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初めての落語発表会「犬の目」

僕が初めて演じた噺となった「犬の目」
軽い噺とされ、いわゆる前座噺といわれているそうだ。

この噺はファンタジーの要素が強いため、丁寧に演じることが大切だと聞いた。ファンタジーはありえない状況をお客さんに想像してもらう。お客さんの頭の中に「ハテナ?」を作らせないよう丁寧な所作で演じる。

この丁寧な所作がめちゃくちゃむつかしい。台詞をいいながら、丁寧な所作ができていれば、噺家になっとる!と思いながら稽古をした。

複数の登場人物が出てくる場面があり、位置関係が想像できず、どこに誰がいるのかわからず、混乱してしまう。当時、初心者向けと聞いていたが、難易度はかなり高い。

初めての発表会。出番は一番目だった。高座に上がり、正座し、お辞儀しながら深呼吸した。頭を上げて客席を見渡すと約70名ものお客さんの視線が僕のほうに向いていた。僕は噺を始めた。気がついたら高座から降りていた。どうやら舞い上がっていたようだ。ただ、お客さんの視線と笑い声が僕の肌に沁みこむ感触が残っていた。

高座を降り、気が昂っていることを自覚した。他の出演者が演じているときも、落ち着きが戻らない。発表会が終わるまで気が昂ったままだった。

発表会が終わり、近くの居酒屋で打ち上げがはじまった。乾杯の合図ではじけるようにして盛り上がった。落語終わるまでの緊張感と終わった後の開放感の落差が盛り上がりを創っているようだ。

打ち上げの最後に演者全員一言ずつ感想を述べていった。僕は初めての高座がいかに楽しかったかを力説していた。聞いている先輩方は、そんなことは知っている。でも、嬉しそうな顔して僕の話を聞いていた。

こんな体験なら何度でもしたい。そう思った。



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