🕯️おはなし会へようこそ

ストーリーテリングのあれこれを語るより、まずはおはなし会にご招待。

図書館の一角や公民館の和室、教室の隅・・小さな奥まった空間で
数人から多くても20人くらいの聞き手が集まる。
語り手の傍らにはろうそく。
さあ、これからおはなしを始めますよ。

「このろうそくに火がともると、ここはおはなしの部屋になります」、と
マッチをすって火をつけます。
「誕生日みたい」という子どもたちの声を聞きながら語りが始まります。

むかしむかし、あるところに・・

語り手の役割は、聞き手をおはなしの世界に連れて行って、連れて帰ること。
話を外から見ている傍観者であってもいけないし、
話の主人公になりきってもいけない。
いいお爺さんにも、となりの欲張り爺さんにも光を当て、
聞き手をおはなしの世界で遊べるように、体験できるように導く。

伝承の語り手のように、おはなしを聞いて育った者ではない私たちは、
本（テキスト）からお話しを学び、覚え、語る。
同じテキストを選ぶと、語られる文字は同じ。
けれど、語られる言葉は、その人を通り抜けてきた言葉。
通ってきた道、経験してきたことが違うように、
その人を通り抜けて出てくる言葉は人それぞれ。

聞き手も通ってきた人生、経験はそれぞれ違う。
ここはゆっくり語った方がわかりやすいかしら？
これは言葉を足した方がわかるかしら？
語り手は、聞き手を見ながら言葉を選ぶ。
言葉を発するのは語り手だけだけど、
語り手の一人語りではない。

語る人・聞く人の対話でおはなし会は成り立っている。

「いきがぽーんとさけた」
「昔こっぷり、どうらんけっちり」
これらは日本の昔ばなしのおしまいの定例句。
さあさあ、そろそろおはなしの時間は終わりです。

「このろうそくが消えたら、ここは元のお部屋に戻ります。また、みんなでおはなしをきけますように」
などど願いを込めて、ろうそくの火をふっと吹き消す。

そして、おはなしの時間は終わり、日常が戻ってくる。

メディアやSNSで拡散するような広がりはない。
小さな泡がポコポコと湧いては消えるような小さな世界。

私がこの世界に出会ったのは全くの偶然。
子育て倶楽部で講師に招いた方が、たまたまこの活動をしていた。
我が子に布団の中で語ってやりたいと覚え始めたが、
私がお話を覚えるより子どもの成長は速く、
寝かしつけが必要な時期はあっという間に過ぎ、
我が子に語るには間に合わなかった。

そこで辞めてしまわず20年以上も続けてこられたのは、
お話を自分の中に取り込むことの魅力に引き込まれたから。
聞いてくれる人と一緒に楽しむおはなし会の心地よさに浸ったから。
何よりも、教えてくれる先生、共に学ぶ仲間が地元にいたから。

小さな小さな活動で、SNSの世界ではご存じない方も多いでしょう。

おはなし会に行ったことがない方に、少しでも雰囲気が伝わると嬉しいです。

ストーリーテリングと子どもについて書かれた本をご紹介します。

お話を子どもに (たのしいお話)