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【JICA Volunteer’s Next Stage】アートを主要産業に 貧困解決への道筋

ルワンダでアーティストを育てる活動展開


☆本コーナーでは日本で活躍するJICA海外協力隊経験者のその後の進路や現在の仕事について紹介します

鈴木 掌(つかさ)さん
●出身地 : 茨城県出身
●隊 次 : 2011年度4次隊
●任 国 : ルワンダ
●職 種 : 服飾
●現在の職業 : アーティスト

・TSUKASA SUZUKI OFFICIAL PAGE

<鈴木掌さんの作品は、MONOLiTH ART ONLINE SHOPTRiCERA ARTなどでご購入いただけます>


貧困から抜け出すチャンスをつくる
 カラフルでエネルギッシュ、アフリカ布を思い出すようなポップな絵を生み出す鈴木掌さん。ブラックライトに当てると光る画材を使ったり、音楽にあわせて即興で絵を描いたり、自由で斬新なアーティストとして活躍する傍ら、ルワンダで絵画教室を開催しアーティストを育てる「heART(ヒーアート)」プロジェクトを行っている。教室で生まれた作品は、すべて鈴木さんの目で評価して買い取り、日本で個展を開き販売。収益は子ども達に還元し生活環境改善や教育支援活動に充てている。
 「heART」を始めたきっかけの一つは、David君という男の子との出会いだ。特徴的な絵を描く彼は難病を持っていたが、ルワンダでは手術ができない病気だった。才能溢れる絵を高く買って海外での治療費の足しにしてもらおうと考えていた。だが3カ月後に容態は急変し、この世を去ってしまった。「現実の残酷さを目の当たりにし、アフリカの貧困を解決してチャンスメイクの機会を与えたい」と思いを強くした。さらに、自身の絵を初めて買ってもらった時に心が救われたという経験もあり、アートを通じてアフリカを変えようと活動に取り組んでいる。
 現在は、1年に2回程ルワンダに滞在し、約40人の生徒に絵を教えている。教室での特徴は二つある。安心する環境を提供することとシンプルな指導だ。周りからの冷やかしがなく、心置きなく集中できる時間を整えている。アフリカでは絵を書くことより家事を手伝うことが優先されがちだが、教室では時間を気にせずに絵を描ける。また、鈴木さんが一から絵の描き方を指導するのではなく、自身の心に赴くままに描く経験を与えている。自分自身と向き合うことは、自分に何ができるのか、望む結果を出すためにはどうすればいいのかと子どもたちが社会に出てから必要な考える力を育むことにもつながっているという。

「heART」が誕生するきっかけとなったDavid君(左)らと彼らの作品を持つ鈴木さん=本人提供

協力隊はたくさんの失敗ができる貴重な期間
 
鈴木さんがアフリカに興味を持ち始めたのは中高生の頃。当時好きだったヒップホップやレゲエミュージックのルーツをたどると、すべてアフリカから生まれていることに気づき、「なぜアフリカからジャンルが生まれるのか」とアフリカの持つパワーにひかれていった。
 その後、服飾の専門学校を卒業し、母校で教員の経験を積んだ。アフリカへの想いを持ち続け、国際協力機構(JICA)海外協力隊としてルワンダで服作りを指導する道を選んだ。職業訓練校で技術を教える傍ら、現地人が営む工房を訪ねたり、弟子をとって住み込みで指導したり、貪欲に行動していった。協力隊の任期終了後も外務省の草の根のプロジェクトでルワンダに再赴任し服飾の指導を継続。協力隊時とあわせ200人以上のテイラーを育てた。
 鈴木さんは「日本人はミスを嫌う人が多いが、協力隊は例えミスをしても借金を抱えるようなことはなく、いくらでも失敗ができる期間だった」と語り、「この経験があったからこそ現在もルワンダで一緒に活動してくれる仲間やチャンスを作れて、今がある」と話す。例えば、職業訓練校では、部活動のように放課後に指導をした。しかし、同僚の先生たちは時間外労働になるため、モチベーションが上がらず、乗り気でない生徒も多かった。これがモチベーションの作り方、服を作った先の目標の立て方、教え方を見直す機会となり、絵画教室での教えにつながっている。

協力隊では服作りの指導をしていた=本人提供

新しいジャンルを確立させる30年計画 
 鈴木さんは、「アートをアフリカの主要産業の一つ」にすることを目指し、30年の長い計画を立てている。まずはルワンダに個性的な美術館をつくり、ミュージシャンとコラボしながらアフリカ各国でライブペイントツアーを実施。個性豊かなアーティストに衣装を仕立て、さまざまな芸術をセッションさせた新しいジャンルを確立させるなど、大志を抱く。「日本は多くの国から良いイメージを持たれているが、外交には生かしきれていないと思う。存在感が強いのは中国やインドだ。個人的にもプレイヤーであり続けることで、信用や憧れを築き、日本人である強みも生かしながら、アフリカの才能を発掘してプロデュースしていきたい」と未来を見据える。
 取材時に鈴木さんと子ども達の作品を見て、あでやかな色使いに目を奪われた。ルワンダの子ども達だけでなく、日本で作品に出会った人にも希望・感動を与えるアートの力に感動した。新しいジャンルをつくりだしている最中の鈴木さんの挑戦を今後も追いたい。(編集部・吉田 実祝)

ビビットな色使いの作品を生み出す=本人提供

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本記事は国際開発ジャーナル2024年2月号に掲載されています
(電子版はこちらから)

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