祖母がロスチャイルドと友人になった経緯を聞いたら壮絶すぎた。
ある日、祖父母の家を訪ねた時、こんなことがあった。
「この写真、外国の人が写ってるけど、誰なの?」
祖母は語った。「ああ、ロスチャイルドよ」
「ん……えっ!! ロスチャイルドってあのロスチャイルド!?」
「そうよ。名刺もあるわ」
祖母は棚から、ロスチャイルドの名刺を取り出した。
正真正銘、本物の名刺である。
「私達がパリにブランド品のお店を開いていたことは知ってるでしょう。それでロスチャイルドとお友達になったの」
「いやいやいや、普通そうはならないでしょう。どうして、そうなったの??」
私は祖父母から、一部始終、話を聞いてみることにした。
なにか人生のヒントになるかもしれないと思ったからである。
パリでお店を開いた理由
祖父が語る。
「フランスの文学とファッションにあこがれてパリに行ったんだよ」
「最初は五年くらいで帰ってこようかなと思ったんだけど、好きが高じて働いていたら、労働許可証が貰えることになった」
祖母は語る。
「子供が二人いたんだけどね。パリに行こうと思ったわ。とにかく今のように情報が沢山ない状況だったのよ。だから夢があったのよ」
祖父も続ける。
「一度しかない人生だから、人生を自分でデザインしてみたらどうかと考えたんだよ」
「よく就職で会社を30とか40受ける人がいるでしょ?」
「いるね」
「私から言わせればアホにしか見えないね。それだけ受けても会社が人生を保証してくれる訳じゃないんだからね」
「…………」
祖父は、正直にものをいうタイプである。
なぜロスチャイルドは来てくれたのか
私は、一番気になっていたことを聞いてみることにした。
「なんでロスチャイルドは店に来てくれたの?」
「ある日、お客さんの紹介で来てくれたの」
「そんな簡単に来てもらえるものなの?」
「あら、うちのお店、日銀の総裁とか大銀行の頭取、皇室の人まで来てくれたわよ」
「えっ、知らなかった。どうしてそんなに偉い人が来てくれるようになったの?」
「やっぱり人を利用しようとせず、自然体で迎えたからね。お店にみんな来てくれたわ」
祖母が言うには、偉い人の周りには、どうしても「この人を利用してやろう」という人が集まってくるのだという。
だからこそ、そもそも人を利用しようという気がない店にロスチャイルドは来たのではないか。
「いい? 偉い人と接する時に大事なのは、失礼にあたらない、かといって人を持ち上げるわけでもない姿勢なのよ」と祖母は語る。
「人を利用しようという気持ちは、すぐに見透かされるからね」
ロスチャイルドってどんな人?
「ロスチャイルドってどんな人だったの?」
祖母は語る。
「人間的に、いいひとだったねぇ」
「絶対に威張ることがなかった」
「だってロスチャイルドよ。そこまですごい財産を持っていると、わざわざみんなに見せびらかそうなんて考えは持たないのよ」
純粋に楽しかったから仕事が捗った
「商売をやっていてね。自分たちが選んで仕入れたものを、見てくださる褒めてくださる買ってくださるというのは、すごく嬉しいことよ」
「自分でやりたいことをやりなさいというのは私から何回も伝えているけど、やっぱり自分で人生を選んでやったことは欲なんて出ないの」
「好きでやっていたから、人に認められるのを、自然と嬉しいありがたいという気持ちになるのよ」
商売繁盛の理由
「当時、日本からパリに観光で来る人はグループで来る人と、個人で来た人がいたわ」
「免税店と言えば、グループで来る人を相手にしていたお店が多かったけど、私は個人で来るお客さんを受け入れることにしたの。お店もそんなに大きくなかったからね」
「大きな店じゃないからサービスなんてものじゃなくて、人の『お世話』ができたわ。無理矢理ものを売るんじゃなくてお客さんがこうしたいという気持ちを大事にしたの」
「たとえば、個人で来る人は現地の情報がないでしょ。そういう人と会ってフランスの情報を教えると、人から感謝されたりするのよ」
「それは考えてやったことなの?」
「いずれも計算じゃなく、私自身が嬉しいと思ってやったことだわ。私も最初パリに来た時に多くの人に助けられたもの。同じことをしてあげたら、喜ぶんじゃないかって思ったのよ」
「そうやってね親切にされた人は、次々とお店のことを人に紹介してくれたわ。だから最初から狙っていたわけじゃないの」
「お店の品揃えも大事だけどね。人を利用しない、そういう気持ちで生きていたところをお客さんは見てくれたのかもしれないわね」
最後に
最後に祖父母は「私達の人生は運が良かった」と言っていたが、私はそれだけではないと思う。
ロスチャイルドのお眼鏡にかなうのは、運だけでない、別の理由があったのではないかと感じた次第である。
最後に、この記事が、少しでも皆さんの人生のヒントになれば幸いだ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?