Kei

韓国・中国・カナダと移り住みまくり、最終的にやっぱり日本にいる日本人です。 栄養バラン…

Kei

韓国・中国・カナダと移り住みまくり、最終的にやっぱり日本にいる日本人です。 栄養バランスを考えた食事をとるふりをしつつ、普通にジャンクフードを食べるスリルと背徳感を得るのが趣味。 おじさんになりたくないので、最終的にはおばさんになりたいとおもい、日々鍛錬を積んでいます。

最近の記事

ざらり   /詩

昼夜を問わず明るい電灯のまわりを飛び回る羽虫 それを覆い囲むようにして宙を這いまわる蛇の視点で 恥ずかしいおもいをしたことを思い出す夜半に じゅわっと熱した電球にぶち当たる 死よりも痛みをそこで感じるエネルギーだ 至近距離で傷口を見つめて 溢れる血液を接写するジャーナリズムで もっと傷つけたいわたしの身体 この感情を晒して自由になれるくらいだったら すべてを秘密にして呪いたい幾千もの忘却 時間に接触していると肌から脳が活性化して 不快な記憶ばかりが蘇る闇のなかでは

    • 明かり  Ι詩

      月光は障害物に遮られ水面に届かず 暗い部分から触手が無数に伸びてくるイメージで 揺れるたんびに酔う 微かな水音はたしかに心地よく 川のように空気がすべり流れていく匂いをかいでる 花の名前はひとつも知らない 帰り道に咲く花壇の香りがある その下で蠢くようにしているけど わたしが手を下にかざして歩いている 心情のパターンは過去の記憶から切り離して わたしの身体はひとつも影を落とさない ひいていく波のように息を吐く 生暖かい春の暖気が引っ張ってくるのは 花開く花弁そのものの

      • 還る

         よく晴れているため散歩に出ると、いつの間にか近所のお婆さんの家が取り壊されていることに気がついた。我が家を出てほんの数秒のところにある家だったのに、解体されていることにもお婆さんがいなくなっていることにも気がつかなかった。更地だった。土しかない更地だった。お婆さんの住む家の下は、こんな風に土だったのかと思った。  よくよく考えればわたしがまだ小さな子どもだった二十年前から、あのお婆さんはずっとお婆さんだった。単に、容姿が昔からこれまでずっとこれ以上「お婆さん」にならないくら

        • ソフトボール

           ソフトボールがなんなのかということを真剣に考えていた。机のまえに座らされて、今日は放課後のクラブ活動のアンケートをとりますといわれて、紙とペンを渡される。ほかに説明がない。サッカー、バスケ、卓球、バドミントン。わかる。水泳、柔道、剣道、まあやったことないけどなんとなく。わかる。ソフトボール。え、ソフトなボール?  柔らかいボールというのならきっとハードなボールが別種存在するのだろう。それならソフトボールにもう1個なにかヒントになる要素を付け加えてくれればいいのに。でもたぶん

        ざらり   /詩

          ラベル

           有酸素運動を室内で行う方法を探しています。思い当たる節がある方は下記電話番号、もしくはメールアドレスまでご連絡ください。そういう張り紙を貼った。近所の電柱という電柱に貼ってまわったが、1件として連絡がきていない。こんなものはインターネットで検索してもぜんぜんおもしろくない。室内で使用する特殊な器具を勧めるのをやめてください。  本来、「室内でできる」といったときに想像されるのは、本当に外に出ないでできるのかという意味だけではなく、「なにもない状態でこの身一つでできるかどうか

          ラベル

          ほんとうは。

           寂しい気持ちを誰にも共有できなかった夜を幾度となく超えて、人は自室にお守りの御札を貼るようになる。ぺたりと裏側に両面テープを貼って。御札にこんなに強力な糊をはっつけてバチがあたらないのだろうかといつもおもう。わからないけれど貼る。きっと救われるような気がする。自分の頭よりも上の位置に御札を貼って、貼ってからコンパスで向きを確認する。御札をどちらの方角に向けてよいかは元から決まっているらしい。調べたくせに調べたことを貼り終わるまで忘れたりしている。  洗い物をしていて少し飛び

          ほんとうは。