カープダイアリー第8576話「代打松山「九里vs柳は見ごたえ十分の投手戦に、首振る新井監督のボブルヘッド人形も配られて…」(2024年4月5日)

満員のスタンドの歓声を受け、猛烈なチャージをかけたその目線は、もう三塁ベースに向いていたのだろう。

一度、そこで止まっていた代走の田中は、打球がライトでこぼれるのを見てそのままホームを駆け抜けた。結果的にはこれが決勝点になった。

ファンブルした田村俊介は、立ち尽くすしかなかった…

11年目で開幕投手と務めた九里と8年目で同じく大役となった柳。過去に幾度となく投げ合いを演じてきたふたりは、ともに今季1勝を目指してスコアボードにゼロを並べていった。

特に九里は七回までノーノーピッチング。三回、先頭の中田翔に死球を与えたが続く細川を併殺網に引っ掛けて18人で6回を投げ終えた。

七回、ついに先頭の三好に中前打されるも、昨季18の9と打ち込まれた大島空振り三振、高橋周平は1・6・3でここもゲッツー!この回10球で終了。

そして八回。

先頭の中田に投じたこの日78球目をレフト線に弾き返された。中田は1、2打席とも初球から振ってきていた。坂倉のサインはチェンジアップ。十分警戒して低目に投げたはずなのに捉えられた。
 
代走は田中。いきなりの無死二塁で坂倉とふたり、考えることが一気に増えた。
 
しかし中日ベンチはシンプルに攻めてきた。次打者細川への初球は外のシュートでストライク。2球目、内角へまた同じ球を投げたらライト前に弾き返されたのだった。
 
中2日でスタメンに復帰した田村俊介は、打っては自身初のマルチ、守っては三回、柳の右前打をライトゴロにすり替える好プレー。気持ちが乗っていたからこそ、また刺殺に気持ちが傾いていたのだろう。

細川の方はと言えば、五回の第2打席も遊ゴロで、”3度目の正直”に懸ける思いは人一倍だったはずだ。だからバットを折られても仕方ないような、食い込んでくるシュートを必死で右打ちした。

細川は中田翔とともに開幕からすでに2ホーマーを放っている。中軸に座るふたりのひたむきさが2時間32分に凝縮された好げームに決着をつけることとなった。

もちろん試合後のタイムリーエラーに関する指揮官コメントは「攻めていった結果なので…」だった。この日、マツダスタジアムでは新井監督のボブルヘッド人形が配られた。うん、うんと首を縦に振る。横には振らない。

広島ベンチとしては総力を挙げて九里の1勝目を取りに行っていた。初回の矢野の二盗失敗と二回の坂倉の際どいニゴロでリクエストも使い果たした。

柳は五回、田村俊介に2安打目を許したあと、菊池のピッチャー返しのワンバンを腹で止めて1・6・3のゲッツーにした。敵ながらあっぱれ…どちらが勝ってもおかしくない好ゲームだった。

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