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−石竹色− ゆくへも知らぬ恋の道かな【いろどり旅行記#05京都府】

突然ですが、百人一首の中にあるこの歌、ご存知でしょうか。

由良のとを わたる舟人 かぢをたえ
 ゆくへも知らぬ 恋の道かな

曽禰好忠

歌の意味は、

「波の高い由良の海峡を渡る舟人が、舟を漕ぐ櫂をなくして漂っているように、私の恋もどうなるのかわからないなぁ」という意味。流れ着く先もわからず海を漂っている舟人と、先行きのわからない恋の不安を重ね合わせています。

https://www2.nhk.or.jp/school/movie/outline.cgi?das_id=D0005150469_00000

この歌、とても好きなんです。

「かぢをたえ」てしまった舟人の不安な気持ちや、
水上を漂っている情景、
行方のわからない恋に身を焦がす気持ちが、
約1000年の時を越えて迫ってくる。

そして、上の句も下の句も「ゆ」で始まっていて、
その柔らかい響きの重なりに、繊細な恋心が見える気がします。

ぼくは「ゆ」の字にピンク色のイメージを持っているので、
なおさら恋の予感です。


さて、ではこの歌に出てくる「由良のと」。
どこにあるかご存知でしょうか。

正解は、京都府宮津市。
天橋立がある市です。

天橋立から少し東に行ったところを流れる由良川の河口が「由良のと」です。
京都丹後鉄道に乗って、由良のとを見てきました(列車の中からですが)。

由良のと

正直、鳴門の渦潮までではなくとも流れが複雑な河口を想像していたけれど、
遠目に見た限りでは結構凪いでいました。笑
順調な恋じゃん。

でも、曽禰好忠もこの景色を見たんだろうかと思うと感慨深いものがありました。

結局、ゆくへ知らずの恋は成就したんでしょうか……。



【石竹色】せきちくいろ
ナデシコ科の植物、セキチクの花のような色。
「ゆ」は、セキチクのような可愛らしいピンクのイメージです。



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