鍋と聞いてメチャ嬉しかったのを覚えている。
夕方まで二階の自分たちの部屋で、旅行の荷物等を片付け、ひと休みしていた夫と私。
階下から呼ぶ義母の声
「お鍋できたよ〜はよ降りといでぇ」
「は~い」
で、ヨッシーさんより先に部屋から飛び出して、いきなりのドドドッ、バタン!!
「どしたんや!」
「大丈夫か!」
何段目から落ちたかは覚えていないが、まぁ真っ逆さまではなく、お尻で滑り落ちてきた感じだったようだ。
少々の打撲はあったが、相変わらず大きな怪我もなく助かった。
まさか、結婚初日に落ちて来る嫁なんて、義母もびっくりしたことだろう(^^)


呑気な事ばっかりは言ってられない。
ちょっとした段差から落ちても大怪我をしたり、命さえ落とすことだってある。
無事に難を逃れた時に、私は必ずある事を思いだす。


私が生まれる前に母は一人目の赤ちゃんを亡くしている。
「色白のきれいな子やったんや」
両親は始めての子を、そして一緒に暮らしていた母方の祖父母は初孫を亡くしたわけだから、その悲しみは計り知れない。


私にはお兄ちゃんと呼べる人がいたんだと、しみじみ思った。
ただ、母が「きれいな男の子やった」と言う度に、私は会ったこともない兄に、ちょっとだけ嫉妬していた。


小さい頃の私は、あやしても笑わず睨んでいる可愛くない赤ちゃんで、近所のおじちゃんからナポレオンと呼ばれていたらしい。
小さい頃の写真を見ると、ほりが深いと言えば聞こえは良いが、ニコリともせず、睨みつけている可愛げがない女の子だった。


そんなワケで、妊娠を知らせた時の母からの注意事項が凄かった。
「のんびりしとると赤ちゃんばかり大きくなって産む時が大変なんやから、いっぱい動かんと。アッ、トイレ掃除すると安産らしいから、掃除もちゃんとするんやよ。病院からもバス乗らんと、歩いて帰んなさいや」
たくさん歩いて、たくさん動いたおかげ様で安産だった。



人生を精一杯生きて、いつか天国に行くことができたら、会えなかった兄と、再び?会うことが出来るんだろうか、なんて妄想しながら、毎日楽しく暮らしている私です。

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