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<論文>PMQ-9での躁状態チェック

The Patient Mania Questionnaire (PMQ-9): a Brief Scale for Assessing and Monitoring Manic Symptoms
J Gen Intern Med. 2021 Jun 18
doi: 10.1007/s11606-021-06947-7

背景
測定に基づくケアは,双極性障害に対して有効な臨床戦略であるが,広く採用されている患者報告式の躁症状測定法がないこともあって,十分に活用されていない。

目的
患者報告による躁症状の簡易測定法の開発とその心理測定的特性を報告すること。

デザイン
双極性障害±PTSDのスクリーニング陽性のプライマリケア患者1004名を対象に2つの治療法を比較した無作為化効果試験で収集されたデータの二次解析。

参加者
双極性障害と診断され再検査データが得られた114名と,精神科で双極性障害と診断され9項目からなるPatient Mania Questionnaire-9(PMQ-9)の評価を2回以上受けた179名の2つの分析サンプルを対象とした。

主な測定項目
内的整合性,再検査信頼性,並存的妥当性,変化に対する感度を評価した。最小重要差(MID)は,測定の標準誤差(SEM)と標準偏差(SD)の効果量で推定した。

主な結果
PMQ-9は,高い内的整合性(Cronbach's alpha = 0.88)と再検査信頼性(0.85)を有していた。躁症状の測定法との併存的妥当性の相関はInternal State Scale-Activation Subscaleとは高く(0.70;p<0.0001),Altman Mania Rating Scaleとは低かった(0.26;p=0.007)。長期的には179名の双極性障害患者の1511回の受診時にPMQ-9が記入された。初回と最終回のPMQ-9の平均スコアは14.5(SD 6.5)と10.1(SD 7.0)で、治療中に平均スコアが27%低下したことから、変化に鋭敏であることが示唆された。MIDの点推定値は約3点(2~4)であった。

結論
PMQ-9は,再検査信頼性,同時性,内的整合性,変化に対する感度に優れており,実用的な臨床試験において患者と臨床医に広く使用され,受け入れられた。抑うつ症状の測定法であるPatient Health Questionnaire-9(PHQ-9)と組み合わせることで,この簡便な測定法はプライマリ・ケアやメンタル・ヘルス・ケアの現場で双極性障害の患者の測定に基づいたケアを行うことができるかもしれない。

<PMQ-9>
この1週間であなたはどれくらいの割合で…
0:まったく,1:数日,2:半分以上の日で,3:ほぼ毎日
①睡眠時間が短くても元気になれた
②イライラしやすかった
③活動しすぎと感じた
④衝動的に行動したり結果を考えずに行動したりした
⑤そわそわしたり落ち着かない感じがしたりした
⑥気が散りやかった
⑦喋り続けなければならないと感じたり、誰かによく喋るねと言われた
⑧議論したいと感じた
⑨思考停止状態になった
(10点以上で高躁状態,5点未満で予備的寛解と設定)


<感想>
プライマリケアの現場では,PHQ-9で抑うつをひっかける,場合によってはフォローすることもありますが,双極性障害を鑑別することが重要であることは知っていながらも,わかりやすいツールがなかったのが実情だったのではないでしょうか。このPMQ-9の妥当性の評価は(自分には)難しいですが,一つの目安として使ってみるのはありかもしれません。



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