【noteで文化祭】いささか消極的すぎた白雪姫
やふー さんのお誘いを受けて……
わたしも、参加します!
よろしくお願いします☺︎☺︎
エッセイ「いささか消極的すぎた白雪姫」
高校の文化祭は、「白雪姫」だった。
所属していた芸術学科の3学年総出で、
舞台をつくりあげた。
背景画や大道具・小道具を美術専攻の生徒たちが担当し、管弦打楽器専攻&吹奏楽部の生徒は当日、オーケストラを編成して舞台演奏を担った。
3年生で声楽専攻だったわたしは、
クラスメイトたちの推薦で主役に抜擢された。
正直、やりたくなかった。
当時、自己肯定感がゼロどころかマイナスだったので、自分自身に対する周囲の評価の高さ? が、嬉しいどころかものすごくしんどかった。
なんでこんなに買いかぶられるんだろう。
劇で主役張れるほどの人間じゃないのに。
舞台に上がって劇をすると考えただけで、
恥ずかしくて死にそうだった。
さて、白雪姫役は、わたしのほかにあと2人いた。彼女たちは立候補だ。
主役やりたいひとー、と進行役だったクラスの委員長が声を発するやいなや「ハイ!」と手を挙げる、おなじく声楽専攻の彼女たちが眩しかった。
3幕の舞台で彼女たちとともに、1幕ずつ白雪姫を演じることが決まり、ほかの配役もひととおり決まったあと、委員長が口にした。
「脚本書きたいひとー!」
「はい! わたし、やりたい!!」
間髪いれずに手を挙げた。
あのときのワクワク感が、
いまもフワッとたちのぼる。
友人のYちゃんと、彼女とも仲のいいもうひとりの友人Oちゃんと3人で分担して、脚本を書きはじめた。
魔女役のYちゃんは1幕、オケ担当のOちゃんは3幕。わたしは2幕を執筆していたが、ここで、ある問題が発生した。
白雪姫役は声楽専攻の生徒。「独唱(ソロ)」という見せ場を、劇中に設けなければならなかった。ところが2幕は、魔女(継母)に命を狙われた白雪姫がお城を出たあとから始まる。
「お城を出ます。皆さまさようなら、ありがとう〜」みたいな心情を吐露するように、白雪姫が歌を歌って第1幕は終了。
からの第2幕はじまりで、いきなり歌?
うーん……。
2幕が悩ましいのは、そこだけではなかった。
7人の小人たちとの穏やかな生活。
ここで、独唱……?
いや、どうせなら7人の小人との合唱がいい。
せっかく彼らの家で一緒に暮らしているんだから。この場面で白雪姫と小人たちの間に上下関係を作ってしまうのは、違うんじゃないか。
白雪姫と7人の小人の、安寧の日々も束の間。
りんご売りに変装した魔女に毒りんごを食べさせられた白雪姫は、あっけなく死んでしまう。
死んで……しまう?
ソロを入れるなら、ここだったかもしれない。だがしかし!
歌なんか歌ってる場合だろうか。
だって死ぬんですよ、毒りんごで。
しかもトリカブトだったら、秒で瞬殺では?
2時間ドラマでも、たいてい、毒を飲まされたひとは「ウッ……」からの「ガクッ」で、すぐお陀仏になっている。のたうちまわることもなく、苦しそうな声を出したかと思ったらもうあの世へ行っている。
そんな状態で、歌なんか歌えるだろうか。
歌おうと試みたとしても、
最初の発声すら難しいのでは……?
YちゃんとOちゃんに相談したかどうか、肝心なところは憶えていないけれど、ひとしきり悩んで結局、2幕にはソロを入れないことにした。合唱は7人の小人のみにして、そのまま書き進めた。
そして、その幕はわたしが演じることにした。
ソロがないぶん、2幕は他の幕より短い。
見せ場という見せ場もないまま退場できるのは、かえって好都合だった。しめしめ。
いざ稽古に入ってみたら、
「声楽(専攻)で音大も受けるのに、なんでソロで歌わないの? 音大受けない子でも(1幕の白雪姫)ソロあるのに」
と委員長に文句言われることもあったり、県内では著名な声楽家でもある、学年主任の先生の演技指導を受けるため、2幕で魔女役のYちゃんとともに毎日居残りしたりなど、難儀な経験もした。
(しかも「倒れる演技」限定の指導である。動きが硬い、もっと自然に死ねなど言われて何度も何度も、学校の音楽棟にある大ホールの舞台に倒れた。今となっては懐かしい)
それでも、自分の書いた脚本を演じられる喜びは、大きかった。
迎えた本番。
わたしは、どの白雪姫よりも地味だった。
森で小人たちと暮らしているなら、あんまり派手じゃないほうがいいかも、と考え衣装を選んだ結果だった。
ほかの白雪姫たちは華やかで、なかでも3幕の白雪姫は、「結婚式か!?」と目をまるくしてしまうほどの、真っ白でフワフワのドレスを身につけていた。(たしかに王子さまと結婚するのだから、そのぐらいでOKなんだけれども)
まぁ、目立たなくていっか。
舞台に上がるのに、そんな姿勢だったのがいけなかったのだろうか。
2幕のわたしは、「悪目立ち」した。
魔女役のYちゃんとタッグを組んで、本番まで練習を欠かさなかった「毒りんごで死ぬシーン」が、なぜだか笑いを誘ったのだ。
白雪姫が命を落とすシリアスなシーン、にもかかわらず、客席から、アハハ、アハハハハ……と、笑い声が漏れている。
倒れながら、わたしの頭のなかは
「?」でいっぱいだった。
そのまま、幕は下りた。
終演後、当時付き合っていた彼氏が言った。
「なんかお前、ロボットみたいだったぜ」
あぁそうか。
あんなに練習を重ねた「倒れる演技」
なんの成果も出なかったか。
あのシーンのあと、客席のうしろで「あちゃー」と額を抑えただろう主任の先生や、舞台袖でズッコケていたかもしれないクラスメイトや後輩たちの姿が、浮かんでは消えた。
見るひとに何の印象も残さないまま終わるつもりだったのに、図らずも笑いを取ってしまった。
けれども、自分の書いた脚本を、大好きな友達と演じることができた。
これは、非常に大きな財産である。
いただいたサポートで、たくさんスタバに通いたい……、ウソです。いただいた真心をこめて、皆さまにとどく記事を書きます。