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ドイツ人夫婦-9

午後からの図書館での初めての英語教室。
僕はここで今でも忘れられない
大失敗をおかしてしまう。

少し早めに教室に入り先生に挨拶を済ませた。
30代くらいの女性で
笑顔が素敵な先生だった。
先生は、楽しい授業にしましょう!
と、優しく僕を迎えてくれた。

教室には既にドイツ人夫婦が席についていて
どうやら生徒は僕を含めた3人らしい。

授業の最初に自己紹介を済ませ
先生からの幾つかの質問に答えた。

この授業では何を勉強したい?

僕は、英語を話すときに
単語の組み合わせという癖が抜けないので
文法を習いたい。

ドイツ人夫婦は、
ここに住んでいても
あまり英語を話す機会がないので
英語を話す時間が欲しい。

英語を話す機会がない?
そうなんだ、、
よく考えたら今僕は
凄く恵まれた環境にいるのかもしれない。
仕事中はミックと
夕飯時はボスの家族と
週末はウェインと
話す機会は幾らでもあった。
だからあまり自分が恵まれた環境に居ることを
感じていなかった。

それでは次は、
YUTAがドイツの紹介をして
ドイツ人夫婦が日本の紹介をしてみましょう。

YUTAは、ドイツにどんなイメージがある?

え?ドイツのイメージ?

その時の僕の頭脳では
中学生の時に授業で習った
右手を斜め上にピンと突き出した
口髭の男の姿しか思い浮かばなかった。

だから僕はヒトラーと答えてしまった。

その場の空気が一瞬で凍りついたのがわかった。

そして、旦那さんが俯きながら小声で
イエスとだけ応えた。

先生もそのことには触れず
次は日本のイメージを話して。
とその場を流した。

ドイツ人夫婦が日本の事を話していても
僕の耳には入ってこなかった。
なんでヒトラーって言ってしまったんだろう。
バッハやベートーヴェンだっているじゃないか。

でも、後の祭りだった。

先生の、楽しい授業にしましょう!
と、僕を迎えてくれた笑顔や
旦那さんのイエスの言葉が
頭から離れなかった。
自分の教養の無さ
想像力の無い言動に
呆れた。

この時の事は今でも時々思い出す。

あの時の自分と
今もあまり変わりはないけれど

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