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<論文>臨床推論力評価のための改訂版IDEA

Development of a Clinical Reasoning Documentation Assessment Tool for Resident and Fellow Admission Notes: a Shared Mental Model for Feedback
J Gen Intern Med. 2021 May 4.
doi: 10.1007/s11606-021-06805-6.

背景
研修医やフェローは、臨床推論の記録についてほとんどフィードバックを受けていない。その要因としては、メンタルモデルが共有されていないことや、既存の評価ツールの信頼性・妥当性にばらつきがあることなどが挙げられる。既存の評価ツールのうち、IDEA評価ツールは、4つの要素(解釈の概要、鑑別診断、主診断および代替診断の根拠の説明)に焦点を当てた臨床推論文書の強固な評価を含んでいるが、記述的なアンカー(指標)がなく信頼性に懸念がある。

目的
IDEA評価ツールをベースに、有効かつ信頼性の高い臨床推論文書の評価ツールを開発することを目的とした。

デザイン、被験者、および主要評価項目
改訂版IDEA評価ツールは、4人の臨床教育担当者が、医学生およびフェローが書いた入院カルテを繰り返し検討して開発したもので、その後、回答プロセスの妥当性を確認するために追加の教員で試験を行った。30名の研修医が複数の主訴に分けて書いた2014年7月から2017年6月までの252件のカルテのランダムサンプルを評価した。3人の評価者がカルテの20%を評価し、内部構造の妥当性を示した。Hofsteeの標準設定を用いて質のカットオフスコアを決定した。

主な結果
改訂版IDEA評価ツールは、IDEA評価ツールと同じ4つの領域を含み、より詳細な記述の補助(プロンプト)、新しいリッカート尺度のアンカーがあり、スコアは0~10点であった。3人の評価者が評価したカルテのクラス内相関は0.84(95%CI 0.74-0.90)と高かった。スコアが6点以上であれば質の高い臨床推論の文書化がなされていると判断された。質の高いものは53%(134/252)のみであった。

結論
改訂版IDEA評価ツールは、フィードバックのための共通のメンタルモデルを促進する記述的なアンカーを備えており、研修医およびフェローの入院カルテにおける臨床推論の文書化に関するフィードバックとして、信頼性が高く、使いやすいものである。

<改訂版IDEA>
I + D + E + Aの合計(0-10点のうち6点以上で質の高い臨床推論を示唆)

I - Interpretive Summary 解釈の概要

病歴、身体所見、検査所見から得られた最も重要な要素を強調し、患者の主なプロブレムを解釈して表現するために、適切な語彙を用いた簡潔な要約文を作成する。以下の特徴の有無が評価される。
a) 主なリスク因子
b) 主訴
c) 疾患の時間経過
d) 適切な医学用語(SQ)の使用(例:単関節性 vs 多関節性)または統一された医学概念(例:容量負荷、心血管リスク因子)。
注:いくつかのプロブレムは、そのものが時間経過を暗示している(例:失神、けいれん発作)。
0点 特徴の記載がない
1点 特徴が1つ記載されている
2点 特徴が2つ記載されている
3点 特徴が3つ記載されている
4点 特徴が4つ記載されている

D - Differential Diagnosis 鑑別診断
複数の関連する診断の可能性を提示し、最も可能性の高いものにコミットし、可能性の低いもの、または可能性は低いが主訴のために考慮すべき重要なものを検討する。主訴が診断名や症候群(例:慢性収縮期心不全と急性収縮期心不全)である場合には、その増悪に対する鑑別を中心に評価することができる(例:服薬不遵守 vs. 不整脈)。
0点 鑑別診断なし
1点 鑑別が暗示的か診断カテゴリーとして提示され(例:心臓)、優先順位も暗示的である
2点 鑑別および優先順位が明示されている

E - Explanation of Lead Diagnosis 主診断の説明
疫学や主な特徴、それらと患者の現症との比較など、主診断の根拠を説明する。客観的なデータポイントが主診断または代替診断に明確にリンクしていない場合は、主診断または代替診断のどちらかにつながるポイントのみを指定し、両方には指定しない。
0点 説明なし
1点 主診断の説明で1つの客観的なデータポイントあり
2点 主診断の説明で2つ以上の客観的なデータポイントあり

A - Alternative Diagnosis Explained 代替診断の説明
疫学や主な特徴、それらと患者の現症との比較など、代替診断の根拠を説明する。客観的なデータポイントが主診断または代替診断に明確にリンクしていない場合は、主診断または代替診断のどちらかにつながるポイントのみを指定し、両方には指定しない。
0点 すべての代替診断に説明なし
1点 少なくとも1つの代替診断の説明で1つの客観的なデータポイントあり
2点 少なくとも1つの代替診断の説明で2つ以上の客観的なデータポイントあり


<感想>
たしかにスコアと説明があると評価しやすいと感じます。入院のみならず外来においても,研修医・学生のカルテ教育に有用と思います。恥ずかしながら共有メンタルモデルという概念を知りませんでしたが,こちらが引用文献もあり分かりやすかったです。





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