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書籍レビュー

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記事一覧

書籍レビュー『犯罪』フェルディナント・フォン・シーラッハ(2009)ドイツの弁護士が書いた実録風味のミステリー

書籍レビュー『犯罪』フェルディナント・フォン・シーラッハ(2009)ドイツの弁護士が書いた実録風味のミステリー

※2500字以上の記事です。
 お時間のある時に
 お付き合いいただけると嬉しいです。

ドイツの弁護士が書いた
実録風味のミステリー本作のことを知ったのは、
以前、レビューで紹介した
海外文学のブックガイドを
読んだ時のことでした。

どんな内容だったかは、
憶えていないのですが、
表紙の抽象画のような図像に
とてもインパクトがあり、

このイメージが頭から
離れませんでした。

そういう表紙の

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書籍レビュー『ディズニーとチャップリン』大野裕之(2021)ハリウッドが生んだ二人の天才の生い立ち

書籍レビュー『ディズニーとチャップリン』大野裕之(2021)ハリウッドが生んだ二人の天才の生い立ち


ミッキーマウスに花束を「ウォルト・ディズニーは
 チャップリンの影響を受けていた」
こんな内容と、

表紙にあるチャップリンが
ミッキーに花を渡すイラスト、

もうこれだけで「読もう!」
と思いました。

チャップリン、ミッキーマウス
いずれも子どもの時に
作品の中で観たことのある
キャラクターではありますが、

この二人に共通点があったとは、
まったく気がつきませんでした。

時代的に重なる部

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書籍レビュー『樽とタタン』中島京子(2018)古い記憶は脚色されるリアリティー

書籍レビュー『樽とタタン』中島京子(2018)古い記憶は脚色されるリアリティー


たまたま手にした本を読んでみた年末年始にブックオフで
「本おみくじ」
というものがあり、
買ってみました。

箱に1冊の本が入っていて、
中身はわかりません。

私が買った箱の中から
出てきたのがこの一冊でした。

まったく知らない作家さんですし、
たぶん、こんな機会でもなければ、
手に取ることもなかった本です。

しかし、これがおもしろかったので、
紹介させてください。

本作の主人公は
小学

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書籍レビュー『1984』ジョージ・オーウェル(1949)「考えること」を他人に預けてはいけない

書籍レビュー『1984』ジョージ・オーウェル(1949)「考えること」を他人に預けてはいけない


70年以上前に描かれた
超管理社会数々の作品に影響を与えた
有名な作品です。

ずいぶん前から気になっていて、
ようやく読むことができました。

物語の舞台はタイトルのとおり
「1984年」、

世界は「ビッグブラザー」
と呼ばれる総統が統治する
超管理社会となっています。

「テレスクリーン」という
送受信機によって、
市民の生活は常に監視され、

少しでも政府に反するような
言動は許されませ

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書籍レビュー『偽善エコロジー』武田邦彦(2008)環境問題にかこつけてウソがまかり通る社会

書籍レビュー『偽善エコロジー』武田邦彦(2008)環境問題にかこつけてウソがまかり通る社会


信頼できる科学者の言葉とは著者の武田邦彦氏は工学者で、
『ホンマでっか!?TV』などの
テレビ番組にも出演されている
有名な方です。

私自身、これまでにも
環境問題に興味を持って、
著者の本をいくつか
読んだことがありました。

また、武田邦彦氏といえば、
YouTube の配信なども
積極的にやっていたので、

そちらの方も一時期、
よく観ていたものです。

武田氏が科学者として
信頼できる

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書籍レビュー『落語と私』桂米朝(1975)落語の奥深さを知る

書籍レビュー『落語と私』桂米朝(1975)落語の奥深さを知る


中高生向けに書かれた
落語の入門書桂米朝(3代目)は、
私が敬愛する落語家でした。

戦後、没落しかかっていた
上方落語(関西)を
復興した功労者の一人で、

人間国宝にまでなった人です。

落語の世界では
「米朝にはじまり米朝に終わる」
という言葉があるくらい、

初心者から熟練者まで
惹きつける落語をする方で、

私にいたっては、
この人の落語が好き過ぎて、
他の人の落語をほとんど
聴いたこ

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書籍レビュー『薬剤師は薬を飲まない』宇田川久美子(2013)薬に頼らなくてもいいように、自然治癒力を高める

書籍レビュー『薬剤師は薬を飲まない』宇田川久美子(2013)薬に頼らなくてもいいように、自然治癒力を高める


薬を使わない薬剤師薬剤師の方が書いた本です。

薬剤師といっても、
著者は「薬を使わない薬剤師」
なのです。

著者は若い頃に、
身内が病気で亡くなっており、
学生の頃から薬剤師を
目指していました。

病気で苦しむ人を救うためです。

そして薬剤師になったのですが、
そこで一つの違和感を
持ったそうです。

「このお薬とは一生の
 付き合いになりますから、
 気長に続けていきましょうね」

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書籍レビュー『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』堀内都喜子(2020)よく働き、よく学び、よく遊び、よく眠るフィンランドスタイル

