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<論文>コロナ時代の風邪診療

Using antibiotics wisely for respiratory tract infection in the era of covid-19
BMJ 2020;371:m4125
doi: 10.1136/bmj.m4125

知っておくべきこと
急性呼吸器感染症(RTI)のほとんどはウイルス性であり、バーチャルケアで管理ができる。
COVID-19が陰性のRTI症状のある患者では、ウイルス性RTIの診断が最も可能性が高く、ほとんどの場合、支持療法の継続ができる。
バーチャル評価では診断能力が制限され、不必要な抗菌薬の過剰処方につながる可能性がある。細菌性の可能性のあるRTIについては、診断のために可能であれば対面での検査をする(鼓膜の評価、A群溶連菌の検査、胸部X線など)。

抗菌薬の適切処方への障壁
抗菌薬に対する患者の期待は抗菌薬処方とは関連していなかった(調整オッズ比0.6-9.9)が、患者または親が抗菌薬治療を期待しているという臨床医の認識の方がはるかに予測性が高かった(aOR 2.1-23.3)。
抗菌薬が不要な理由について患者と議論する時間的制約は、しばしば臨床医の障壁として挙げられる。しかし、小児および成人患者を対象とした研究では、抗菌薬を処方する場合と比較して、このような会話は診察時間を大幅に延長しないことが示されている。

患者の視点
患者や家族は必ずしも抗菌薬を求めているわけではなく、診断や安心感、セーフティネットのアドバイス、治療計画についての明確な情報を求めている。これはCOVID-19の時代にも当てはまり、多くの患者がRTI症状の発症に伴う不安の高まりを感じているのだろう。ウイルスと細菌の違いについての限られた一般の人々の認識と、抗菌薬は低リスクの薬であるという信念が、外来での不必要な処方の原因となっている。患者や一般市民には、抗菌薬の過剰使用について、社会に対してよりも個人に対しての影響を強調したほうが、より受け入れてもらえる。

ウイルス性RTIが疑われる患者に対して、臨床医が抗菌薬の適切な使用を促進するために使用するコミュニケーション戦略の例

診断の明快さを提供する

「ウイルスによって引き起こされることが多い副鼻腔感染症にかかっています」
「あなたの検査はCOVID-19陽性です。ほとんどの場合は軽症で、病院に来る必要はありません」
「COVID-19は陰性でしたが、鼻水、発熱、倦怠感などの類似した症状があります。これらはウイルス性のものである可能性が高いです」

患者の懸念事項を特定し、対処する
「過去にこれらの症状のために抗菌薬が処方されたことがあるかもしれませんが、抗菌薬を内服してもこの感染症が早く治ることはありませんし、気分が良くなることもありません」
「これらの感染症はとてもつらいかもしれません。具体的にどのような症状に悩まされていますか?」
「COVID-19を心配しているのは分かります。陰性ということは、検査を受けた日にウイルスが検出されなかったというだけです。体調が良くなってきて検査が陰性であっても、症状がしっかり改善するまで自己隔離を続けてください」

症状の対処方法の提供
「鼻づまりを改善するために、鼻腔内への生理食塩水を使用してみましょう」
「喉の痛みには、アイスチップやのど飴、のどスプレー、塩水でうがいをしましょう」
「熱や痛みを和らげるために、アセトアミノフェンやイブプロフェンなどの市販薬を使用しましょう」

セーフティネットや危機管理計画を提供する
「最大2週間、時にはそれ以上の期間、COVID-19に関連した症状が続く可能性があります。息切れや呼吸困難に注意し、このような症状が現れた場合は、急いで医師の診察を受けるようにしてください」
「副鼻腔炎の症状は7-14日続きますが、7日目までには改善し始めるはずです」
「症状が改善するどころか悪化している場合は、電話再診などで再評価を受けてください」

RTIの患者の症状に基づいた評価と管理のアプローチ

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<感想>
「抗菌薬を欲しがっている」人が一部いるのはそうだとしても,「話してもムダ」というのは早計なのかもしれません。社会のためにではなくアナタのためにというメッセージのほうが刺さるのはたしかに経験します。COVID-19に関しては,患者はもちろんですが,医師も少なからず不安やストレスを感じているわけで,それでもなお優しくいなければならないのだなと思うと,つくづく大変な仕事だと思います。



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