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「デカイ流れを掴む。」


森本あんり著・「反知性主義 アメリカが生んだ「熱病」の正体」を読んだ。

以前反知性主義の意味が日本とアメリカでは大きく違うと書いたときに、

違いは知っていたけど歴史まで詳しくは知らないなと思ったからこの本を読んでみた。

ピューリタン社会から芽生えたアメリカの反知性主義の歴史を辿れば、


改めてアメリカが宗教と深く結びついた国だとわかる。

それに、日米の意味の違いを知れば日本の反知性主義の意味の捉え方は全然ダメだともわかる。



日本の反知性主義は、反・知性。
つまり知性的なものになんでも反対するという意味。

インテリのような頭のいい人が嫌いなんだ。


一方アメリカの反知性主義は、
知性そのものではなくそれに付随する「何か」へ反対するという意味。
つまりアメリカの反知性主義は、反権力主義、急進的な平等主義とも言える。


日米での意味の違いを見比べてもらったら分かる通り、

「広がり方」が全く変わるから日本の方はダメだなと思ったんだよね。



日本の方は簡単に言えば、拒絶だ。

俺はバカだからお前の言っていることがわからない。
もっとわかりやすく説明しろ。
頭が良いからって偉そうに。

と、知性や頭の良い人に対して理解しようとしない。

だから「ガリ勉」や「意識高い系」なんて揶揄する言葉が流行る。

自分たちのバカさを棚に上げて真面目に勉強している人や鋭い意見を取り入れようとしない姿勢は終わってるなと思うんだよね。

なにより、拒絶の姿勢では何も生まれないし何も広がらないでしょ。



アメリカの反知性主義は、さらに新しい知性の発展をする役割を果たす。

だって、旧来の知や権威への反逆をして平等を目指しているんだから、

それを実現するような新しい知性が生まれる可能性は高いでしょ。

それに、知性と権力の結びつきを嫌うんだから単純に政治意識も高くなる。

若い世代でも常に問題意識を持ちながら社会や政治を見る眼が養われるんだ。

このように、アメリカの反知性主義は広がりが大きいんだよね。



この本ではそもそもの知性とは何か?知性と知能はどうちがうのか?にも触れている。

知能は、何かを理解したり分析する能力。

知性は、知能を自分に適用する「振り返り」の作業を行えること。

だと著者は言う。

知能だけじゃなく、自分の立ち位置まで含めて様々なことを自覚できる人が知性的な人なんだ。

つまり自己反省力があるかないかが、知性的かそうでないかに関わってくる。

だから、知能犯と言われる犯罪者はいるけど知性犯と言われる犯罪者はいない。


知性があったら犯罪なんて犯さないからね。

この自己反省力、つまり「振り返り」が欠如してしまうと越権行為や権威の不当拡大に繋がってしまう。

それをチェックするために反知性主義があるとも言っていいし、

反知性主義がトレンドになるということは越権行為や権威を不当に扱っている人間が多いということだ。



この本を読んで、


イデオロギーを学ぶことは難しいけど、世の中の流れを知るにはかなり良いと感じた。

ビジネストレンドを知ることも大切だけど、

イデオロギーのトレンドを知ることでもっと大きな視点・大きな流れを掴むことができるんだよね。

それに、日本と世界の違いを知ることも重要だと改めて思った。

日本だけを知っても日本の現状はわからないからね。

見比べないとどっちが良いか?なんてわからないでしょ。



イデオロギーのトレンドを知ろう。

デカイ流れをつかもう。



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