見出し画像

「伝えたい」という気持ちが生み出す英語教育の可能性

今回は、持ってきた英語教材の実践記とコイノニアの子供達の英語について報告をしたいと思います。ちなみに、前回は思考力教材の実践と分析をまとめました。

https://note.mu/iizukanaoki/n/n7dcdaefc896a

持ってきた教材

今回報告するのは英語系の教材です。順天中学高校の和田玲先生が紹介してくださった “Word Explanation Game”、東北で行われている「英語教師学びの会」で出会った牛来正之先生が紹介してくださった “Movie Explanation Game” 、そしてそれを僕なりに応用した ”What will happen next?” の3つです。日本でやっても必ず大ヒットする3つです。特に、“Movie Explanation Game” と “What will happen next?” は高校生が大好きな教材です。

コイノニアの生徒たちの英語力

ケニアでは、英語とスワヒリ語が公用語になっているほど、英語教育に力を入れています。子どもたちはどんなに小さくてもほぼ完璧に英語を話せますし、書けます。もちろん、彼らがスラムに帰れば、家族は英語を話せないため、スラムではコイノニアの子の方が正確に英語を話せるということも少なくないようです。ちなみに家族はSheng(英語とスワヒリ語と母国語が混ざった言語)を話すようです。

コイノニアだけではなく、ケニア自体が子供達の英語教育を推し進めているようで、テレビや学校でも “Spelling Bee” という、英語のスペルを限られた時間内で正確に言うゲームを行なっています。小中学生は自分の考えを英語で言う機会が授業内で多く作られており、高校生は小説を読みそれについて英語で議論するなど、日本の生徒がやっていることと比べ、かなり難しいことをやっています。

学校での “Spelling Bee” に運良く立ち会えましたが、高校1年生が以下のようなレベルの単語のスペルを覚えていました。

こちらは、高校2年生です。

最後に小学4年生も見せてくれました。

だから日本の英語教育がどうとかこうとかの話をするつもりはないのですが、日本(本校のレベル)よりも難しいことをやっていることは間違いありません。そんな中で授業実践をしてきました。さて、どうなるのでしょうか?


「伝わって嬉しい!」が笑顔を作り出す

information gapを利用したこの活動は、中学生から高校生まで、どの学年でも楽しんで行うことができます。ペアで、Aさん、Bさんを決め、Aさんのみが黒板に示されたお題を見ることができます。Bさんは後ろを見たり、目を瞑ったりして、Aさんの説明をよく聞いて、何を説明しているか当てなければいけません。自分は分かっているのに、相手はわかってくれないもどかしさや伝わった時の嬉しさを感じることができます。ペアの相手が正解できたらハイファイブをして、喜びを共有すると、このゲームの楽しさは増します。

ケニアでも、最初は「キリン」や「カンガルー」の身近な動物から始め、少しずつ難しいお題を出していきました。「サンタクロース」のお題で苦戦している生徒もいましたが、やはり正解できた時の嬉しさは日本もケニアも同じなようで、笑顔でハイファイブをしていて、本当に楽しそうでした。

続いて、動画説明ゲームです。2分程度のCMを半分ずつ見せ、何を見たかを話合わせます。ここのポイントは、ただの動画では面白くないということです。半分見ただけでは物語がよくわからないものを選び、2人が情報を共有することで物語の全貌が明らかになるものを使う必要があります。

ケニアで使ったのは “Extra Gum”のCM。大学で出会った男女が機会あるごとにガムを噛み、キスをする。そのガムに使われていた包み紙に、男は何か描いているわけです。大学を卒業してからも、付き合う2人の間には常にガムがあります。ガムと共に思い出を重ねていきます。ここで前半は終了です。後半はその包み紙に書かれていたものが何か明らかになるのです…。

https://youtu.be/XLpDiIVX0Wo

ちなみにこれは、アメリカのスーパーボールで流され、高評価を得たCM。日本でこの活動を行うと、男子中学生は、目を手で覆いながら隙間からこっそり見て興奮し、男子高校生は身体をうねらせ喜び、女子高校生は目がハートになり「私もこんな風に告白されたい」とうっとり感想を言います(笑)

ケニアではどうだったかというと、全く日本と同じでした。もちろん日本人よりも英語で説明するのが上手で、すぐに物語がわかったりはしたのですが、男子中学生たちはなぜか友達に抱きつき興奮して物語を話していました。ただ日本よりも色々なことを描写ができる分、「物語の起承転結」や「オチ」みたいなものに焦点が当てられていない説明が多かったように感じます。日本の子どもたちは細かい説明はできないのですが、最後のプロポーズに焦点を当て説明できることが多く、そのような違いに興味深さを感じました。


“What will happen next?”

これは僕のオリジナル教材です。CMってオチのあるものがありますよね。そのオチで商品がわかるような優れたCMがあります。オチの直前まで見せ、その後何が起こるかを予想、説明させ、商品を当てるゲームです。これも中学生から高校生まで、かなり盛り上がります。ちなみに、特許申請しましたので、真似する先生はコイノニアに募金してください!

さて、コイノニアでやったところ、これも大好評でした。商品の予想は日本と同様に発想豊かですし、商品のオチがわかった瞬間には皆で大爆笑していました。これは日本と全く同じ反応で、ちょっと驚いたほどです。


「言葉のリアリティー」の可能性

今回わかったことは、日本でも、ケニアでも、「誰かに伝えたい」思いは、生徒たちをやる気にさせるし、だからこそ伝わった時の喜びは増すということ。逆に「伝わらなくて悔しい」という気持ちが生まれるのも、この「伝えたい」という思いがあるときに限ります。人は「嬉しい」や「悔しい」という心が動くような瞬間にこそ、自分で勉強しようと思えるのではないでしょうか。苦しみの中でやらされる勉強よりも、喜びの中で自分で作り上げる学びを理想だと僕は考えています。そう考えると、ここ5年ほど追求してきた、生徒が「言葉のリアリティー」を感じる実践は世界で通用することもわかりましたし、日本でもまだまだ発展させることができる可能性を感じることができました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?