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詩集『夜磔刑』PDF配布版

皆様、お久しぶりです。
暦の上では春になりましたが、ここ数日は雨が続きますね。いかがお過ごしでしょうか。わたしはなんとか元気でやってます。

先月、先々月とネットプリントに上げていた詩集をPDFで配布したいと思います。
作ろう、作ろうと思い続けていたら、年末にするっとできてしまった詩集です。
タイミングがばっちりだったのでしょうね。

掲載している文章は、古いものだと高校生の頃に書いたものもあり、しかもたぶんそれが一番長いです。
その他、大学生の頃に書いたものがあるかと思えば、新しいものもあるという……。
書かれた時期に10年以上開きがある、成長記録のような(?)内容になっています。

無料です。良かったらダウンロードしてご覧ください。

以下、掲載分から何篇か。


幼い日の少女は緑色の石鹸を…
幼い日の少女は緑色の石鹸を手に、バスタブに潜っていた。
私は彼女よりも年長で、石鹸が縮んでしまうよと窘めていた
「石鹸が小さくなってしまったら、もともと石鹸があったところはどうなるの」
少女は云った。その瞳の深さに私は息を呑んだ。
気がつくと少女の姿はない。私はソファに腰かけ猫を抱いていた。
置時計のメリーゴーランドが回っている。
私は猫の目を見る。それは石鹸と同じ色をしている。


ベゴニア
空の向こうの窓のあなたと
繋がりを感じていられるなら
時計はとまり部屋の色が消え
名前も忘れて
いつしか片目だけ眠ったまま
蔦の絡まるアーチをくぐり抜け
ベッドの上でベゴニアが開いている
ああ
あなただ
そこにいたの


水潦
もう何年も前のある日のこと
曇り空の下で
水潦に映った私が祈っているのを見て
私は水潦に映っていた方の私になった
彼女と入れ替わったのだ
容姿も内面もすっかりそのまま
そうして私はあなたを愛する
あなたには私が私にはあなたがまぎれもない
ひとつの神秘だから
心細い少女と寄る辺ない少年であった季節に
神様のぬくもりがほしい幼い季節の幻に
あなたの私はあなたの雪だった

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