iyde

とあるインテリアショップのオーナー兼バイヤー

iyde

とあるインテリアショップのオーナー兼バイヤー

最近の記事

ドイツ人夫婦-9

午後からの図書館での初めての英語教室。 僕はここで今でも忘れられない 大失敗をおかしてしまう。 少し早めに教室に入り先生に挨拶を済ませた。 30代くらいの女性で 笑顔が素敵な先生だった。 先生は、楽しい授業にしましょう! と、優しく僕を迎えてくれた。 教室には既にドイツ人夫婦が席についていて どうやら生徒は僕を含めた3人らしい。 授業の最初に自己紹介を済ませ 先生からの幾つかの質問に答えた。 この授業では何を勉強したい? 僕は、英語を話すときに 単語の組み合わせとい

    • 青・春 #8

      ボスの前職は、猟師。 なので、家には自分が捕らえた 熊や鹿の剝製がすらっと並んでいる。 たまに夜になると獣害対策の為 猟銃を持って飼い犬の小型犬(ティッツ) を連れて猟に出かける。 僕にはどこに獲物が居て どこを狙って撃っているのか全く分からないが 毎回一撃で仕留めティッツがそれを運んでくる。 いつもは可愛い小型犬のティッツも 猟の間は野生の顔になり 牙をむき出しにして立派な猟犬となる。 が、僕はこれまで一匹も仕留めることはできなかった。 仕事の昼休みに競馬場で何度か

      • 思春期真っ只中 #7

        ボスの家では、 散髪は家族揃って庭で行う。 だから皆んな前髪がバッサリ揃っている。 散髪してあげるからいらっしゃいと 僕も声を掛けられたのだけど それにだけは、かなり抵抗があった。 別に仕事の往復だけで 誰も見てはいないのだけど そこは、僕の最後の砦の様な気がして 絶対に譲れなかった。 そう、僕は思春期真っ只中だった。 だから次の週末に 街の床屋さんに行ってみる事にした。 街の床屋さんは、おじさんが一人で 切り盛りしているところで お客が居ないときは外でいつも タバコ

        • 将来何になりたいの? #6

          YUTAという名前は ここでは覚えやすい名前で アメリカのユタ州を連想するらしく 自然に僕の名前もユウタでなく ユタになっていて 街のショッピングセンターに行けば 伝言掲示板にボスの奥さんやミックの奥さんが もしユタが街に居るなら何時にここで拾うわよ。 なんてメッセージが貼られていて お陰で大量の買い物をしても この頃には歩いて帰る心配はなくなっていた。 僕がいつも買うのは、 お米(ボソボソしたやつ) パン・玉子・牛乳・ハムとチーズと カップラーメンくらい。 あとは、歯磨

        ドイツ人夫婦-9

          郷に入っては郷に従え #5

          大学生もこの街を去り 僕の家の食糧も底をついてきたので 久しぶりに一人歩いて街へ出てみることに。 この日は、以前ウェインと ホームセンターで買った短パンにビーサン オーストラリアと文字の入った サーフブランドのパーカーを着て出かけた。 家から街までの道は、ただの一本道で 左手には数軒の牧場がずっと広がっている ただ、あまりにも広すぎて何を飼っているのか オーナーは誰なのかも良くわからない。 生まれ育った街を離れて 広い世界に飛び出したつもりが この街で僕の知っている人は

          郷に入っては郷に従え #5

          英会話 #4

          僕がオーストラリアのこの地に住み始めた頃 僕の英語は酷いもので、、 単語にPLEASEさえ付ければ何とか通じる。 そんなものでした。 そんな僕の英語の先生は、歯のないミック。 ミックは寡黙で感情を面に出さないのですが 突き放されているという感覚もなく 一緒に居てとても心地がいい。 仕事中の殆どの時間をミックと過ごしました。 ミックの話す英語は簡潔でとてもシンプル。 だから覚えやすく理解しやすい。 ただ、、そのままミックから覚えた単語を 外で使うと周りがシーンと静まり返るワ

          英会話 #4

          デニムにトレーナー #3

          競馬場の解体の仕事は、 変わらず土に埋まった 何百本の木の杭を抜く作業。 木の杭にチェーンを引っ掛け 車で引っ張り抜いた後に それを二人で持ち上げて 車の荷台に積んでいく作業を1日中。 その木の杭は、週末にチェーンソーで切り 暖炉用の木として持ち帰ります。 暖炉は本当に暖かく 眺めていると時間が経つのを忘れてしまい 僕の一番の癒しとなっていました。 ある日、仕事を終え いつもの様にボスの家へ 夕飯を食べにお邪魔したのですが ボスの家の電気が点いていない。 あれ?どうした

          デニムにトレーナー #3

          運転免許証 #2

          月日は流れ 競馬場のフェンスも剥がし終わり 数百本はあるであろう 競馬場の木の杭を抜く作業に入った頃 いつも家から歩いて通勤する 僕を見兼ねたボスが 使っていないモトクロスバイクを 通勤用にと貸してくれる事になりました。 バイクの運転は好きだったので これは僕にとっては、かなりの出来事。 お昼休憩に試し運転をさせて欲しいと ボスに打診すると OK、道の左側だけを走れよ、とボス。 オーストラリアは日本と同じ左側通行、 そんなの知ってるよ。 と、頭の中の僕の声。 早速

          運転免許証 #2

          辺境の地で #1

          私にとってオーストラリアは、 ちょっと思い入れのある国で 実は、中学を卒業した16歳ぐらいの頃から オーストラリアの山奥で一人暮らしをしておりました。 当たり前ですが インターネットなんて存在せず 携帯もテレビなんてものもない。 これぞ、山の中でポツンと一人暮らしです。 窓から外を覗いても人が見える訳もなく 家の外に出ても人が歩いている訳でもない。 数日間、人を一人も見なかった、 誰とも喋らなかった。 なんて日が当たり前の様に続くような場所。 私、最初は鏡と話しておりま

          辺境の地で #1