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【映画】老後にお金がありません~FP目線からの感想

【映画】老後にお金がありません がU-NEXTで有料配信されていたので視聴しました。
ネタばれをしないために、あらすじは書きません。

この映画はフィクションです。
物語の全てを鵜呑みしてはいけません。
しかし、学びはたくさんありました。
そこで、FP目線で感想をことにしました。

1映画に出てくるお金にまつわるデータを検証

①50歳代で貯金700万円しかない家庭はないのかな

天海祐希演じる妻篤子のセリフです。

50歳代の二人以上世帯では、

平均値 1,684万円
中央値 800万円

家計の金融行動に関する世論調査[二人世帯以上調査](令和2年)より

この場合は、中間は中央値として捉えます。
理由は、平均値は富裕者層が平均値をかなり引き上げているからです。
中央値は800万円です。
700万円の貯金は絶妙な設定です。
真ん中より少なめですが、少な過ぎるということはないようです。

②(会社が倒産しなかったら)退職金予定額2000万円

定年退職の退職金平均:1,983万円(大卒)

「平成30年就労条件総合調査 結果の概況」より

データ上ではおおよそ2000万円です。
私は公務員ですが、定年まで働いても2000万円はなさそうです。
大企業、大卒、管理職の方がおおよそ2000万円位でしょうか?

③葬儀代330万円

映画では、父親の葬儀に330万円かけています。
祭儀会社との打ち合わせでは、「香典を充てにできる。」と説得され、ハイグレードな葬儀にしています。
実勢はどうなのでしょうか

葬儀費用の全国平均 195万円

日本消費者協会「第11回 葬儀についてのアンケート調査報告書」より

一般葬儀、家族葬の別や地域差や宗派によるお布施など、状況によりかなり異なるようです。
平均はどこまで当てにして良いか分かりませんが、330万円は少し多めと言えるでしょう。
ちなみに、映画で父の葬儀の会葬者はわずか30人でした。
老舗和菓子の大将であった父ですから、会葬者が多いと見積もったのですが、亡父は90歳です。
仲間は既に亡くなっていたり、介護施設に入っていたりで会葬者が少なかったようです。
実際にあり得ることですね。

現在、現役を引退した高齢者の親の葬儀は、家族だけで執り行う「家族葬」が増加傾向にあります。

一般葬が63%
家族葬が28.4%

2019年公正取引委員会「葬儀の取引に関する実態調査報告書」より

④葬儀費用は長男が負担する?

映画では、長男が喪主となり、葬儀費用も当たり前のように長男が負担するように描いています。

葬儀費用は誰が負担するか調べたところ、調査統計結果が見当たりません。
民法にも明確な規定がないようです。
つまり、親族間での話し合いになります。
葬儀費用は、親の財産で精算できるように、あらかじめ計画を立てておくとトラブルを回避できると思います。

⑤親への仕送り9万円

親への仕送りを子供が9万円しています。

両親は和菓子屋をやっていましたから、個人事業主として国民年金に加入して、月6万円台の老齢基礎年金をもらっているはずです。
映画の中でも、義母が「この通帳は月6万円振り込まれているから使ってちょうだい」というセリフがあります。
厳密に言えば、偶数月に2か月分が支給されますが、月6万円の振り込みは国民年金(老齢基礎年金)です。

たしかに、月6万円であれば、月々の生活は援助がないとできないかもしれませんね。

自営業者やフリーランスの人は、老後も長く働き続けること、計画的に老後の資金を貯めておかないと、老後の資金が足りなくなることを覚悟しておかないといけません。

⑥老後の資金は4000万円必要

経済評論家の萩原博子が映画の中で、街頭の大画面で「老後の資金は4000万円必要」と言っています。

2019年金融庁報告によると「老後資金は2000万円不足する」として、世間を賑わせました。
実際のところ、諸説ありますので、数値の検証は難しいです。
「老後の資金は2000万円不足する」というのは、国民に周知されたことです。
内訳は
月支出平均:約27万円
月収入平均:約22万円
約月5万円赤字これを30年間分として計算しています。

