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【二人芝居脚本】「ずっと寝てたお母さんとかなちゃんの話」 5分 作:長沢郁美

こちらも、二人芝居「夢かもしれない」の公演用に執筆した脚本です。「夢みたいな出来事って結構起こるよね」ということををテーマにしました。
「そういうことってあるのね。」「そういうことってあるんだよ、お母さん。」というセリフがただただ言いたくて、作ったお話です。公演では、ミュージカル風の演技で、動きや歌も少し入れてコミカルに演出しました。
私はAを、公演の相方のむらやまちあきちゃんがBを演じました。
もしもどなたかがどこかで演じてくださることがあったら、ぜひ。
(その際には一言instagramにでもご連絡だけくださいませ〜)


「ずっと寝てたお母さんとかなちゃんの話」
作  長沢郁美
登場人物 2名
時間 約5分
A:母  B:かなちゃん(娘)


Bが1人で部屋にいる。そこにAが部屋に入ってくる。
(ミュージカル風の演技)
A 「おはよう」
B 「おはようお母さん、今日は気分はどう?」
A 「まだすこし頭がぼーっとはするけど、かなり良くなったわ」
B 「よかった〜」
A 「かなちゃん」
B 「はい」
A (触って)「かなちゃん」
B 「うん」
A 「大きくなって。・・・ごめんね。まだ慣れなくて。」
B 「うん、お母さん、ほら、座って。」
A 「ありがと。」
B 「お母さん、まだ目覚めてから1週間だし、無理はしないでね。」
A 「わかってるわ。朝起きて、鏡見るとお母さんびっくりしちゃって。でも段々慣れてきたわ。」
B 「無理もないよ。13年も経ってるんだから。」       
A 「そうね。目が覚めたら、かなちゃんが大人になってて・・・。こんなことってあるのね。」
B 「こんなこともあるんだよ、お母さん。私だってもうお母さんはこのままずっと起きないかもしれないって思ってたから。」
A 「そうよね。13年も寝ていて。」
B 「うん、すごく長かった。またこうやってお母さんと話せるなんて、私すごく嬉しいの。」
A 「お母さんも嬉しいわ。そろそろ、かなちゃんの、この13年間のことが聞きたいわ。お母さん、もう体調は大丈夫だから。」
B 「そうだね。」
A 「私が知ってるかなちゃんは、人見知りの小学6年生で。授業参観に行くと、いつも先生に当てられないように下を向いていたわね。」
B 「そうだったね・・・。よくお母さんに返事は大きくって注意されてたよね。」
A 「ええ。かなちゃんは食も細くて、よく風邪をひいていて、お母さんはいつも心配していたわ。」
B 「そうだったね。」
A 「お母さん、起きてからずっと気になってたんだけど、かなちゃん、体つきががっしりしたわね。何かしてるの?」
B 「ああ、うん。お母さん、そうだよね。実は私ね、中学3年生の夏に友達の家に遊びに行った時に・・・・・」
(B、説明のジェスチャーをする)
B 「そういう訳で、今はプライベートジェットは、ハワイに3台置いているんだけどね。」
A 「ああ、そうだったのね。まさかね、あのかなちゃんがジャッキー・チェンと・・・。お母さん、びっくりしちゃって。」
B 「だってお母さんが、「夢は大きく」って言ってくれてたじゃない。」
A 「それはそうだけど、まさか、そんなことが・・・。そういうことってあるのね。」
B 「そういうことってあるんだよ、お母さん。」
A 「あ、あと、お母さんもう一つ、気になってたことがあって。」
B 「なあに?」
A 「このお家、建てたばかりの時にはなかったお部屋があるじゃない?あそこに鍵がかかっているんだけど・・・」
B 「ああ、あそこね。あそこの部屋は、実はね高校3年生の秋に受験勉強をしていたら・・・・」
(B、説明のジェスチャーをする)
B 「そういうことで、アメリカからN A S Aの研究員が来て、2人体制で明日から家に泊まり込むから。」
A 「ああ〜、そうだったの。だから、近所のおばあさんたちが焼き芋ばかり食べてたのは、そういう訳だったのね。」
B 「うん。小さい頃、お母さんが「信じていたら奇跡は起こる」って言ってくれてたじゃない?」
A 「それは言ったけど。あのかなちゃんが・・・。」
A 「そういうことってあるのね・・・」
B 「そういうことってあるんだよ、お母さん。」
(二人、前を向く)
暗転 
おわり



024年3月23日
二人芝居「夢かもしれない」
i Rego Garage

作・演出・出演
長沢郁美 むらやまちあき

楽曲提供 村山愛也佳
音響 ハチロー
照明 こいでまりも
スタッフ 池田貴子 長沢涼音
写真撮影 武智周三
協力 池田練悟  劇団Clowncrown

Photo by @shuzotakechi

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