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書籍レビュー『偽善エコロジー』武田邦彦(2008)環境問題にかこつけてウソがまかり通る社会



信頼できる科学者の言葉とは

著者の武田邦彦氏は工学者で、
『ホンマでっか!?TV』などの
テレビ番組にも出演されている
有名な方です。

私自身、これまでにも
環境問題に興味を持って、
著者の本をいくつか
読んだことがありました。

また、武田邦彦氏といえば、
YouTube の配信なども
積極的にやっていたので、

そちらの方も一時期、
よく観ていたものです。

武田氏が科学者として
信頼できるのは、
忖度や嘘がないところです。

実際のところ、
マスメディアによく出るような
タイプの学者の中には、

「御用学者」とも言われる
政府のお抱えのような
たぐいの方も多いんですね。

そういう方が
発信する情報というのは、

政府やマスコミにとって
都合のいいような話を
する人が多いです。

そういったものを
鵜呑みにすると、
間違った価値観を
植え付けられてしまい、

おかしなことを
するようになってしまいます。

武田氏の著書や動画からは、
そんなことも学んできました。

本書はそんな武田氏が、
間違った環境問題の捉え方に
意義を唱えた本になっています。

なんでもリサイクルすれば
いいわけでもない

本書では一つひとつの
環境問題について、
科学的に正しいか否かを
解説しています。

世の中には間違った
常識が多く流布しています。

中でも環境問題に関しては、
相当、社会に大きな
影響を与えていますね。

この本の中で、
特に重点を置いて書かれているのは、
さまざまなリサイクルについてです。

私自身は、以前にも
著者の別の本を読んで、
知っている話も多かったのですが、

今の世の中はなんでもかんでも
リサイクルするのが
「正しい」という価値観に
なっています。

ところが、材質によっては、
リサイクルに
向かないものもありますし、

リサイクルによって、
逆にエネルギーを消費する
なんてものも多く存在します。

そういうことについて、
一つひとつ、わかりやすく
解説されているのが本書です。

環境問題にかこつけて
ウソがまかり通る社会

武田氏に言わせると、
多くの素材はリサイクルに
向いていません。

ですから、今は各自治体で
「リサイクル」として、
回収しているものの中には、

実際にはリサイクルせず、
別の処分がされているものも
多くあるそうです。

中には他国にお金を払って、
売り渡したり、
そういうことが
まかり通っているそうなんですね。

何よりも著者が憤りを
露わにしているのは、

そういう現実を正しく国民に
伝えない政府や
マスコミの姿勢です。

なぜ、そういう事実が
隠されるのかというと、

そのウソのリサイクルによって、
利益を得ている人たちが
いるからです。

業者はお金を国民に
「リサイクル料」などと称して、
お金を払わせて回収し、

実際には、リサイクルせずに、
またお金を得て、
他国に売り払っている
というわけなんですね。

これは「騙している」
という点でも、
環境面から見ても、
大きな問題です。

以前、紹介した
ジャレド・ダイアモンドの
著書『文明崩壊』でも、

グローバル化によって、
先進国は自国の環境問題を
他国に輸出している
と指摘されていました。

やはり、日本もそういうことを
やっているんですね。

テレビなどの家電でも、
労働賃金の安い国で製造させて、
それを国内で販売し、

その家電が使えなくなったら、
今度は製造していた国に、
売り払うのだそうです。

その家電が完全に使えなくなると、
輸出先の国の
「ゴミ」になるわけですから、

環境面で言えば、
日本にとって、
これほどおいしい話は
ないわけなんですね。

でも、どうなんでしょう。

これでは「自分さえ良ければ」
という考え方でしかないですよね。

本当の意味で環境に
配慮しているとは言えません。

このことは氷山の一角に
過ぎませんが、

本書の中では、
世の中に平然とまかり通っている
ウソについて、
忌憚のない意見が述べられています。

こういうことは
多くの国民が知るべきことですね。

それを知ったうえで、
はじめて本当の「環境」について、
考えることができるのですから。


【書籍情報】
発行年:2008年
著者:武田邦彦
出版社:幻冬舎

【著者について】
1943年、東京都生まれ。
工学者。

【同じ著者の作品】

『「新型コロナ」「EV・脱炭素」
「SDGs」の大ウソ』(2022)
『かけがえのない国』(2023)
『幸せになるための
サイエンス脳のつくり方』
(2024)

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