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コンセプトとアイデア・テーマ・コピーの違いとは?

なんとなく頭では理解しているが、言語化して相手に説明するとなると難しいこと。私にとっては「コンセプトとアイデア・テーマ・コピーの違い」がそれに該当します。

調べると様々な定義や記述が見つかるのですが、細田高広氏の著書「コンセプトの教科書 - あたらしい価値のつくりかた」での解説が最もしっくりきたのでご紹介させて頂きます。

コンセプトの機能と定義

コンセプトは3つの機能を持っています。

  1. 判断基準になる
    モノやサービス等をつくりあげる際の判断基準となります。合理性やコストだけでなく、コンセプトと照らし合わせて意思決定し、モノ・サービスをつくります。

  2. 一貫性を与える
    大きな方向性から、小さなディティールの決定に至るまで、整合性を取るためにコンセプトが機能します。コンセプト不在の商品やサービスは「ちぐはぐ」な印象を与えてしまいます。

  3. 対価の理由になる
    コンセプトは顧客が支払う対価の理由になります。「人々が欲しいのは、ドリルではなく穴である」という言葉があります。コンセプトは「モノが存在する意味」を体現しており、顧客がお金を払う理由にもなります。

コンセプトは、建築における図面のように、関わるすべての人の拠りどころになるものです。モノやサービスをつくる人にとって、コンセプトは「価値の設計図」と言えます。

コンセプトと似て非なるもの

コンセプトはキャッチコピーではない

キャッチコピー:実体を魅力的に伝える言葉
コンセプト:実体をつくる言葉

「東洋の魔女」と「スピードバレー」はどちらも日本女子バレーボールにちなんだ言葉です。先述の定義と照らし合わせると、「東洋の魔女」がキャッチコピーで、「スピードバレー」はコンセプトになります。

ただし、コンセプトとして生まれた言葉がそのままキャッチコピーとしても使われるケースがあります。代表例としては、iPodの「1000曲をポケットに」が挙げられます。開発のコンセプトとして機能するだけではなく、消費者へのメッセージとしても活用できる秀逸な表現です。

コンセプトはアイデアではない

スターバックスは「イタリアのカフェ文化をアメリカに持ち込む」という「アイデア」(着想)を元に生まれました。そこから生まれたコンセプトは「第3の場所(サードプレイス)」です。両者の違いは「顧客目線の有無」です。

ビジネスアイデアは「商売を始める理由」ですが、それがそのまま「顧客がお金を払う理由」になるとは限りません。ビジネスアイデアを顧客の視点で再構成するとコンセプトになります。

コンセプトはテーマではない

テーマには統一感を与える「主題」という意味があります。「ウェルネス」「レジリエンス」「SDGs」など、様々なお題については、どの企業も取り組むことができます。ただし、お題に対してどのように取り組むかは企業によって異なります。テーマは向かうべき「お題」を指し、コンセプトは「固有の答え」を指します。

USJの秀逸なコンセプト

本書でも紹介されていますが、個人的に最も秀逸だと思っているのがUSJのコンセプトです。元々USJは「映画のテーマパーク」としてスタートし、ターミネーターやE.T.等のアトラクションを生み出してきました。

ところが、来場客数の減少から経営不振に陥り、コンセプトの刷新を余儀なくされます。そこで生まれたのが「エンターテイメントのセレクトショップ」です。それ以来、進撃の巨人、エヴァンゲリオン・鬼滅の刃・スーパーマリオ等、世界最高峰のエンターテイメントを選りすぐり、独自の技術でアトラクション化し、V字回復を果たします。

ポイントは「エヴァンゲリオンのアトラクションを作ろう!」という手段が先にあったのではなく、しっかりとしたコンセプトを定めた上でのアトラクション化だったという事です。具体的な手段・施策(HOW)から入るのではなく、設計図を描き、そこに照らし合わせながら実現手段を考えるという順番が、非常に重要ではないかと考えます。

マーケターにおすすめ「コンセプトの教科書」

コンセプトは抽象的な意味を持ち、人によって解釈も分かれるため、話が噛み合っていない場面に遭遇する事もあるのではないでしょうか。そうなった際に認識を統一し、議論を円滑にするために本書が役立ちます。コンセプトのつくり方に関する解説も記載されており、非常に有用な書籍だと思いますので、ぜひご一読ください。

コンセプトの教科書 新しい価値のつくりかた


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