書籍レビュー『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』堀内都喜子(2020)よく働き、よく学び、よく遊び、よく眠るフィンランドスタイル


最近、北欧が熱い!個人的に北欧は最近、
気になっている地域なんですよね。

昨日紹介したゲーム
『It Takes Two』は、
スウェーデンのゲームですし、

以前紹介した映画『ラム』は、
アイスランドが舞台の
作品でした。

(制作はアイスランド、
 スウェーデン、
 ポーランドの合作)

近年、私が気に入っている
フライングタイガーという
雑貨屋さんは
デンマーク発祥のお店です。

そんな

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書籍レビュー『1989年のテレビっ子』戸部田誠(2022)'70~'90年代のバラエティ(お笑い)史

書籍レビュー『1989年のテレビっ子』戸部田誠(2022)'70~'90年代のバラエティ(お笑い)史

※3000字近い記事です。
 お時間のある時に
 お付き合いいただけると嬉しいです。

誰にでも手に入る情報を
もとにしつつ、
誰も書いていないこと著者は私と年代が近く、
この本で書かれていることも、
私が10代の頃から
追ってきたような話しでした。

ですから、「今さら」
という感じもあったのですが、

読みはじめてみると、
思いのほか、夢中になって
読んでしまいました。

改めて、
「自分はあ

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書籍レビュー『漢方水先案内』津田篤太郎(2015)じっくり向き合う東洋医学

書籍レビュー『漢方水先案内』津田篤太郎(2015)じっくり向き合う東洋医学


知る人ぞ知る
「シリーズ ケアをひらく」「シリーズ ケアをひらく」の
一冊です。

同シリーズは、
医学専門出版社である
医学書院が

一般の人にも読める
読みものとして、
さまざまな「ケア」のことを
取り上げた書籍です。

2019年にはシリーズ全体として、
毎日出版文化賞を
受賞していますし、

シリーズの中でも、
大宅壮一ノンフィクション賞、
新潮ドキュメント賞、小林秀雄賞、
大佛次郎論壇

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書籍レビュー『日本沈没』(1973)日本がなくなる時、日本人は何を思うか

書籍レビュー『日本沈没』(1973)日本がなくなる時、日本人は何を思うか

日本の SF 御三家・
小松左京をはじめて読む著者の小松左京は
日本の SF 御三家と称される
大家の一人です。

(他の二人は星新一、筒井康隆)

小松左京の作品は、
はじめて読みましたが、

非常に高度な科学の話が
わかりやすく書かれており、
最後まで楽しく
読むことができました。

本作は氏の代表作であり、
長年にわたって、
さまざまな映像作品にも
なっています。

近年は、TBS の日曜劇

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書籍レビュー『文明崩壊 滅亡と存続を分けるもの』ジャレド・ダイアモンド(2005)古代と現代を結ぶ環境問題

書籍レビュー『文明崩壊 滅亡と存続を分けるもの』ジャレド・ダイアモンド(2005)古代と現代を結ぶ環境問題

※3000字近い記事です。
 お時間のある時に
 お付き合いいただけると嬉しいです。

古代と現代を結ぶ環境問題この本を紹介するのは、
なかなか骨が折れます。

というのも、上下巻で
1000ページ以上ある本なので、
書いてあることも広範囲に
わたっているのです。

こういう本こそ、
友達に話すような
軽い感覚で書くのが
いいでしょうね。

まずは、著者の
ジャレド・ダイアモンドについて
お話しし

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書籍レビュー『小悪魔アザゼル18の物語』アイザック・アシモフ(1988)「語り」で描かれるブラックジョーク

書籍レビュー『小悪魔アザゼル18の物語』アイザック・アシモフ(1988)「語り」で描かれるブラックジョーク


「小悪魔アザゼル」が生まれた経緯作者のアイザック・
アシモフについては、
以前、この記事に詳しく書きました。

SF 界の「ビッグ3」と称される
作家の一人でした。

そんな大作家ですが、
私自身はアシモフの作品を
はじめて読みました。

しかも、著者自身の
前書きによると、
本作は著者の作品の中では、
異質な作品のようです。

本作の執筆に至った経緯は、
'80年にとある雑誌から
ミステリー小

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書籍レビュー『人情裏長屋』山本周五郎(1933~1952)長屋の人間模様が魅力的に描かれている

書籍レビュー『人情裏長屋』山本周五郎(1933~1952)長屋の人間模様が魅力的に描かれている


山本周五郎とは山本周五郎(1903~1967)の
短編集です。

山本周五郎は、
1926年から活動していた作家で、
おもに時代小説、
大衆小説の分野で活躍しました。

大河ドラマにもなった
『樅ノ木は残った』
('54~'58)

黒澤明監督が’65年に映画化した
『赤ひげ診療譚』('58)
(映画のタイトルは『赤ひげ』)
などの代表作があります。

'88年には彼の名を冠した
「山本周五郎賞

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