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「13歳からの地政学:カイゾクとの地球儀航海」読書感想

世界史に興味を持ち始めたひと、暗記じゃない歴史を学びたいひと、地政学ってどんなものか触れてみたいひとにおすすめの入門書です。
タイトルに「13歳から」とあるからといって、子ども向けと侮るなかれな一冊です。


■書籍情報

【タイトル】13歳からの地政学——カイゾクとの地球儀航海
【著者】田中 孝幸
【出版社】東洋経済新報社
【出版年】2022年2月25日
【ページ数】213ページ
【ISBN】978-4-492-44468-9

■ざっくり感想

・地政学ってなんぞや

そもそも地政学というのは、軍事や外交といった国家戦略や国同士の関係などを、地理的な視点から分析・考察する姿勢のことを言います。
(「学」とついていますけど、正確には学問領域ではないらしいです)

例えば日本はいわゆる島国なので四方を海に囲まれていますが、ヨーロッパの一部には海に面したところがなく、全ての国境が陸にある国もあります。

そういった地理的条件を踏まえて、だから日本は既に平安時代から貿易が始まっていたのかーとか、だからここは歴史的にずーっと戦争を繰り返してきたのかーとか。
そうして歴史やものの考え方、国としての姿勢などを読み解いていくのが地政学です。

・ストーリー仕立てで読みやすい

まず全編ストーリー仕立てなので、いわゆる教養本が苦手な方でもとっつきやすいと思います。

基本的な流れとしては、高校生と中学生の兄妹が、ひょんなことから出会ったアンティークショップのオーナーに色々なことを教えてもらうというお話。
そのレクチャーが地球儀を使って行われているので、その言葉が出なくとも実は気づかぬ内に地政学を学んでいたんだよ、という構成。

お兄ちゃんの方がお勉強が得意で、妹ちゃんの方はちょっとお勉強が苦手というキャラクター設定なのだけど、実はお兄ちゃんはちょっと頭が固いところがあったり、妹ちゃんの方が少しリアリストだったりするのが読み物としても面白くしてくれて良い塩梅でした。

・点と点がつながっていく

基本的にはほとんどの人が学校で日本史も世界史も地理も学んできていますから、得手不得手あれど、それぞれそれなりに知識として蓄えてきているはずです。
ただそれって、恐らく独立した教科としてバラバラに学んだ方がほとんどで、ちゃんと繋げて理解できている人ってそう多くはないと思うんですよね。

なんで領土が欲しいのか。
民族問題ってなんなんだろう。
日本って世界から見たらどういう位置付けなのかな。
歴史のこと、経済のこと、政治のこと、地球環境のこと、国と国とのこと。

色々な視点で、散らばった範囲のことを整理すると、ニュースで見聞きする単語や世界の動きが少しだけ分かるようになります。

そうか、やっぱり地球は丸いんだ、と。改めてそう思いました。

・この本の役割

本というのは必ず書いた人の思想や知識、視点が大きく影響します。
個人的には特に極端な偏りなどは感じませんでしたが、きちんと知識をお持ちの方が読んだらちょっと待った!と言いたい部分もあるはずです。こういう分野では特に。

ただもし読んでいるうちに「本当にそうなのかな?」と思えたとしたら、その時点でこの本はその役割を果たしていると思います。

この本をスタート地点にして、興味を持って調べていくうちに「そうじゃなかった!」とか、「やっぱり正しかった!」とか。
そうやってより深い学びの扉を開けるための鍵になる本だと思います。

社会科がちょっと苦手だったひとに読んでみてもらいたい一冊です。

ついでと言ってはなんですが、著者の田中孝幸さんとほぼ日刊イトイ新聞の糸井重里さんの対談も面白かったので合わせておすすめしておきます。

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