カープダイアリー第8378話「柳との今季4度目の投げ合い制した九里、価値ある数字でリーグトップの座奪い返す」(2023年9月17日)

7連戦、ラスト2試合。マツダスタジアムでの阪神2連戦を終え、新たな気持ちで乗り込んだバンテリンドームナゴヤは3万6000人を超えるファンで埋まり、レフト、三塁側は真っ赤になった。

そして予想通り九里と柳の投げ合いになった。大声援を受け打席に立つ中日の攻撃を九里はよくしのいだ。初回、三番細川に四球を与えて28球を投じたが二回からはリズムに乗った。

対する柳も徐々に調子を上げた。五回を終えてスコアボードにはゼロが10個並んだ。

ふたりの対戦は今季4度目。勝利投手は互いに1度ずつで、決着をつける時がきた。

長いシーズン、いろいろなことを乗り越えてローテーションを守る。それが大事な持ち場を託されたものの役目だ。

九里はこの日までに23試合に投げ3完投7勝7敗、防御率2・64はリーグ8位。投球回153と1/3は同2位。ただし7月1日に開幕13試合目で6勝目をマークしたのに、そのあと1勝するのに10試合も要した。心中、穏やかでないだろう。

柳も22試合に投げ2完投で防御率2・59は同6位、投球回142と1/3も同6位だが4勝10敗と納得いかないシーズンになっている。その間の援護点はわずかに37。(九里は同57)。すでに14勝をあげているDeNA東は同86と強力な追い風を受けている。「勝てない理由」が先発投手だけにあるわけではない。

そしてこの日の勝敗を分けたのは微妙な互いのやり取り、だった。

五回、二死一塁で柳を打席に迎えた九里は簡単に2ストライクを奪ったあと、ボール、ファウル、ボール、ファウルとなって内角に141キロのシュートを投じた。

結果は空振り三振。柳は主審にボール球だったかどうかを確認すると何事かつぶやきながらベンチへ引き上げた。

六回、先頭の曾澤は初球内角ストレートボールのあとのインハイストレートを左エルボーガード付近に受けた。柳はすぐに柳は帽子を取った。

当たったあと上体をひねったまま数秒”静止”した曾澤は一塁に走り出すと柳と目を合わせ、右手で「大丈夫」のメッセージを送った。

続く九里の送りバントは柳の素早い動きによって三塁タッチアウト。ツーアウト一塁になり打席には二番羽月が入った。

ボールカウント1-1から、3球連続で内角球が来た。コースを読んでいた羽月はくるりと軸回転してライト右へ弾き返した。一塁から秋山がホームに還って待望の1点が入り、三番小園も間髪入れずに左前適時打を放った。

柳は八回まで投げ続けて117球4安打2失点でマウンドを降りた。1カ月前、8月13日のこのマウンドでも9回ノーヒットピッチングで勝ちがつかなかった。それもこれも含めて後半戦9登板で援護点はわずかに4点。九回、二番手の齋藤が末包に適時打されて決定的な1点が入った場面を、どんな気持ちで見ていただろうか。チームとしては今季実に23度目の完封負け…
 
好敵手に刺激を受けながら七回のマウンドに上がった九里は、先頭の石川昂に左前打されても宇佐見をこの試合3つ目となる内野ゴロ併殺打に仕留めた。
 
続くカリステに対してはフルカウント。ここまで球数107。少し笑みを浮かべて曾澤のサインにうなづくと、108目で空振り三振を奪いガッツポーズになった。この日の九里は“煩悩”とは無縁だったことになる。
 
「クライマックス・シリーズに備えて」明るい材料がそう多くない今のチームにあって、9月2日の森下以来13試合ぶりの先発白星は明るいニュースだ。
 
開幕から様々な勝ちパターンが展開されてきた中でも、先発がその役割を果たしロースコアでもゲームをモノにする、という形が一番しっくりくる。
 
阪神の9月11連勝はすべて先発に勝ちがついていた。まさに安定した戦いだった。そんなタフな相手にはタフガイで応戦するしかない。7回無失点で8勝目の九里は、投球回160と1/3になり、リーグトップの座を奪い返した。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?