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高校生にとって「プロフェッショナルとは?」

NHK「プロフェッショナル〜仕事の流儀〜」で長年カメラマンを務める板倉達也さんにお越しいただき、高校いもいもで授業をやってもらいました。板倉さんはこの日のために、音声さんも連れてきてくれ、800万円のカメラ、200万の三脚、ガンマイク、照明まで教室に持ってきてくれました。「ホンモノ」に触れた子どもたちは何を感じ、何を思い、何を表現するのでしょうか。


かなりの変わり者

板倉さんと相談し、子どもたちがくる前にカメラを教室の真ん中に置いておくことにしました。すると一人の女子が到着。いつもよりも少し早く、いつもよりも少しおしゃれをしてきました。そう、今日は子どもたちにも授業の終わりに「あなたにとってプロフェッショナルとは?」と質問をし、それを板倉さんに撮影をしてもらうことを伝えていたのです。新品のTシャツで来る子もいれば、逆に何にも気にしていない子もいます。いや、よく見たら先週と同じ格好の子もいるじゃないか!みんなが集まり始めると、予想通りビデオカメラに興味を持ち始めました。板倉さんがズームの仕方、ピントの合わせ方など撮影の仕方を教えると、「おーすげー」と興奮して色々なものを映し始めます。カメラとプロジェクターを繋げてあるので、カメラマンの視点が他の生徒にも共有されて、カメラマンがふざけ、みんなで笑い合っているうちに全員が揃っていました。

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ここで、板倉さんがカメラを手に取ると、ズームをしながらピントを合わせる技術を見せます。ズームの滑らかさとピントの合わせ方がかっこよすぎる。この技術はカメラマンの中では基本中の基本の技術らしいのですが、当然最初は上手にできません。板倉さんが若い頃はこの技術を練習しまくったらしく、カメラを持ち、NHKの中を歩き回り、撮影方法を試行錯誤したようです。おかげで、NHKの中では変わり者扱いされていたらしいのですが、撮影が楽しくて仕方なかったようです。

憧れから目指したカメラマン

番組制作の現場でカメラマンが番組の構成や演出を考え、ディレクターと一緒に作り上げているのを見て、自分もこんな風になりたいと思ったのが、板倉さんがカメラマンを目指したきっかけでした。しかし、最初は経験不足から、ディレクターに怒られる日々。失敗も多くしたようです。ただ、失敗の多くを聞いていると、板倉さんの失敗には挑戦が常に伴っている気がしました。激流の迫力を撮影しようとして三脚が川に流されてしまったり、某有名人の密着取材で正面から顔を撮ろうとしてその番組のカメラマンを辞めさせられてしまったりと、常にもっといい絵を撮りたいという思いからの失敗ばかり。子どもたちも板倉さんの失敗を笑いながらも、そんなことを思ったのではないでしょうか。

キムタクに憧れてサングラスを購入しまくる

「プロフェッショナル〜仕事の流儀〜」の撮影では、プロフェッショナルとして取材される人と一緒にチームを組んでいい番組を作っていかなければなりません。そのため、その方が板倉さんやディレクターさんに心を開いてくれるように最初はカメラを持たないで過ごすこともあるようです。1週間ほど、その人と一緒に仕事をして、食事をして、色々な話をして、関係を築いた上で、やっとテープを回し始める。芸能人ならば、なおさら関係作りは難しいものです。授業内ではオフレコで芸能人を撮影した時の裏話をお話ししていただけたのですが、その中でも非常に印象的だったのがSMAP、特に木村拓哉さんの話でした。

木村さんといえば、気難しい印象で、少し怖そうな印象があります(飯塚個人の印象です)。しかし、実際はプロ意識がとんでもなく高く、常に「木村拓哉」を演じています(というか、素が「木村拓哉」らしい)。密着取材をしたときに、カメラを向ければ、誰もが惚れる最高にかっこいい一言を発し、スタッフ一人一人の名前を覚え、誰かが間違った行動をしていても、その人を傷つけないで、その人が自然と気づく一言をさらっと言える人らしいのです。板倉さんは、取材前は、木村さんに対してそんなに興味がなかったのですが、取材中にその魅力に惹かれ、気がついたら木村さんが持っているサングラスを全て揃えて、ドラマは欠かさず観るほどファンになっていたようです(笑)そうやって板倉さんを見ると、長髪もかつてのキムタクに憧れているんじゃないかと思ってしまいまいます。

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あなたにとってプロフェッショナルとは

さて、そんな話をしていたら、授業も残り30分になりました。予告通り「あなたにとってプロフェッショナルとは?」を子どもたちに話してもらうことにしました。堂々としている子、急に焦りだす子、隠れる子、寝たふりをする子もいましたが(笑)、順番を決め、一人目が話し始めました。みんなが見えないところで撮影をするのですが、その撮影されたものがプロジェクターでみんなのいる場所に映し出されているので、緊張感が伝わってきます。

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トップバッターの子の大切にしていること、将来への思いを真摯に、熱く語る姿はまるで本当のプロフェッショナルでした。僕にはスガシカオの歌声が聞こえてきました!戻ってきた彼にはみんなから歓声と拍手!最初の子が真面目に自分の思いを語ってくれたおかげで、恥ずかしがらずに自分の心の内をさらけ出す雰囲気が出来上がりました。

恥ずかしそうにしていた子も、いざカメラを向けられると、真顔になり語り始め、内容も借りものの言葉ではなく、自分の思いに本気で向き合い、言葉をつむぐ。うまく話せる子も話せない子も、その表情や言葉から、想いが伝わってくるのです。

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いつもは絶対ふざける彼も自分の言葉でカメラに向かって語りかけ、最後はみんなの期待に応えて笑いを取る完璧な対応を見せます。

そんな子どもたちの姿に、後日板倉さんから感激のメッセージが届きました。

子供達が真剣に聞いてくれた事、プロフェッショナルとは?に本気で考えて向き合ってくれた事に、本当に感動しました。
あの年頃の子達が、カメラの前で、しかも仲間達が見ている前で、自分を当に曝け出すというのは、想像以上に覚悟と勇気が要ります!
カメラは一種の凶器なんです。
その凶器を目の前に向けられて、あの雰囲気の中、皆んな堂々と立ち向かってくれました!
昨夜は僕自身も興奮でなかなか寝付けないくらいでした…
先生方があの興奮を日常経験してる事に羨ましく思います。

僕も教員をやっているのでわかりますが、教室の中で自分の本心をさらけ出すことは結構難しいのです。教室内の生徒同士、生徒と教師の信頼関係がなければ、誰からも批判されない無難な意見、借り物の言葉を並べるだけの意見、そして周りを見て多数派の意見を言うしかない。いもいもの素晴らしさは、自分と人が違うことを理解し、自分と違う仲間を本当に面白い、興味深いと思えることです。一般的にダメだと思われることも、優しさや笑いで受け入れ、包み込んでいく。だから、ここでは、自分の本心を思い切って言えるのです。今回の授業はそんないもいもの良さが現れた授業でした。ありがたいことに、撮影していただいたものは番組風に編集して送っていただけるようです。僕自身もすごく楽しみです。届いたら、アップをしますので、皆さんもぜひ楽しみにしていてください!

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