朗読【薔薇の女/作:渡辺温】

《あらすじ》

 馬車はヴェラクルスへ向けてはしっていた。お客は私と商人のパリロ氏と牧場主のラメツ氏と医師のフェリラ氏とそしてその他に全く得体の知れぬ二人連れの男女が乗っていた。男は鍔広帽子を眼深にかぶり上衣の襟を深く立てて、女は長い睫毛の真黒な眼だけを残してすっぽりと被衣を被っている。二人共如何にも世を忍ぶ風情である。女の耳のあたりには素晴らしく赤い薔薇の花が一輪留めてあった。
 バランカで一休みして馬車は再び走り初めた。空は美しく谷あいの風は新鮮であった。
 突然パリロ氏がその二人連の方を目くばせしながらフェリラ氏に囁いた。そして、ここから話しは恐ろしくも意外な方向に進んでいく。。

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