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韓国プロ野球 我が愛しのロッテ・ジャイアンツ応援歌(1)-① 釜山で韓国プロ野球を観戦する方法

※この記事は2015年前後の筆者の旅の想い出にもとづいて書き起こしたものです。最新事情とは異なる可能性がある点をご承知おきください。

サジク・ヤグジャンへ

 私が常宿にしているホテルの最寄り駅は草梁(チョリャン)であった。
 初夏。
 陽が少し傾き始めた16時過ぎ、おもむろにホテルの部屋のドアを押し開け、地下鉄の駅へと向かう。
 硬い石造りの階段を下りて行くと、ちょうど正面の目線の高さに、女性モデルを使った広告が現れる。
 もしも自分が韓国のプロ野球に興味をもつことがなければ、この美女がロッテ・ジャイアンツのチアリーダーのパク・キリャン(박기량)だと認識することもなく通り過ぎていただろう。

 韓国版SuicaのTマネー・カードをかざして改札を抜ける。
 老圃(ノッポ)行の1号線に乗り、北に向かう。
 途中の蓮山(ヨンサン)駅で乗り換える。
 今度は黄土色が目印の3号線は大渚(テジョ)行を待つ。
 発着音に使われているヴィヴァルディ「四季」の「秋」、第1楽章の旋律が耳に残る。
 目的地に行くには、ひとつ手前の総合運動場(チョンハプ・ウンドンジャン)駅で降りてもよいが、初めての場合は社稷(サジク)駅の方が分かり良いだろう。

 駅を出たら照りつける太陽の位置を頼りに南の方角を特定し、大きな通りを少し下ってから右手に折れる。
 フライドチキンの出店が見えたら正解だ。
 略して「チ・メク」と呼ばれるが、韓国では野球観戦時の食べ物といえばチキンにメクチュ(ビール)の組合せが定番なのだ。
 周囲が少しだけ賑やかになってくる。
 すると左手に見える大きな建築物が、私が勝手に肩入れしているロッテ・ジャイアンツのホームスタジアム、社稷野球場(サジク・ヤグジャン)である。

 人気選手の雄姿を描いた大きな垂れ幕がさがっている。
 正面のスロープを登った先にチケット売り場が見えているが、それはパスして、私は三塁側から球場の縁をぐるっと辿って、裏手のバックスタンド近辺を目指す。
 こちらの売り場の方が空いているのだ。
 窓の中のお姉さんに、魔法の言葉を唱える。
「ウェヤ・チャユーソク・ハン・ジャン・チュセヨ」
 そう言って、人差し指を一本立てる。
 これで意は通じる。
 10,000ウォン(実力1,000円)も渡せばお釣りが戻ってくるだろう(注・2015年頃の価格です)。
 外野自由席のチケットを受け取ったその流れで、左手のゲートへ向かう。
 簡単な手荷物検査を受けると、あとは自由の身だ。
 はやる気持ちを抑えて、どれでもよいから手近のゲートの階段を昇ってスタンドに出る。
 そこにはインターネットの画面を通して観ていた、あのグラウンドが広がっている。

きっかけは地デジ

 私が隣の国のプロ野球に関心をもつようになったのは、日本のテレビがデジタル放送に移行したからだ。
 だから2011年より後のことである。
 当たり前だが、それまで使っていたテレビが映らなくなった。
 それを機会に、私はテレビを視ることをやめた。
 とはいえ野球は観たい。
 スポーツ観戦はしたいのである。
 ところが、配信系のスポーツチャンネルは当然のことながら有料だ。
 何か無料で観られる野球はないものか?
 日本に無いなら、近場の外国に無いか?
 そこで調べて分かったのが、韓国にもプロ野球があり、インターネット経由で全試合無料で生中継されているという事実である(ただし外国からのアクセスはたまに遮断されるようだ)。

 それを知った頃、韓国プロ野球に関する知識を仕入れるにあたりお世話になったのが、韓国プロ野球応援サイト「ストライク・ゾーン」であるので、ここに感謝の気持ちを込めて記しておく。
 私はいつしか、日本に住みながら、日本の選手より韓国の選手のことに詳しいプロ野球ファンになっていた。
 そしてインターネット越しに想いを募らせ、「いつか韓国の球場で野球を生観戦してみたい」と願うようになった。
 その最初の機会は2015年夏に訪れた。

(次回に続く↓)

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