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チャップリンの魅力の秘密にせまる(キートンとの比較から)

※3500字以上の記事です。
 お時間のある時に
 お付き合いいただけると嬉しいです。

チャップリンについて
書いてきました。

まだ5本程度しか観ていないので、
浅い論考になるかもしれませんが、
チャップリン作品を観て
私が感じたことを書いておきます。

なお、チャップリンだけを観ていては、
その良さを語ることができないとも思い、

同時代に活躍した
バスター・キートンの映画も
観てみました。

キートンもチャップリンと同じく
サイレント期に活躍した
コメディアンです。

(チャールズ・チャップリン、
 バスター・キートン、
 ハロルド・ロイドの三人は
 「世界三大喜劇王」とされている)

キートンの作品は、
『キートンの大列車追跡』を
鑑賞しました。

『キートンの大列車追跡』
(1927)

本作を観る限りでは、
笑いの要素に関しては、
チャップリンの方が濃く、
キートンの方が薄い感じでした。

チャップリンにはない、
キートンの魅力と言えば、
豪快なアクションがあります。

キートンは
ジャッキー・チェンにも
影響を与えた俳優で、

この作品の中でも
列車の車両の上を飛び移るなど、
アクロバティックな
アクションを披露しています。

キートンとの比較も含めて、
チャップリンの魅力に迫ります。


実はチャップリンは男前である?

チャップリンがどうして、
こんなにも人を惹きつけて
やまないのかというと、

やはり、その見た目が
大きいと思うんです。

チャップリンって、
作品の中ではメイクをしているので、
今いちわからないかもしれませんが、

実は、かなり男前なんですよね。

1920年のチャールズ・チャップリン
Wikipedia より引用)

この写真はチャップリンが
映画デビューする1年前、
31歳の頃です。

どうですか、
男前ですよね。

映画デビューする時には、
あまりにも若く見え過ぎるので、
監督の指示で扮装することに
なったそうで、

そこで今ではおなじみの
山高帽(やまだかぼう)と
チョビ髭をつけることに
なりました。

映画ではコミカルな顔をしていますが、
ベースが男前なので、
多くの人を惹きつけるのだと
思うんですよね。

そして、あのインパクトの
ある顔で劇中では、
ちょくちょくカメラ目線を
やってのけます。

これも映画としては
異質なことだと思うんです。

キャストが画面の向こう側にいる
観客に目線を合わせるというのは。

(少なくとも『大列車追跡』を
 見る限りは、キートンは
 カメラ目線をやっていない)

これはアメリカの
コメディー番組などでは、
よく見られるスタイルで、

「なぜ、なんだろう?」
と考えたことがありました。

たぶん、向こうの
お笑いの文化として、
日本で言う「ツッコミ」が
ないんですよね。

ボケたらボケっぱなしです。

これはアメリカの
スタンダップコメディーも
同じですね。
(日本で言う漫談にあたる)

漫才などに見られる
ツッコミの役割は、
観客をエスコートすることです。

ボケだけではうまく伝わらないことも
ツッコミがうまく説明することで、

「ここが笑うところですよ!」
というポイントが
伝わりやすくなるんですよね。

その点、アメリカの
スタンダップコメディーは
独り舞台ですから、
こうしたエスコートがありません。

ですから、大ボケをかました後は、
少し間をとって、
表情で観客に訴えるわけです。

この間が「笑うところですよ」
というのをわかりやすく
しているんですね。

それがチャップリンが
カメラ目線をする理由だと
思います。

大抵の場合、チャップリンが
みじめな状態になっている時に
カメラ目線が送られてきます。

なんとなくあの目線で、
見つめられると、
思わず同情したくなって
しまうんですよね。

チャップリンは背が低いのか?

見た目の比較で言うと、
キートンも男前といえば、
男前です。

Wikipedia より引用)

