【3.9】 有志を募り 任命をやめる(Invite volunteers, stop appointing)

※ティール組織の著者Frederic Laloux によるINSIGHTS FOR THE JOURNEYの日本語訳の個人的なメモを公開しています。(サイトにある日本語対訳に句読点等をつけ、読みやすいように、一部、接尾語や接続語などを足し、加工したものです)
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■元のURL
https://thejourney.reinventingorganizations.com/39.html

■翻訳メモ
私が知る従来型の企業では大きなプロジェクトや変革に取り組む際、基本的にはメンバーが上から命じられて実行部隊に参加していきます。それが普通です。能力の高いメンバーに声をかけ実行部隊に誘うのです。この変革の旅ではそれが変わります。私の知る限りどの組織も変革の過程でメンバーの“任命”から“招待”へと変えています。社内の有志を募る形です。

たとえばCEOが社内制度の変革を検討していたとします。助言プロセスのやり方や全員への情報共有の方法、会計制度への理解を促す研修のやり方、あるいは勤務評価のやり方などです。そうした変革には担当を任命するより“これを変えたいんです”、“解決への思い入れが強い参加希望者を募ります”といったメッセージを送りましょう。もちろん社内の問題だけでなく、クライアントに向けたプロジェクトでも新製品の市場調査でも同じです。CEOが神のように誰かを任命して適任者を送るという形から、自ら手を挙げて参加する形になる根本的な変化がおきます。

利点は無数にあります。まずリーダーが神を演じずに済むし熱意ある人が集まってきます。そのうえ多様な人が集まるはずです。それによりアイデアや意思決定の質が高まります。そしてチーム外の賛同も得やすくなる。参加者を募ってチームを形成すると、参加しなかった人も志願した有志のチームだと知っているので、そのチームを信頼し従う傾向にあります。経営陣の任命で作られたチームが突然やって来て“これに従え”と言われる場合とは違うのです。

利点は他にもあります。自発的に集まると力をうまく発揮し自己組織化していきます。それは企業文化の変革にとても効果的です。やらない理由はありません。注意点?私はこれまでに優れた成果や結果を見てきた一方で、失敗するチームの話も耳にしてきました。そこから判断するに失敗の要因は3つあります。順に説明します。

1つ目は自己組織化の方法を知らない場合です。人が集まってもプロジェクトリーダーは誰かと探してしまって自律的にチームを作れない。そうした事態への確かな対処法としては、最初は外からファシリテーターを呼ぶことです。そのファシリテーターはプロジェクトの実現や内容には関知せず適切な質問を投げかけます。“どう組織化する?次は誰が会議を開く?”シンプルな問いを通じて早くコツをつかんで自律することを願います。

失敗する2つ目の理由は、各自がのびのびと力を発揮し真に責任感を持つには訓練が必要ということです。チームに成熟が必要な場合があるのです。たとえば有志で集まったチームが話し合った変革案を経営陣に報告しましたが、実用的でない案でした。コストが高すぎたりまったく中身のない案で“全員にiPadやiPhoneを配る”といったものでした。反対に
別のチームは腰の引けた案を報告してきました。十分な勇気がなく大胆に出る権限があるのに慎重になりすぎていた。権限の大きさに慣れておらず、自らの力に無自覚だったのです。

チームが失敗する3つ目の理由は、時おりシンプルに、チームを募ったリーダーが情報を共有しないからです。次のパターンがよく見られます。新しい形での運営を目指してリーダーが言います。“ご自由にどうぞ”、“みんなにすべてを任せる”、“どうか好きにやってくれ”と。
しかしリーダーは知識豊富であり、組織に何が必要かも知っています。それを共有しないと
チームは重要な情報を得られずうまく進めないのです。

2つ目と3つ目の失敗には明確な対処策があります。成熟度と情報が必要なチームには
助言プロセスの活用を提案しましょう。従来のモデルではチームで部屋に閉じこもって数日や数週間検討し、完成したら“ジャーン!これが我々の案です”と経営陣に発表する。しかし閉じこもらずに案を作っていく過程で助言プロセスを用いて、周りの感触を探り助言を得るのです。リーダーや経営幹部からもです。そうすれば、現実離れした案も出てこないでしょう。リーダーの情報も伝えられるはずです。どんな形であれ助言をしましょう。指令でなく考えを伝え周りの意見も聞いてもらい最善案へと導くのです。

もう1つのアドバイスは、経営陣からの“承認”を求める体質にしないことです。チームが作った試案は助言プロセスの仕上げとして同僚たちに見せましょう。経営陣や運営委員にではなく、大きな発表の日を設けて最終的な試案を他の同僚たちに伝えましょう。その発表の場で、助言プロセスを経て案を決めるのです。それはかなり根本的な変化です。作り込んでから経営陣に見せるのとは違います。

失敗の理由はもう1つありますがこれは良いタイプの失敗です。その失敗とは有志のメンバーを募ったのに誰も集まらない場合です。あるいは1〜2人で集まっても発展しない場合です。それは現体制からの健全な反応であり、次のようなメッセージを送っているのです。
“その考えは重要ですが”
“この組織には不要なので検討はやめましょう”
それは役立つ情報です。あるいは重要性が伝わっていない場合も、納得するまで動かないチームの姿勢は素晴らしいので、人が集まるよう説得しましょう。このように根本的な変化を遂げ、変革の際は任命をやめて有志を募りましょう。

■翻訳メモの全体の目次
https://note.mu/enflow/n/n51b86f9d3e39?magazine_key=m3eeb37d63ed1

最後まで読んでいただいて、どうもありがとうございました。