見出し画像

ティール組織は、必ずしも自律分散というわけではない

何気なく、「ティール組織」は、自律的な働き方をする個人で構成され、自律分散した組織を指すと思われがちですが、実際には、そうした形態は非常にまれです。
 
「ティール組織」の著者であるフレデリック・ラルーも、個人について「自律分散した働き方」という表現を使ったことはないと思います。むしろ、彼が述べるのは、個人ではなくチーム全体が「自律分散チーム」として機能することです。ビュートゾルフ、京セラ、ハイアールなどが、その代表的な例として挙げられます。
 
日本人が陥りがちな誤解の一つに、個人の視点で物事を考えがちというものがあります。例えば、「セルフマネジメント」という概念は、日本では個人の自律や自己制御として捉えられがちですが、本来は組織全体が自己運営し、自己組織化することを指します。「自己肯定感」についても同様のことが言えます。英語では「セルフ・エスティーム」と言いますが、一般的には組織上の問題として取り扱われます。具体的には、上司のタスク配分や企業文化、業務プロセスなどの問題に対処することで、環境改善が促進されます。要するに、「自己肯定感」は組織全体の問題として扱われるのです。日本では、例えばカウンセラーに「私、自己肯定感が低いんです」と相談するようなことがありますが、これは一般的ではありません。


 
自律分散組織は、組織内の個々のメンバーがより自己組織化され、自己管理を目指す形態を指します。例えば、プロジェクト型といって、案件化されたプロジェクトに手上げ式で参加する働き方は明らかに自律分散型の働き方です。クラウドワークなどはこの働き方です。一方で、一般的な企業で部署やチームに所属せずにフリーな状態にある社員は稀でしょう。むしろ、このスタイルはベンチャー企業や兼業を行う個人によって採用されることが一般的です。
 
「自律分散化した組織」という概念は、実際には実態が伴わないことが多いため、その表現には注意が必要です。議論を行う際には、まず前提を確認することが重要です。そうでないと、異なるイメージを持ったまま議論が進行することで誤解が生じ、その後も、それが平行線をたどるだけに終わるといったことになりがちです。

最後まで読んでいただいて、どうもありがとうございました。