しかし、生活費のだけの計算で2000万円です。
その他介護費や医療費などを計算に入れると更に必要額は増えます。
そういう意味で萩原先生は4000万円くらいと言っているのでしょう。

⑦住宅購入で親の支援を受ける

映画の中で、妹から「お兄ちゃんは、家を買う時に親から頭金を出してもらったじゃない。」というセリフがあります。

親からの支援金の実勢は

支援金平均額:861万円

2019年「不動産流通経営協会」調査より

親からの支援(=贈与)は、贈与税の非課税対象になります。
省エネ住宅の場合は1000万円まで非課税(以前は1200万円)
省エネ住宅以外の場合は500万円まで非課税(以前は700万円)

非課税枠が縮小されましたので、支援額も少なくなるかもしれません。
非課税期間は令和5年12月31日までです。

2 映画の物語で老後にお金がなくなる理由

子どもが成人後、親が子供に住宅の支援をしています。
親の老後は、子供が親の生活費、葬儀代を支援しています。
これがお金がなくなる原因です。

親と子は別世帯です。
家計もきっちり分けて考えるの良いです。
親子だから助け合うのが当たり前と思われますが、現実はそうはいきません。
親の老後の資金支援をしていると、自分たちのもっと厳しい老後に資金は枯渇してしまいます。

介護保険の趣旨は、介護は社会全体で支えていくこと。
現在は、家族扶助によって介護を行うことが困難な時代であるように思います。介護離職でもしてしまうと、その後の自分自身の資金計画が出来なくなります。

葬儀代も親の資金から賄うのがセオリーです。
生前に、自分の葬儀をどうしたいのか親自身が考えておくことが必要です。
葬儀は、その人の最後の人生の集大成です。
自分の残した資金(財産)で自分で考えてフィニッシュまで全うした方が良いですね。

子どもの側も同様です。
結婚費用や住宅購入費用は自分で蓄えなくてはいけません。
人生のフィニッシュまでのライフプランの作成が必要です。

3 映画はシェアハウスに活路を見出す


この映画は、老後は孤立しないようなコミュニティに属することの必要性を描いています。
家族間でコミュニティが作ることができればよいのですが、それは一昔の話です。
主人公夫婦は、家を売ってシャアハウスに入居します。
シャアハウスは他人を尊重しながら一緒に暮らすコミュニティです。
この映画は、新しい老後の過ごし方として、シャアハウスを提案しているように思いました。

老後にお金が必要です。しかし、それ以上に楽しく過ごせるコミュニティを見つけることの方が大切です。

4 その他の気づき

①節約

映画では夫の会社は倒産、妻の仕事も契約期間満了で更新なし。
二人とも失業してしまいます。
その時に、家計のやりくりのために、モップのリースを解約したり、自家用車を売却したりします。金策に走ります。
しかし、ヨガ教室だけは継続します。
平素から究極の状態と仮定して、節約を考えると、省いても良い支出、ヨガ教室のように続けた方がようものの判別ができるのではないかと気づきました。

②修繕積立

映画では、夫婦ともに無収入になった時に限って、風呂の給湯器が故障して数十万円負担したり、トイレ修理が必要になったりします。

自分に置き換えても、自宅の設備は定期的に修理費がかかったりします。
もしもの支出のために修繕積立(もっと広く言うと「生活防衛資金」)をしておかないといけないと気づきました。

5 心に刺さった言葉(セリフ)

①人生わがままに生きた方が勝ち

義母が兄宅から妹宅へ転居する栗間の中で妻に言ったセリフです。
周りに気ばかり使っていると、周りに振り回されて自分を生きたことになりません。
わがままに生きて、多少周囲に迷惑をかけるくらいの方が、生きた証にもなります。そもそもその方が人生が楽しいです。人生楽しまないと損ですね。

②ぼたもちは3つ食べられない

映画で義父が死に際に残した言葉です。
義母はうなずいています。
私は意味が分かりませんでした。

答えは最後にあって、どんなにおいしいぼたもちも3つは食べられない。
おいしく食べられるのは2つまで。
人生欲張らない。ほとほどくらいが一番幸せ。

欲張らずに、やりたいことを取捨選択して生きていくこと。
これが、楽しく生きるコツなのでしょう。








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