なかなかの男前ですよね。

それはそうです。

コメディアンとはいえ、
映画俳優ですから、
ルックスもそれなりのものを
求められるでしょう。

キートンの映画を観て、
チャップリンとの違いを
もっとも大きく感じたのは、
身長差だったんですね。

チャップリンは
背が低く見えますし、
キートンは背が高く、
細い感じに見えます。

気になって、二人の身長を
調べてみたのですが、

なんと、二人とも
身長は160cm台だったので、
ビックリしてしまいました。

身長が公式に
発表されているわけではないので、
いろんな数字が出てくるのですが、
どれも160cm台に留まっています。

中にはチャップリンの方が
大きいサイズになっている
場合もあって、

基本的に二人の身長は高くなく、
どちらもそれほど変わらないんですね。

では、なぜ、チャップリンは
小さく見えて、
キートンは大きく見えるかというと、
理由はいくつか思い当たります。

まず、チャップリンは衣装が
かなりちぐはぐなものに
なっていますね。

上着は割とピタッとした
小さめのジャケットで、

ズボンは大きめの
ダボッとした感じのものを
履いています。

これが見た目に
大きく影響するのは、
間違いないでしょう。

さらに、二人の作品は
画面の作り方も
かなり違いました。

前述したように、
チャップリンの作品では、
チャップリンがカメラ目線をし、
表情で訴える場面があります。

この時に表情が
しっかり伝わらなければ、
何をやっているのか、
観客にわかりませんよね。

ですから、チャップリンの作品では、
画面のサイズに対して、
人物が大きめに映るように

カメラを人物に寄り気味して、
撮っているような感じがしたのです。

一方のキートンの方は、
前述したように
アクロバティックなアクションに
定評のある俳優ですから、

そういう場合は、
チャップリンのように
キャストにカメラが寄り過ぎると
その良さが伝わりません。

カメラが引いて、
背景も大きめに画面に入れなければ、
アクションの凄さが伝わらないのです。

こういう違いもあって、
それぞれ画面サイズに対して、

チャップリンは大きめに映り、
キートンは小さめに映るように
なったのでしょう。

寄り気味に撮れば、
チャップリンのように

ちぐはぐなフォルムの
衣装を着ていれば
背が小さく見えるでしょう。

引き気味に撮れば、
キートンのような細身の男性は
背が高く見えるでしょう。

また、背の高さというのは、
相対的なものですから、
一緒に映っている人の身長とも
関わってきますね。

チャップリンの作品を観ていると、
大柄な男性を相手役に
選んでいる場合が多いような
気がするんですね。

明らかに筋肉質で
強面の男を相手に、
チャップリンがちょこまかした
動きをするからおもしろいのです。

これも背が小さく見える
一つの要因と言えるでしょうね。

『大列車追跡』を観る限り、
キートンは女性と一緒にいる
シーンが多かったです。

そうすると、キートンは
背が高く見えるでしょう。

チャップリンの動きの魅力

チャップリン作品の
最大の魅力は、
その「動き」にあります。

チャップリンが演じている時の
身体の動き方は、

マンガのようなおもしろさがあり、
それを観ているだけで、
たとえ、それ自体に意味がなくても、
楽しめるものです。

一方のキートンも
身体を使った演技が魅力的な
俳優ではありますが、

チャップリンのそれとは
一味違っています。

普通の場面では
普通の動きなんですね。

チャップリンのように、
常時、おもしろい動きを
しているわけではありません。

キートンのおもしろさが
本領を発揮するのは、
やはり、アクロバティックな
アクションシーンで見られるものです。

私が特におもしろいと思ったのは、
『大列車追跡』の中で、
列車を止めて焚き木を
投げ込むシーンでした。

彼は敵に追われているので、
かなり焦っています。

必至で鉄道の近くにあった
木の柵を壊して、
後ろにある車両に投げ込むのですが、
その焚き木が全然入らないんですね。

キートンが向いているのは、
柵の方で列車の方は見ていません。

しかし、焚き木はおもしろいように、
中に入らないのです。

このドジな演技を投げる方向を
見ないでやってのけるのは、
なかなかの芸当だと思います。

焚き木の入らなさ加減は
一定ではなく、

勢いがたりずに手前に落ちたり、
逆に勢いがあり過ぎて
乗り越えてしまったりと、
変化に富んでいます。

やはり、身体能力に
優れた人だったのでしょうね。

チャップリンの方も
身体能力はすごかったはずです。

しかし、キートンとは
見せ方が違います。

チャップリンの場合は、
身体能力のすごさを
感じさせないように、

あくまでもコミカルに演じるのです。

そして、チャップリンの
最大の武器は「編集」にあります。

チャップリンの作品をよく観ると、
映像のスピードが一定ではないことに
気がつくでしょう。

動きを早回しにすることによって、
そのおもしろさが
倍増しているのです。

少なくとも『大列車追跡』を観る限り、
キートンの場合は、
そういう編集がなかった気がします。


以上、おもにキートンとの比較から
チャップリンの魅力について
書いてみました。

こうやって改めて分析してみると、
チャップリンのすごさが
よくわかりますね。

※タイトル画像は U-NEXT
 サイトからお借りしました。

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